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2016年11月23日14:26

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【創作】超攻鬼装オーガイン  第五話:人の心を宿せし者【その3】

【創作まとめ】
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【前回】
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「ねえ?」
「なんですか?」

私の呼びかけに答えるオーガイン。

「アンタってブラックサタデーに潜入している時に拐われたんだっけ?」
「ええ、そうですよ」
「アレに拐われたの?」

ドヤ顔で現れた岡田教授を指差す。

「お恥ずかしい限りです」

消え入りそうな声で恐縮するオーガイン。

「ないわー! 特殊部隊の戦士が岡田教授に拐われるとかないわー!」
「ええい、人を指差すんじゃない! この小娘が!」

岡田教授は私の対応がお気に召さない様子で怒ってる。
ていうか、今回の作戦のラスボスがコレとか勘弁してよ。

「もっとこう、岡田教授がどうしてブラックサタデーに!? とかあるだろ? もっとドラマチックな再会を演出しろよ!」
「いや興味無いんで!」
「もっと興味持てよ! これでも私はお前の恩師で、教授で警察の装備開発顧問なんだぞー!?」

両手で頭を抱えながら悶絶してる。
まあ百歩譲ってラスボスが岡田教授なのは驚いたよ?
でもね、ラスボスが岡田教授なんだよ?
お前どこまでしょうもない邪魔ばかりしてんのよって話なわけよ。
だってさっきまで超絶バトルしてたんだよ?
今さら岡田教授ごときがどのツラさげて出てきてんだって話よ。
そりゃ緊張の糸も切れてアホな話もしたくなるわよ。

「大方、警察の装備開発顧問になって、武器売買のルートが確保出来たから悪用したってとこでしょ?」
「どうしてそれをッ!?」

浅いわー。
雨上がりに出来た水溜まりより浅いわー。

「で、シャドールの幹部に園咲顕将が居ることを知らずに取り入ったんでしょ? 因縁の相手に顎で使われてるとも知らずに」
「過去を邪推して、勝手に恥ずかしい話みたいに脚色してベラベラと話すんじゃない!」
「でも図星なんでしょ?」
「うぐっ」

やっぱり図星なのね。

「で、アンタはコレに誘拐されたと?」
「言わないでください」

振り向いた先のオーガインは両手で顔を覆い尽くしている。
きっと変身解除したら赤面しているんでしょうね。
再び岡田教授に向き。

「で?」
「で??」

キョトンとする岡田教授。
コイツなんなの? 要領悪過ぎでしょ。

「今さら出てきて何がしたいの?」
「ふっふっふっ、お前ら全員を殺し、それを手土産にシャドールの四大長に就任するのさ!」

オーガインのメンテナンスもロクに出来ないのに、この自信はどこから来るのだろう?
能天気もここまで突き抜ければ、少しだけ興味が出てくるわ。

「それは聞き捨てならないね」

岡田教授の言葉に、沈黙を守っていた博士が歩み出る。
いや博士も何で私たちの仲間みたいな立ち位置にいるの?
さっきまで本気で殺し合ってたじゃん。

「仮に君が僕の殺害に成功したとしても、君程度の頭脳じゃ僕の後釜にはなれないよ」
「や、やってみなければわからないだろ!」
「まさか君程度の人間が、僕を本気で殺せると思ってるわけ?」

全てを見透かすような氷の視線で睨む。
容赦なく被験体を改造するときのような顔してる。
付き合いの長い私でさえ背筋が寒くなるのよね。

「まあいい、やれるならやってみなよ。お手並み拝見といこうか」

そう言い放つと、博士は岡田教授との距離を一気に詰め、左右のフックをボディに打ち込み、よろめいた所を右のアッパーで内臓をえぐる。
ああ見えてシャドールの戦闘訓練では、一般コマンダーを押し退けて上位に入るのよね、あの人。
たしか剣道、柔道、空手、ともに四段くらい修めてるんだっけ?
だからマッドサイエンティスト特有の変な道具とかで戦わなくても、一般人相手なら素で強い。
私でさえまだ各二段なのにね。

「ぐへっ・・・・・・何もいきなり殴ることはないじゃないか。これだから野蛮人は嫌なんだよ」

殺人宣言してる人が何言ってんだか。
殺すと言った以上、殺される可能性も考慮しなさいっての。

「もう許さん、後悔するがいい!」

岡田教授はポケットから何かのリモコンを取り出すと、躊躇なくボタンを押す。
すると倉庫の隅にあった重機が動きだし、岡田教授へ向かって走り出す。
その途中でそれぞれの重機がドッキングし、人型っぽい巨大なロボットへと変貌した。
この人、こんなことが出来る技術持ってたんだ。
ちょっと侮ってたわ。

「はっはっはっ! このビルドマックスの力、思いしるがいい!」

岡田教授はビルドマックスとやらに乗り込む。
ちょっと待て、お前が操縦するの?
こういうのって、操縦に長けたスペシャリストが乗るもんじゃないの?

