18940616 NO795 清国は「もし朝鮮の内乱が鎮定した場合、両国は互いに一先ず軍隊を引き揚げその後ゆっくりとこの件について協議されても決して遅いとは思わない」と主張
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駐韓日本公使館記録 3巻 二. 東学乱と 清日関係 一 (48) 陸奧外務大臣と 清国公使 汪鳳藻との 談話槪要
文書題目 (48) 陸奧外務大臣と 清国公使 汪鳳藻との 談話概要
文書番号 秘 （＊明治二十七年六月十六日 1894年06月16日）
発信者
受信者
(48) 陸奧外務大臣と 清国公使 汪鳳藻との 談話槪要
秘
(明治二十七年六月十六日午前十時半より午后一時半まで)
外務大臣
前日閣下は李中堂の訓令を伝えるため伊藤伯に面談されたとのことは本大臣も伊藤伯より細かく聞き及んでいる。このときの話にあった朝鮮での事件の跡始末についての処置に関してその後まだ李中堂よりは何もご連絡はありませんか。
清国公使
まだなにお通知を受けていない。
外務大臣
それならば閣下としてなにか御考案があるならば承りたい。
清国公使
特別に今閣下に公然と申し述べるほどの意見はなく、たとえあったとしても全く一個人の意見に過ぎないので、閣下にお聞きいただく価値も無いと思う。
ただ過日伊藤伯は同件について何か御意見を抱いておられるやに承っている。この件についての貴政府の御意見は、今日はまだ承ることはできないのか。
外務大臣
そのことです。本日は朝鮮国の事に関し李中堂より何事かご連絡があったかを承りたく、また我が政府の意見をも御話してみたく、閣下の来臨をお願いした次第である。
御承知の通り、朝鮮は元来貴国と我が国と協同して盛りたてなければ殆どその国の安泰を維持できないほどの国柄であるのだが、現在は特に東学党の内乱に遭遇し、もしながく平定できないままになるとあの国の歩みは益々困難を極め、本大臣は大鳥公使着任後は電報の外には特別に書信に接しないため、目下内乱のありさまがはたしてどういう情況であるか詳しい事は知たないが、とにかく内乱はなおあだ平定に至っていないと信じる。
もっとも朝鮮公使は昨日も本大臣に対し内乱はすでに平定していると申されたが、前述のように大鳥公使よりはまだなんらの確報に接していないところをみると、果して平定しているのかどうかははなはだ疑わしい。
要するに現在のように、日本軍隊は京城の兵営に滞在し、貴国の軍隊は牙山に駐留したままいまだ朝鮮内地に進入した様子がないので、乱民はたとえ一敗一勝があってもなお諸所に屯在しまたいつ暴発するか計り難い有様なので、もしなすこともないまま歳月を過ごしているときは、思いがけない変乱がどこから起こってくるかも分からず、幸い貴国と我が国との軍隊が力を合わせて速やかに内乱を鎮圧し、一日も早くこの国の禍乱を平定したならば、指懸（＊？）っている日・清両国の心配事を解くことになると思われる。
この件、貴国政府において御同意になるだろうか、閣下より貴政府へ伝達頂くことを希望する。
清国公使
閣下の御意見は至極御もっともです。
本使はまだ本国政府より詳細な報告を得ていないが、東学党は朝鮮の官兵に敗られ全州を退去しているかと聞いている。
頭初の勢いにくらべればほとんど鎮定しているように見うけられる。
それなのに貴我両国の軍隊が力を合わせてこの内乱を鎮圧すべきだとの御協議があるのは、貴国政府では我が国の兵力だけでは東学党を討伐することはできないとのご心配があるのだろうか。
我が国の軍隊が牙山に陣をとってまだ行動していないのは、ただ内乱の根拠地を探りその後に攻撃しようをの策だと聞き及んでいる。決して兵勢が不足であるからではないと信じる。
外務大臣
