NO803 朝鮮に対し日・清協同の件 その2 戊号、己号
http://db.history.go.kr/item/level.do?levelId=jh_003_0030_0020
駐韓日本公使館記錄 3巻 参. 東学乱と 清日関係 二 (2) 朝鮮ニ対シ日清協同ノ義ニ関スル来復電信並ニ口演書其他対話筆記相添申進ノ件
[別紙 戊号]
文書題目 [六月 十九日 小村公使と清国総署大臣・孫毓汶、徐用儀、張蔭桓、崇禮 などとの面談内容]
明治二十七日六月十九日の朝鮮事件に関し、清国・総理衙門で対話。筆記は次の通り。
列席総署大臣 孫毓汶 徐用儀 張蔭桓 崇禮
臨時代理公使 小村寿太�� 参等書記官 鄭永昌 訳述
本日午後三時半に面会の約束であったが、この時間になっても英国公使オコ―ノル氏はまだ衙門で談話中であるということで、最初出席したのは孫毓汶・崇禮両大臣であった。そこで英国公使退散後各大臣来会するのを待ち、そのためこの両大臣と雑話が数十分にわたりその後ようやく徐用儀・張蔭桓両大臣が来席した。
小村 本日こちらをお訪ねしたのは、重大な事件に関して御面談致したいのでの、英国公使の退散を待ち、各位大臣にお会いした上でお話しようと希望し、只今までお二人の大臣の御来席をお待ちしていた次第です。
その事は私の事ではありません。実は昨日の朝鮮事件について我が国の外務大臣からの電訓を受けました。その趣旨は簡略に認め御覧頂くようお渡ししておきましたので、すでにご熟覧頂いている事と存じます。
またこの件については、在東京・貴国公使からも詳細を上申されていると思います。これは重大な事件なので貴国政府から出来るだけ早く御回答いただくことを希望します。
徐 貴国政府は在東京・汪公使（＊在東京清国特命全権公使・汪鳳藻）を通じて三カ条の提案（＊1.反乱を鎮圧して秩序を回復すること。2.日•清両国は合同委員を任命して行政と財政を改革すること。3.朝鮮の自衛のため充分な陸軍を組織すること。）を申し入れられたなどとあるが、李中堂からの来電によると、貴国政府はこの三カ条を、在天津日本領事を経て申しいれられたということで、汪公使から電稟したということは全く承知していない。これはすこし事実と相違しているのだはないかと考える。
小村 外務大臣の電報によればこの三カ条は在東京貴国公使を経て申し入れたとあるので事実の相違はないと信じている。
孫 貴国政府より提出された三ヶ条に対する我が政府の意見については、在東京汪公使から回答するようすでに李中堂へ連絡しているので、すでに李中堂から回電（＊返電）があったっことと信じている。
したがってこの件に関し、貴署大臣と弁論を重ねる必要はないと考えるが、この席では全く我々の私話としてこれを話し合うことに妨げはないであろう。
小村 本官も勿論この件に関して貴大臣らとあれこれと弁論するつ折りではありません。ただ事が重大で一日もこれをなおざりにしてはおけないことなので、貴政府より速やかに御回答がいただける事をお願いするために参った次第です。
徐 今度朝鮮事件についての貴国政府の動きは、本大臣らには全く想像できないことである。清国は朝鮮立国以来、国内擾乱を自力で鎮圧にくい時は援兵を派遣した事が数回あり、今日に始まった事ではない事はご承知のことと思う。
小村 本官は朝鮮事件に関して我が政府よりまだ詳細の報知に接していないので、実際の状況がどうなのかは承知していない。本官は単に一個人の資格で御話致したいと思う。我が政府の朝鮮に対する意向と貴国政府の所見とは自ずから異なる所があるので御了解いただけないのも無理ではない事だと思う。
孫 貴国政府から提出された第一カ条に「朝鮮の逆徒を鎮圧すべし」とあるが、この叛徒の重立ったものは既に散乱し、各地方には多少の叛徒が出没するだけで、朝鮮の自国の兵力でこれを征服するのは難しくないので、「最早天兵（＊清国軍）の応援を仰ぐまでもない」と同国政府より袁世凱へ通知した、との報告に接している。
そこで清兵も内地への進入を見合わせている状況で、今この「朝鮮の逆徒を鎮圧すべし」とする日本の方法を施行するの必要があるとは思えない。
貴国の兵員が京城に達しているのでこの国の人心を動搖させ却って事件を引き起こす心配がないとは言えない。
小村 朝鮮政府から朝鮮内地の逆徒が散乱しもはや平定に至っていると袁氏へ通知した言われるが、今回の逆徒（＊東学軍）は全羅・忠清の両道にわたってその勢いは甚だ劇烈であるので、容易には鎮定し難いことと考える。