「さあ、泣き叫ぶがいい!」

岡田教授が操縦するビルドマックスとやらは、右腕と思われるシャベルを振りかぶり、勢いよく地面を打ち付けコンクリートを弾き飛ばす。
えーと、着弾箇所かなり遠いわよ?

「今のは小手調べだ、次こそ覚悟しろ!」

言い訳がうぜー。
だがアホな発言とは裏腹に、今度は私に向かってシャベルが振り下ろされる。
が、図体が大きい分、動きは予想しやすい。
私は駆け足気味に横に移動してやり過ごす。

「何で私なのよ。話の流れ的に博士を狙いなさいよ」
「はっはっはっ、桜子君はナチュラルに僕を売るねえ」

とはいえ、このまま放置しておく訳にはいかないわね。

「オーガイン、アイツをやっつけるわよ?」
「いやいや、今はガス欠で動けない状態なので無理ですって!」

そういえばさっきの戦いで、オーガインも満身創痍な上にエネルギーも使い果たしたんだっけ。
ん?それって・・・・・・

「結構ピンチじゃないの?」

オーガインが動けない以上、私と博士でビルドマックスとやらを倒さないといけないわけ?
いや無理でしょ!
いくら博士が強いって言っても、それは一般人相手の話よ。
あんな巨大ロボットを生身の人間二人で相手取ることなんて不可能よ。

「やれやれ、仕方ないねえ」

だが博士は落ち着いていた。
まさかこの場を切り抜ける方法があるのかしら。
一人で逃げるとか言わないわよね?

「桜子君、オベロンを貸してあげるから、三分ほど時間を稼いどいて」
「はい?」
「その間に僕がオーガインを動けるようにして上げるよ」
「な、なんですってええええ!?」

驚く私をよそに、博士はスタスタとオーガインに歩み寄る。

「よせ、近づくな! また改造する気か!?」
「まさか、少しチューニングするだけだよ」

動けないオーガインに抵抗する手段は無い。
されるがままにアーマーを開かれる。

「オベロンは桜子君の指示で動くんだよ?」
「ラジャ」

両腕を失ったオベロンが再び動き出し、私のもとへ駆け足でやってくる。
ってコイツ動けたんかい!

「両腕を失って、大量のエナジーリキッドも流れ出たから、ブラッドフォームどころか、本来のスペック通りも動かないだろうけど、時間稼ぎくらいは出来ると思うよ」
「わかったわ。行くわよ、オベロン!」
「ラジャ」
「ヘルプミー、桜子さん!」

助けを求めるオーガインを無視して、私とオベロンはビルドマックスとやらに向き直る。
これから三分間、死守してみせるわ!


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オベロンはビルドマックスとやらの攻撃を掻い潜り懐へと飛び込むと、ボディの突起に足を掛けて駆け登る。
そして跳躍した頂点で前方回転しながら、その勢いを利用して踵落としを叩き込む。
改造人間ってああいう動きも出来るんだー。
なんか心なしか、オーガインより動き良くない?
あれが脳年齢48歳の動きなの?
いや、オベロンの元である小部さんが48歳なだけで、脳年齢は別なんだっけ?

「私の指示で動けって言ってたけど、全自動で戦ってんじゃん」

その後もオベロンは軽快なフットワークでビルドマックスとやらを翻弄しては、多彩な蹴り技で対抗している。
その動きは見事と言えるが、いかんせん体格が違い過ぎてダメージが通っているようには見えないわ。
仮にオーガインが動けるようになったとして、この体格差の不利をひっくり返すことが可能なのかしら。
心配と不安からオーガインの方に目を向けると、博士が驚異的な速度でメンテナンスをしている。

「君は出力調整するための訓練は、今も続けているのかい?」
「勿論だ」
「桜子君が君の出力調整を施した際の封印を解除する。これにより君は改造人間として本来の力を取り戻す。心して挑めよ」
「封印? あの出力を絞っただてやつか?」
「そうだ」

オーガインが研究所を抜け出した際、脳改造を受けていない彼は力の制御が出来ないでいた。
触る物全てを破壊してしまう彼を見かねて、実生活に支障をきたさないように、出力を抑えるように調整を施したわけだが。
あれってまだ解除してなかったんだっけ。

「君がオベロンとの力勝負で負けた時から気になってたんだよね」

つまり彼の迷いが力の不調をもたらしたのではなく、私の調整ミスで押されてたってこと?
いやいや、それでもその調整をしないと彼は生活もままならなかったんだから、不可抗力よね。

