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2016年11月13日19:42

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METライブビューイング トリスタンとイゾルデ

2016/11/12土 10:00- 新宿ピカデリー

指揮: サイモン・ラトル
演出: マリウシュ・トレルンスキ

イゾルデ: ニーナ・ステンメ
トリスタン: スチュアート・スケルトン
ブランゲーネ: エカテリーナ・グバノヴァ
マルケ王: ルネ・パーペ
クルヴェナール: エフゲニー・ニキティン

MET上演日 2016/10/8

METライブビューイングの新シーズンの第一作目はラトルの振るトリスタン(トリイゾはやめるべしというご注意いただきまして略称を今回から変更)。

いやー、すんばらしかったです。人によって感じ方の違いはあると思いますが、私にとってはイゾルデ役のステンメと、そしてラトルに率いられたオケの功績が大きいと感じました。でも、それ以外の歌手も皆さん素晴らしかった。そして演出も好き!

全体を通して、とても演劇的で登場人物の像がリアルに感じられました。ああ、この話ってこういう話だったのか、っていろんなところで腑に落ちた。

セットは、第一幕は軍艦の中。船の断面図が舞台になっていて、場面によって一部の小部屋だけを明るく照らし、他を闇に沈ませる。これは別に新しい手法ではないと思うのですが、登場人物の少ないこのオペラで人物同士のやりとりを親密に見せるのに有効な手法だと思いました。このセット、かなりお金かかってるし、ちょっと小さい会場だと全部入らないのでは。

第二幕は船の艦橋をイメージした空間(だと思いました)。全体を通してこの演出は海と船のイメージを強く打ち出しています。各幕の始まりは船のレーダー画面をイメージしたものだし、様々なシーンで波のイメージが出てきます。もちろん、この話には船が必ず出てくるのですけど、単純にストーリー進行上の理由ではなく、大きな運命(=波)に呑まれる人間達(=船)のような作品のテーマとして扱われている感じです。

第三幕は、病室。舞台装置はかなり少なくなります。幕が進むにつれ、大掛かりなセットはどんどん少なくなって舞台上はシンプルになっていき、状況説明から心理描写へと観衆の意識を集中させていくのに効果的だと思いました。そして、トリスタンとイゾルデの最後の逢瀬のときにマルケ王の部下とクルヴェナルが乱闘になるシーンの演出が面白かった。声を発しない主役の二人以外は姿が見えないのです。イゾルデはその前に手首を切って自殺を図っているという設定で、彼女の朦朧とした視界が舞台上で表現され、マルケ王その他の声だけが聴こえる。なんて秀逸!

そういうセットの中で、でも、オペラというよりは芝居のように、登場人物は細かい仕草を交えて演技をします。その中で光っていたのがイゾルデ役のステンメでした。

ステンメ、歌がまず素晴らしいです。しっかりした威厳のある声、そして正確な音程とリズム感。それに加えて、演技の上手いこと!声に感情を乗せるのも上手い。加えて女優のように表情や体の動きで感情を伝える演技力もある!いやーもう彼女の出てくるシーンでは彼女の声を表情に惹きつけられてしまいました。第三幕最後の愛と死のシーンなんて、すっかりイゾルデに感情移入して滂沱の涙です。9割方の入りだった映画館の中のあちこちから鼻をすする音が聞こえてきたので、そういう人も多かったのではないかしら。

その他の歌手も超豪華なメンバーで文句なしでした。ただ、個人的には、大好きなパーペ様のマルケ王が何だか冷たくてがっかり。声じゃなくて演技の方。もっと父性たっぷりのマルケ王が好きなんだけどな。

そしてこのオペラの主役の一つである、オケ。録音なのではっきりしたことは分からないながらも、映画館で聴いていて本当にうっとりするほど美しいなと思いました。ラトル指揮のオケは力強くそして豊かな音で、あの独特の音楽を魅力的に表現していたと思います。

この演出、初演は今年の3月、バーデンバーデン祝祭歌劇場で、そのときのイゾルデはウェストブルックだったんですね。オケはベルリンフィル!すげー。

映画館で観てもこれだけ大感動したんだから、生で観たら凄いんだろうなあ・・・!ライブでご覧になった方々、羨ましい限りです。

ところで、男性陣が来ていた軍服はどこの国の軍服に近いんでしょう。そのあたりにも深い意味がありそうなんですが。どなたか詳しい方、いらしたら是非教えてくださいませ!

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