徐 袁世凱の上申によると、「日本政府は自国人民保護のため兵員二、三百名を朝鮮に派遣するだろう」と在京城・大鳥公使から伝えられたが、次第にその兵数を増加し、既に八百余名の多さに至っているという。またその後二千余の兵隊を貴国より繰り出すとの風説も聞き及んでいる。国乱が鎮定されている今日に至り、このように多数の兵員を派遣されるのは実にそのお考えが理解出来ない。
孫 第二、第三条に「朝鮮国の内政理財を更正し軍務を整頓する」云々とあるが、我が政府は明確にこれに同意する意志を表し難い。
朝鮮は自立の権を有しているので我々も属邦だとしてみだりにその内政に干涉することは出来ない。清・韓両国の間柄においてさえなおこのような状態である。いわんや日本は隣邦であるというよしみがあるだけなのだから内政に干渉することなど出来るはずもない。
またこの干涉につていは諸外国においても各々その意見を異にし、場合によっては遂に思わぬ事件を引き起こし、かえって両国間の迷惑を招く心配がある。この点についてはよく注意する必要があると思う。
小村 そのあたりの心配があるからこそ我が政府はこの案を提出し、日・清・韓三国間の和好を永続かつ強固にしようとの考えにほかならない。
孫 貴国政府よりこの案を提出されたのはもともと好意からでたこととは信じているが、我が政府は今述べた理由があるので何分同意を表することは難しい。
小村 今ここに貴大臣等の御注意を促しておきたいことがある。すなわち上に述べた三ヶ条は貴・我両国間で協議・施行する重大の事件であるので、互いにこれを秘密にしておくことが最も緊要と考える。もし他の外国公使に探知された場合はかれこれ面倒な関係を醸成する恐れが少なくないので、他言のないことを切望する。
張 全く御同感である。貴署大臣から御他言がない以上は本大臣等においても決して他に漏れないように注意しよう。
孫 本大臣等においては腹藏なく我が政府の意見を申し上げた次第なので、なお貴署大臣より貴国外務大臣へ御報告なさることは妨げはない。
小村 貴大臣より承ったことはその大略を我が外務大臣に報告しよう。貴政府より李中堂を経て御回答になった上な最早他に御話に致す事はない。
終わり
[別紙 己号]
文書題目 [六月 十九日付 北京・小村臨時代理公使の陸奥外務大臣宛の電信]
Komura
to Mutsu
I had an interview with 王大臣 to urge the necessity of prompt answer. 李鴻章 has been instructed already to reject your proposal which he represented to have been made through 在清国天津一等領事
Peking, June 19, '94. 7.30 p.m.
（私訳）
本官は迅速な回答の必要性を力説するために王大臣を会談を持ちました。
李鴻章は、清国駐在の天津一等領事を通じて伝達しようとした貴官の提案に対して、既にこれを拒否せよという訓令を受けました。
[別紙 庚号]
文書題目 [六月二十日付 陸奥外務大臣が北京・小村臨時代理公使へ送った電信]
Mutsu
to Komura
Your telegram of 六月十九日 received. Lee 王大臣 again and insist upon their forwarding answer through proper diplomatic channel 在日本清国公使 as requsted.
Any conversation between 李鴻章 and 在清国 天津一等領事 can not be regarded as much.
Tokio, June 20, '94. 2.30 a.m.
Peking, June 20, 94. 10.10 a.m.
貴官の6月 19日付電信を受け拝見しました。
李鴻章と王大臣は、日本から要求がある時は、彼らの回答を適切な外交的チャンネルである日本駐在・清国公使を通して送ろうと引き続き主張しています。
したがって李鴻章と清国駐在天津一等領事の間のいかなる会談も期待することはできません。
ログインしてコメントを確認・投稿する