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2016年11月23日14:28

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第五話:人の心を宿せし者【その4】

【創作まとめ】
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【前回】
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ビルドマックスとやらを破壊した現場に警官隊が雪崩れ込み、事情を知った彼らによってブラックサタデー総帥、岡田純一郎は逮捕された。
警察の装備開発顧問が武器密輸組織の総帥だという事実は、警察にとって致命的なスキャンダルになりそうなものだが、元々彼の知名度が低かったこともあり、全く騒がれなかった。
ブラックサタデーとは、それほど小さな組織だったということね。
気がつけば博士はいつの間にか現場から居なくなっており、そしてオーガノイド・オベロンの頭部も無くなっていた。
改造人間の頭部には、脳を守るための生命維持装置が備え付けられている。
おそらく博士か頭部を持ち帰り、新たなボディを与えるに違いない。

「大丈夫、桜子ちゃん?」

私たちの安否を気遣ってくれていた特機のメンバーに、岡田教授の顛末を語るのは心苦しかったが・・・・・・

「元から色々と邪魔な人だったし、居なくなってよかったじゃん!」

とボスが言っていた。
本当にそれでいいのだろうか?
特に大学で彼に講義を受けていたというゆづきちゃんも・・・・・・

「岡田教授って怪しいと思ってたんですよ。私のお尻とか触ろうとしてきてたし!」

感傷に浸るどころか、余罪が増えそうな勢いだった。
本当に人望の無い人ね。
戦いを終え、現場の処理を警官隊に任せ、今回の作戦から解放されたのが午前五時、空も白みがかっていた。
私はそのまま家に帰って、今回の戦いでの疲れを癒すためにひたすら寝・・・・・・という選択肢を選びたかったのだが、どうしても気になることがあったので、家に帰らずにそのままシャドールの本部へと向かった。

「BLってのはボーイズラブの略称よ」

研究室では、事務員のエミールがパソコンに向かって頭のおかしいことを話していた。
なんでも新型AIに言語を覚えさせているということらしいが、果たしてBLという言葉が必要になる日が来るのかは定かではないわね。
ていうか、教育係の人選間違えてるわよ。

「博士はどうしてるの?」
「今朝がた帰って来て自室に籠りきりですね。なんでもいいデータが取れたってスキップしながら帰ってきたので、かなりキモかったですよ」

きっとオーガインとオベロンの戦闘データのことを言ってるのね。

「何か良い妹系エロゲーでも手に入れたんですかね」

新作エロゲーを手に入れたくらいでスキップされたら、たしかにキモいわね。
エミールの中では博士ってそういう風に見えるんだ。
まあ、日頃の行いがアレだから自業自得よね。

「じゃあ私、博士の所に行ってくるから」
「デュフッ、朝からお楽しみですか?」
「アンタもその返し、飽きないわねえ」

いつものやり取りをして博士の部屋を訪ねる。

「入りたまえ」

博士の返事を待って部屋に入る。
普段はおちゃらけているが、こう見えてシャドールの幹部の一人。
第一研究室の責任者でもある。

『ダメッ、お兄ちゃん・・・・・・玄関でなんて、誰か来ちゃうよ!』
「フヒッ♪花音ちゃん、大丈夫だよ。お兄ちゃんが優しくしてあげるね!」

オーガノイド・オベロンの頭部でパソコンのCPUとメモリを増設して、妹系エロゲーをしているキモい人物がそこにいた。
ていうかそれは機械工学の天才でありシャドールの幹部、園崎顕将だった。
さっきのエミールの話、あながち的外れじゃなかったようね。

「って何やってるんですか!?」
「ん? 妹観察日記〜はじめてのおつかいにはイタズラがいっぱい〜だけど?」
「エロゲーのタイトルとかどうでもいいですよ!」

オーガインと共闘している時はちょっとかっこいいと思ったけど、どうやら私の気の迷いだったようね。
どうも、この人だけはいまだに読めないわ。

「ちょっとお話いいですか?」
「今いいとこなんだけど・・・・・・今じゃなきゃダメかい?」
「じゃあ、先にそのパソコンを破壊してから話しますね?」
「今すぐ聞こうじゃないか!」

ポキポキと指を鳴らす私にクルリと向き直る博士。

「今日はお疲れだったね」
「そうですね」
「で、改まって何の話だい?」

博士は私の心まで見透かすような目で見つめてくる。

「ようやく僕のことをお兄ちゃ」
「違います」
「せめて最後まで言わせてよ」

一日二回もその話題はいらないわよ。
私が聞きたいのはそんな話じゃないわ。

「オーガインのこと、何処からが博士の計画なんですか?」

単刀直入に聞いた。

「何処から・・・・・・とは?」
「オーガインは不慮の事故で脳改造前に起動し、逃げたと思っていました」
「そうだね」
「でも本当にそうなのでしょうか?」
「どういうことだい?」
「あの日、搬送された石動雷馬に麻酔を施したのは博士です。そして麻酔の切れるタイミングを見誤り、オーガインは目覚めた」
「そうだね」
「果たして天才科学者と呼ばれる園崎顕将が、麻酔の分量を間違えるという、初歩的なミスをするのでしょうか?」
「いやあ、へへへ」
「褒めてませんからね?」
「あれ? そうなの?」

今さら天才科学者という言葉に照れる立場でもないでしょ。
そんなウブな博士見たこと無いわよ。

「そして今日、オーガインが言っていた『研究所を抜け出して己の正義に従え』という言葉。脳改造を受けていないはずの彼に、そんな命令を出せる人間など一人しかいません」

博士は私の言葉にパチパチと拍手を鳴らす。

「見事な推理だよ。桜子君の予想通り、あの日、改造手術をする時から彼を逃がす計画は始まっていたんだよ」
「それってやっばり」
「そうだ。脳改造を受けた改造人間と、受けていない改造人間、二つの可能性を見てみたくてね」
「やはりそうでしたか」
「まあその結果として、今日は良いものが見れただろ?」