「よし、チューニング完了。あとは、エネルギーだが・・・・・・よっこらせっと」

博士は床に落ちていた、オベロンがブラッドフォームを起動させた時に外したウエポンシステムを持ち上げ、オーガインに取り付ける。

「君とオベロンは互換性があるからね。これでバックパックから少しはエネルギー充填できるだろ」
「何故ここまで俺たちに力を貸すんだ?」
「君たちがあのデカブツを倒してくれないと帰れないだろ?」
「本当にそれだけか?」
「せっかくいいデータが取れたんだし、ちゃんと持ち帰りたいんだよ」
「ふん、そういうことにしておいてやるよ」

男同士の会話・・・・・・か。
女である私としては、少し羨ましくも感じるわね。
だがこれで反撃の準備は整ったようね。
さて、オベロンはどうしてるかしら。

「おのれ、手こずらせやがって!」

捕まっていた。
あれ? さっきまで軽快に翻弄してたじゃん!
少し目を離した隙に何やってんのよ。

「ちょこまかと煩かったが、まさかエネルギー切れで動けなくなるとはな」

お前もガス欠かい!
考えてみれば、エネルギー消費の激しいブラッドフォームとか使ってたもんね。

「くらえ、ギガンティックブロウ!」

いつの間に換装したのか、右腕のドリルがオベロンのボディを撃ち抜く。

「オベローンッ」

ドリルの直撃を受けたオベロンの体は粉々に砕け散り、唯一残った頭部が地面にぶつかり二転三転と転がる。
私の叫びに気がついたのか、オーガインも駆け寄ってくる。

「あちゃー、やられちゃったか。でも、時間は稼げたから結果オーライだね」
「貴様ッ!」

あっけらかんとしている博士にオーガインは詰め寄る。

「僕に怒っても危機は脱せないよ? ここは時間を稼いでくれたオベロンに感謝して、アイツに怒りをぶつけようじゃないか」

ビルドマックスとやらに目を向けると、岡田教授が悪者特有のニヤリとした笑みを浮かべる。
あの勝ち誇った顔、ムカつくわー。
絶対に泣き顔に変えてやるわ。

「悪い顔をしてやがる。だがその話に乗ってやるよ!」

オーガインもビルドマックスとやらに向き合い、パイルバンカーを構える。

「いいかい? 君が覚醒したオーバーイマジンはイメージを具現化する力だ。拳法の達人が離れた敵を気の力で倒すやつがあるだろ? アレを機械的に増幅している」
「なるほど、わからん!」
「頭で理解する必要はない、体で覚えろ。君のアイツを倒したいという想いを形にしてイメージしろ」
「それなら簡単だ」
「エネルギー残量から考えると、チャンスは一回。外すなよ?」
「当たり前だ」

それは長年苦楽を共にした相棒のような既視感。
相対する組織に属する存在でありながら、産みの親に対する絶対的信頼と言うべきか。
二人は奇妙な絆で通じ合ってるように見えるわ。

「集中しろ、君なら絶対に出来るさ」
「ああ!」

オーガインが意識を集中させると、何もない空間に歪みが生じ、何かが具現化されていく。
それはオーガインが最も信頼を置く力。
鬼の力を体現した武器へと姿を変える。

「な、何だその力は!?  そんな力、私は聞いていないぞ!」

何もない空間に現れた巨大なパイルバンカーに岡田教授はみっともなく狼狽える。
だが時は満ちた、許しを請うてももう遅い。

「今だ、やりたまえ!」
「やっちゃいなさい!」

私と博士の言葉が シンクロする。

「オーバーイマジン、フルドライブ!幻影鬼衝撃(ファイナルインパクト)!!」

字面が全く合わないルビを叫びながら、巨大なパイルバンカーが振り抜かれる。
それは空間を震わせ、大気を切り裂きビルドマックスとやらに迫る。
直撃する瞬間、天の裁きと言わんばかりの轟音が辺りを包み込み、逆に無音の世界を作り出すと同時に巨大なバンカーが繰り出される。
その衝撃は、直撃を受けたビルドマックスとやらを破壊するだけでなく、その余波で倉庫の屋根と壁を吹き飛ばし、外との垣根を消し去る。
倉庫の外には応援で駆けつけた警官隊が囲んでいたが、衝撃に巻き込まれて埠頭の海へ次々と投げ出される。
突き抜けた衝撃は倉庫を突き破り、外の海を真っ二つに割り、神の如き力を見せつける。
それほどの攻撃。
これほどの衝撃。
オーガインのそばにいた私たちは、衝撃で塵になってそうなものだが、そこは彼の作り出した力場が守ってくれていた。
衝撃が収まると、上半身が綺麗に削り取られ、コクピットが丸出しのビルドマックスとやらだった物体が静かに佇んでいた。
そして、心底恐怖を感じたのだろう、ふさふさの黒髪が真っ白に変色した岡田教授が立ち尽くしていた。

「ブラボーな進化だ!」

その光景に、博士だけが満足していた。

【その4へつづく】
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