mixiユーザー(id:5259603)

2016年12月09日12:08

260 view

新作

最近、ちょっと思うことがあってデュエルとは別にオリジナルを書こうかと思いました。
また、残虐でグロテスクなストーリーが頭をよぎって形にしたいと思った次第です
かなり久しぶりですが、黒猫の世界へご案内します。


「蠢く妖蟲の軌跡」

プロローグ

「もう、死にたい。」

自室で一人そう呟く男がいた。この男は名を北嶌(きたじま)と言い介護福祉士の仕事をしている。以前働いていた職場で精神的なストレスにより適応障害と診断され、3か月の休養を経た後、退職した。新しく別の施設で働き始めたのだが、1か月も経たないうちにその職場環境が自分とは合わず、また精神的ストレスに苛まれ、次は自律神経失調症と診断され、親からもきつい罵声を浴びされる毎日で未来への希望など無く途方に暮れていた。時は2016年、11月。まだ新生日ノ本神国が日本国と呼ばれていた時代のまだ滋賀県と呼ばれていた地方での出来事である。

「つらい、死にたい。もう嫌だ。」

北嶌はひたすら後ろ向きな言葉を呟いていた。自律神経失調症、体のバランスをコントロールする自律神経が何らかの原因で異常をきたし精神的に肉体的に異常を起こす病気である。定義としては種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないものと挙げられている。因みに不定愁訴とは患者さんが検査では異常はほとんどないが強く不調を訴えている状態のことである。平たく言えばまだこの段階では精神病とまでは行かないのだが、症状によってはいつうつ病やパニック障害と言った精神病に発展するかわからない状態である。この北嶌も情緒不安定で以前はこのような考えを持っていた。

「あいつら絶対に呪い殺してやる!特にあの糞ババア!!あいつのせいで皆おかしくなったんや!僕がこんな目にあったのもみんなあいつのせいだ!!呪ってやる!!あいつの大事なもの全部壊してやる!!」

苦悩の記憶

事の発端は数か月前に遡る。石田と言う北嶌の上司に当たる人物がいた。彼女はいわゆるキャリアウーマンで仕事熱心な人物でその反面、自分のやり方に誇りを持ち自分のやり方こそが正しいと信じて疑わない人物だった。彼女のやり方についていけず辞めていく人間が多い一方、休日にも関わらず毎日のように職場に来ては書類整理やその他の雑用をこなしたり、時には自分の後輩に指導をしたりととても仕事に対して情熱を持っており、その点は他の人間も評価していた。北嶌はこの石田を心底嫌っていた。毎日職場に来ることは仕事熱心ではあるが毎日顔を合わせなくてはならないので鬱陶しいと思う人間も多い。そんな中で北嶌は特にその思いが強かった。

「あのババア、また来てやがる。もう何しに来るんよ?さっさと帰れよ!」

心の中で北嶌はずっと思っていた。けれど生来臆病なところがある北嶌にはそれを口に出して言うことはできなかった。

「北嶌君、この人の歯磨き終わってる?」

ある日の遅番の時、休みだったはずの石田がふと現れて北嶌にこう言った。施設で預かっているお年寄りの一人の口腔ケア、もう終わっていないといけない時間だと思い慌てた北嶌はたどたどしくこう答えた。

「え!?あ、あ、すみません。まだです。」
「そう?ほんならそっちの仕事して。私がやっとくで!」
「は、はい!」

石田はそのままそのお年寄りを部屋まで連れて行った。石田としてはただ単に少し遅れてる北嶌を手伝ってあげようかと思っただけなのだが、北嶌の心には憎しみが宿っていた。確かに少し口調が強い面があるので誤解はされやすいのだが、北嶌と言う人物は自分に対する被害妄想が少し大きい面があったのだ。

「怒られた・・・もう嫌や。さっさと帰れよ!」

ぶつぶつと北嶌は違う仕事へと取り掛かった。そんな生活が数か月経ったある日、事件は起こった。精神的に追い詰められていた北嶌は仕事が手につかないことが多くなっていた。

「あれ?北嶌君、どうしたん?まだ終わってないん?」

別の遅番の職員が北嶌に話しかける。遅番には20時半に仕事が終わる遅1と22時に仕事が終わる遅2の2種類がある。遅1だった北嶌はもう退社時刻である20時半になっても遅1の仕事が終わらず21時を大きく回って退社していた。以前はこんなことは無かったのに何かおかしいと周りの人間も思い始めていた。そんなある時、北嶌はその眼に憎しみの色を浮かばせながら大きな裁縫鋏を取り出し、ガンガンと机を突き刺していた。