オーバーイマジンシステムとブラッドフォーム。
脳改造を受けていない改造人間の可能性と、受けた改造人間の可能性。
どちらも強力で、強大で、戦いの中で開花した可能性。
片方の可能性はエロゲープレイのためのパソコン増設に使われてるけど、今は気にしないでおこう。

「そういう話は、これからは前もって言っておいてくださいね」

博士の気まぐれに振り回されるのも大変なんだから。
少しでも気苦労を減らしたいわけよ。

「それは出来ない」
「え?」
「これからも思い付きで動くし、それを桜子君にいちいち説明したりしないし、隠し事もする」
「私が助手として信用できないからですか?」

たしかに私は博士と比べたら、まだまだ足下に及ばないくらい差はある。
それでも少しでも追い付きたいと願い頑張ってきた。
でも信用されていないのなら、この先博士と一緒にいても意味がないのかも知れないわね。

「なに言ってんの? 信用してるからこそ、思い付きで動くし、いちいち説明したりしないし、隠し事もするんだよ」
「どういう意味ですか?」
「だって黙ってても、今回のように自力で辿り着けると信じているからね」
「あ・・・・・・」

たしかにそうだ。
時間こそかかったが、博士の真意にたどり着けた。

「いいかい、桜子君。人は戦いの中で急激に進化する。そして、学問は・・・・・・研究は気付きだ。常に色んな情報に目を光らせ、様々な可能性に気付くんだ。そうすれば、キミは自分だけの可能性に気付き進化できる。僕の真似事ではない、新しい小鳥遊桜子に進化できるんだ」

研究とは、人の成長とは新しい発見との出会い。
新しい気付きが人を次のステージへと導く。
誰かの後ろ姿を追うのではなく、自分だけの進化の道を。
私は博士に出会い、博士のような科学者になりたいと願い、博士の技術を吸収することに躍起になっていた。
勿論先人の知識を得る事が悪いことではない。
でも、私も次のステージへ進む時が来たということなのね。

「わかりました。なんだか上手く乗せられたような気がしますけど、そういうことにしておきます」
「それは何よりだ。では納得したところで僕のことをおに」
「呼びませんから!」
「ふむ、この良さに気付くのはいつになることやら」

これからも私は自分の信じた道を歩み続ける。
それがどんなに険しい道であろうとも。


【次回予告】
エミール「ついにオーガインサーガ第一章、完結しましたね」
桜子「一章とかそんな概念があったことに驚きよ。ていうか、オーガインサーガってなに?」
エミール「資料によりますと、第一話と第二話が序章『オーガイン誕生編』、第三話〜第五話までが第一章『特機結成編』らしいですよ」
桜子「後付け感がハンパないわね」
エミール「そして次回からはオーガインサーガ第二章『特機激闘編』が始まりますよ」
桜子「なにそのチープなタイトル」
エミール「次回、超攻鬼装オーガイン第六話『テンプテーション・パニック』に」
桜子・エミール「チャージ・イグニッション!」
エミール「ついに桜子先輩が園咲博士に対して「お兄ちゃん」って誘惑するんですね!?」
桜子「するわけないでしょ」

【第六話へ続く】
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【捕捉】

今回も遅くなってすいません。
いやー、なかなか難産でした。
心理戦、超絶バトル、巨大戦とバトル三昧で、バトル描写の苦手な私には、かなり厳しい戦いでした。

今までのバトルシーンでは、ほぼバトルだけで話の核心に迫ったりしなかったのですが、今回はバトル中に色々と重要なことを喋らすように意識しました。
いやだって、バトルメインなのに会話無しで淡々と戦っててもつまらないじゃん?
それなら会話させようかって。
オーガインには特撮ヒーロー番組をリスペクトしてる部分が多々あるわけですが、バトル中にバトルしかしないのは特撮の特徴(バトルの中で成長するとか例外はあるけど)
でもバトルアニメとかだと、下手したら三話、四話とバトルが続くことがあるわけで、その中で戦いながら重要な会話をしているんですよ。
だからそういうのにチャレンジしてみようかと思ったわけです(出来てるかどうかは別として)

そして今回は色々と対比させる話にしてます。
心理戦でオーガインを追い込む博士と、それを救う桜子。
感情を持ったオーガインと、感情を持たないオベロン(代わりに博士が話すけど)
感情を機械で完全制御出来るからこそ使えるブラッドフォームと、熱い感情があるからこそ使えるオーバーイマジンシステム。
このオーガインという話は、人間とはなんぞや? 魂とはなんぞや?  感情とはなんぞや?  みたいなふわっとしたものをテーマにしていまして、実は私の中でも答えは出てません。
今回の話で、そういったオーガインの根幹となる部分を少しでも考え、何かを感じてもらえればと思っています。

上記の二ヶ所が書き手として気になるところなので、批評をお願いしたいです。
もちろん、他に感じたことがあれば、ドンドン遠慮なく言ってください。
基本的に私は書き手としてまだまだ未熟だという意識はありますので、色々意見が貰えると嬉しいです。
言われないと気づけないこともあるしね。
「読む価値なし」「死ね」「ボケ」「カス」「このイケメンが!」「(男だけど)抱いてくれ!」等、極端な(人格を傷つけるような)誹謗中傷でなければ全て受け入れますので、よろしくお願いします。

それでは皆様、ここまで長々とお相手してくださり、そして御拝読いただき、本当にありがとうございました。
また次のお話でお会いしましょう。

あー、やっとこれで艦これイベント出来るよ!
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