決して貴国の兵勢が不足だと疑っているのではない。貴国の軍隊にてこの草賊を討伐することは固より十分であるだろうが、あの国の現状から想像すればその内乱の平定が一日遅れれば一日の害があるのは前述の通りであるので、むしろ短期間にこれを平定することこそ最上の良策であるに違いないと思われる。
ことにその内乱の区域がはなはだ広いと聞いておりますので、一方より貴国の軍隊を進行させ他の一方よりは我か軍隊で攻撃する時は、成功は非常に容易となるでしょう。
清国公使
なるほど両国軍隊でもって内乱を討伐することは一国の軍隊をもってするよりもその功は迅速であるだろうが、すでにこれまで接している通知によればその鎮定も近いと言う時に至って両国の軍隊を同時に動かす事は実に無用の観がある。
また我が政府は初めから朝鮮の依�鬚鮗�けて出兵しているのに、更に貴国の軍隊を加えて草賊を平定しようとするのはいかにも鶏を割くために牛刀を用いるに等しい。
ことに我が政府はかつて貴国に知らせたように、朝鮮の依�鬚砲茲蟷澆爐鯑世妻爾鮟个靴修瞭睛陲鯤芯蠅靴茲Δ箸垢襪里任△襪�、貴国ははじめから公使館及び臣民を保護するという目的をもって出兵されたのであるから、その出兵の主意そのものが自ずから相異していると考える。
外務大臣
天津条約に基づき出兵している事を相互に知らせあうべき事は勿論であるが、この知らせは貴・我両国いずれも朝鮮国に出兵する事を通知するに止まっており、互いにその出兵の目的がどうかは固より尋ねる必要はない。
しかしながら今回のように内乱が長く続いている時は、意外の変事を生じて来るかも分からない掛念があるので、我が兵もまた速やかに変乱を鎮圧することを勉めないわけにはいかないと信じる。
清国公使
いずれお話の趣旨は李中堂に電報致しますが、貴大臣の唯今までの御話は特にこの一件、すなわち貴政府の御決議を我が政府に御通知になりたいとの意味であるのか、または我が政府に御協議なさるという意味であるのかは、もし単に御通知に止まる事であれば我が国駐在の貴国公使を経て我が政府に御通知になってはいかがか。
外務大臣
この一件は時機によって我が政府か自ら断行するものではあるが、突然このような行動を起こすよりも初めより貴国と協議・協力してお互いの軍隊をもって内乱平定の功を奏することができるならば、すこぶる妥当な方法だと信じて御打合せに及んだ次第ですので、ことさらに貴政府の許可を乞うためではない。
しかしながらこのように申しているうちにも、朝鮮国においてもし我が国民の利害に関する事が発生し、我が軍隊が既に東学党と交戦せざるをえない場合に立ち至っているかもしれない。
ことに我が行商たちで朝鮮内地に入っているものが少なくなく、もし乱民が彼等に害を加えるなどのことがあれば必すこれを救わなければならないのは当然と考えます。
ここで今一つ、御協議申したい事は、朝鮮のようにたびたび不時の内乱が起り、その度每に貴我両国ともに様々な弊害を受ける事は実に迷惑な事であるのは言うまでもない。
また今回のように貴我両国から出兵せざるをえない場合があれば、貴我両国ともその煩わしさに堪えない状況なので、仮に今回の騷乱が鎮定し両国の軍隊が撤去したとしても、後日に至り再び騷乱が起るかもしれない。
朝鮮国の今日の現状から考えるととにかく鎮定の後といっても我が政府としては安心できない事情があり、朝鮮政府の事については貴我両国政府の間でよく協議をし、特に今回の内乱を平定する事に努めることだけでなく、将来ながく朝鮮国の為め善後の策を講じて置く事が最も必要と考えます。
ここで御相談申したい事は、朝鮮国の内乱の平定後は、両国政府より例えば各三名ずつの常設委員を選んで同国に派遣し、親しく政府の内政を調査させ、第一に同国の財政を整理する方法を考え、第二に同国官吏の整理を行わせ、第三に彼国に相当するだけの兵備を設けさせて今回のような内乱があっても他国の兵力をかりずに彼れ自らで鎮撫出来るだけの軍兵を養成させる、などである。