「殺してやる!殺してやる!!あの糞ババア!絶対に殺してやる!!」

そんな姿を目撃され、北嶌は違う上司の勧めで病院へ行くこととなり適応障害と診断され、
その後仕事を休養することを余儀なくされた。それから北嶌はふさぎ込むことが多くなり、務めていた施設自体を呪うようになった。施設を取り仕切っている看護師長に対し、この施設はおかしい!どんだけ評判悪いか知ってる!?こんな評判悪い場所最初から来たくなかったんや!!と暴言の限りを吐いた。仲の良かった職員に同じようなLineを送りつけていた。

「あの施設の評判下げたる。俺のこと悪者にするし、一回も謝らんし、許せんのじゃ。むちゃくちゃされたし、もう会わんけど今度会ったら死ね言うたる。君も辞めちまえ!」

そんなLineを送りつけられて来た職員は北嶌のことを気味悪く思い、関わることを止めた。それでもそんな彼を心配に思い相手をしてくれる職員も何人かいた。何度かのLineのやり取りで落ち着いたのか北嶌は新しく別の施設へと移ることが決まり、新しく頑張ると意気込むようになっていた。北嶌が言うにはその施設は周りからの評判が良いから大丈夫と言うものだった。北嶌の話を親身に聞いていた尾ノ崎にも今いる場所を辞めてこれから行く施設へ来いと言っていたが、尾ノ崎は

「周りの評判が良くても自分にとって良いとは限らない」

と言って全く聞き入れようとはしなかった。そんなはずはないと北嶌は一蹴したが、実際働いてみると尾ノ崎の言ったように思っていたほど良い職場では無かった。訳の分からない細かな決まりごとがありさっぱりと理解できずついていけなかった。日に日に嫌だと思うことが多くなり早退することも目立っていた。

「こんなはずじゃなかった。まだ前のところの方がマシや。」

北嶌はそう思った。1週間、2週間と過ぎるうち辞めたいと思う衝動が強くなった。それを親に言うと「また辞めるんか」といびられた。それが追い打ちとなり葛藤となり北嶌を苦しめた。苦しい時は尾ノ崎にLineを送った。彼は親とは違い、本当に苦しいなら辞めたら良いと言ってくれた。辞める決心はついた。けれど、それを言いだすのが怖かった。意を決して辞めると伝えるとその上司にこの上なく叱責された。それがまた失意の北嶌を追い詰めていた。それ以降、北嶌は絶望し死にたいと口に出すようになった。診断では自律神経失調症と言われるが症状からしてうつ病に近いかもしれない。何度も尾ノ崎に死にたいというLineを送った。その度に彼は

「死ぬくらいなら以前のように恨み言の一つでも言った方がマシだ!どうして北嶌さんが死ななければいけないのか!?」

と言っていた。確かにその通りなのだ。悪いのは僕じゃない。周りの人間が悪いのだ。そもそも僕をここまで追い詰めたあの糞ババアが悪いんだ。恨み言を口にする度、その時の感情が蘇る。

「どうして僕が死ななくてはいけない?そうだ。死ぬべきはあの糞ババアだ!あの糞ババア!呪い殺してやる!一族全員呪ってやる!!」

怒りの感情が北嶌を支配する。それと同時にまた冷静さも研ぎ澄まされていく。殺したいけれど、生来臆病な自分。人前に立つと何も言えなくなり人を殺すなんてことは絶対に無理だ。呪いと言ってもそんな儀式の方法なんか知っているわけがない。

「そうだ。尾ノ崎君なら神社とか呪いとか変な知識がいっぱいある。もしかしたら効果的な呪いを知っているかもしれない。」

そう思った北嶌は尾ノ崎にLineを送った。

「確実に呪い殺せる方法を教えて」
「ありますけれど、本当に良いんですか?」

尾ノ崎はすぐに返信してくれた。それが北嶌には嬉しくてどうしても知りたいという思いとあの糞ババアへの恨みの感情を尾ノ崎にぶつけた。尾ノ崎は答えてくれた。

「伊吹山の麓、道の駅から奥伊吹へと続く道に牛刻神社と言う小さな神社があります。そこで恨みの相手を呪うと恐ろしい方法で呪いが成就すると言う言い伝えがあります。どうですか?」
「牛刻神社?」

聞いたことのない神社。しかも人里離れた場所にある謎の神社だ。よくそんなことを知っているなと思いつつ北嶌はその牛刻神社へ向かうことにした。

「願うと本当に叶います。だから、あまりお勧めはしませんけど。」

尾ノ崎は最後にこう返してきたが北嶌には彼の言葉はもう届いていなかった。

・・・・・

今日はここまで。4話完結と思っています。
続きはまた今度、まだグロテスクなシーンはありませんが、いずれ本番になります。
これはこの前辞めてしまった友人に捧げる小説でしたが、公開しても良いと言ってくれたので公開しました。
登場人物はすべて仮名で実在の人物とは一切関係ありません。
1 4

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年12月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

最近の日記

もっと見る