もっとも双方の委員で調査を終わった後は、あるいは生産興業を盛んにする道もあるでしょうし、あるいは財政整理を為すべき見込みも立つでしょう。
貴国政府にも深く将来の安危をお考えになってこの提案に御同意いただくとこを望む。
清国公使
同国の善後策についてはかつて伊藤伯より承っている。
同伯はまず李中堂の意見を聞くべきか、または同伯より提案すべきか、いずれにせよ後日の事に致そうとの御話であったが、貴大臣のだされた常設委員の議は伊藤伯の約束されている提案なのでしょう。
いずれ我が政府においても朝鮮内乱平定の上善後の策を講ずるには貴国と協議せざるを得ないと考える。
しかしこれは全く同国内乱が鎮定し両国共に撤兵した後ゆっくりと講ずべきことと思う。いずれにせよ貴政府の御意見は李中堂に委細通報致します。
外務大臣
この提案はなるべくはやく貴政府に御通知いただくようにいたしたく、実は朝鮮の今回の内乱が一時平定しているとしても、何時いかなる形勢になるかも謀り難い状況なので、我が政府においては朝鮮政府かみずから平和を回復しているとの一片の証言だけをもって安心して撤兵することは難しい。
先ず貴国政府と協議の上、委員を派遣するか、あるいは別に貴政府より何か提案される案に賛同するか、いずれにしても後日の売れはないと十分安心を得る場合にいたらなければ、容易に護衛の軍隊を撤退することにはならないかもしれず、同国の現状がこのような状態であるのでたとえ今日両国の兵を撤退させても明日また兵を出さざるを得ないことになるかも知れず、これが今日の緊急事務として提案し御協議に及ぶ次第である。
清国公使
御協議の提案はすこぶる重大な件であり、詳しい說明が必要なことであるので、明後日の便船を利用して書信で李中堂に報告しよう。
ただしこの件は両国政府においてそれぞれその意見を吐露して話し合いの上で決定すべき事柄であろうと思う。
ところがこの一件の協議がまとまらない間は貴国政府では撤兵することに賛成しないと解釈している。
提案されている委員説の協議には、少なくとも二三ケ月を必要とすると考えるが、それ以前にもし朝鮮の内乱が鎮定した場合、両国は互いに一先ず軍隊を引き揚げその後ゆっくりとこの件について協議されても決して遅いとは思わない。
特に両国が協同して朝鮮政府に向って善後の策を申入れるならば、敢えて軍の威力を借りなくても朝鮮政府として納得しないはずはない。
それなのに貴政府ではこの善後策について我が政府より何らかの通知があるまでは撤兵されない御積りなのか。
外務大臣
今日御協議に及ぶ提案、すなわち朝鮮の善後策は、固より撤兵の事と混合して論ずるべき事でもない。
しかしながら我が政府は十分安心して撤兵することができる時期に達しないとまだ急に撤兵しないつもりであるが、この善後策が貴国政府の贊同を得ることになれば、これまた我が政府に安心を与える一助、いや大なる一助となるだろう。
とにかくこの件はすこぶる緊急を要することであるので、なるべくは書信よりも電報で貴政府へ御通知頂きたい。
しかし、これは全く閣下の御意見に一任する外はありません。
清国公使
先ほどからのお話の中に、自ら撤兵の事を提起せざるをえない場合があったので、はなしがついにこの件にまで至った次第である。
委員說はかつて伊藤伯の言われていた善後策の事であると思うので、さっそく李中堂に報告しましょう。また両国軍隊が協力して反乱を鎮圧する件は至急を要することなので電報で伝えることにしたい。
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