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2016年10月15日10:41

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東京バレエ団 ザ・カブキ

2016/10/14金 19:00- 新国立劇場 中劇場

振付:モーリス・ベジャール
音楽:黛 敏郎
装置・衣裳:ヌーノ・コルテ=レアル

由良之助:柄本弾
直義:森川茉央
塩冶判官:岸本秀雄
顔世御前:上野水香
力弥:井福俊太郎
高師直:木村和夫
伴内:岡崎隼也
勘平:宮川新大
おかる:川島麻実子
現代の勘平:和田康佑
現代のおかる:岸本夏未
石堂:宮崎大樹
薬師寺:永田雄大
定九郎:杉山優一
遊女:吉川留衣
与市兵衛:山田眞央
おかや:伝田陽美
お才:矢島まい
ヴァリエーション1:杉山優一
ヴァリエーション2:入戸野伊織

*音楽は録音

久々に全幕上演になったベジャールのザ・カブキ、観てまいりました。実は全幕を観るのはこれが初めて。それ以外でも、NHKのバレエの饗宴で討ち入りシーンを観たきりです。

いやーすごい作品ですね。あらためてベジャールの巨匠っぷりに感嘆。

歌舞伎の仮名手本忠臣蔵を忠実になぞっているというこの作品、1幕はストーリーを追う感じですが2幕は、特に雪の中の討ち入りから切腹のシーンまでは怒涛の男性群舞で圧巻。振付は歌舞伎、日本舞踊、能といった日本の伝統的な要素を取り入れつつ、ベジャール特有のプリミティブな動きが融合していて独特な雰囲気を醸し出しています。そして美術や衣装は、和の世界とフランスっぽい現代的なセンスが融合して静謐な美しさ。初演が1986年ということもあり、現代日本のファッションや、当時のオリエンタリズムの表現などに若干古さを感じるところもありますが、それが気にならない完成度の高さ。そして何より黛さんの音楽が素晴らしい。これ、このバレエのために創られたオリジナルなのですよね・・・さすが佐々木さん、日本のディアギレフ!

と、とにかく作品のパワーに圧倒された公演でしたが、ダンサーについて。

個人的にとってもいいなーと思ったのはおかるを演じた川島さん。私、彼女が主役級を演じた舞台って観たことがないのですが、体のラインがとてもきれいで動きもしなやか、そしてとてもツヤっぽいダンサーさんですね。単にきれいなだけじゃなくて舞台上での迫力みたいなものもあって。すっかり魅了されてしまいました。彼女に限らず、東バの女性陣は本当に上手いですね。舞台上での見せ方も男性陣と比べるとかなりしっかりしている。彼女たちのよさをいかすような作品をもっと上演してあげてほしいなあ。

あと、道化役みたいな伴内を演じた岡崎さんもコンテの動きがとてもよいと思いました。

主役由良之助を演じた柄本君、踊りは本当にきれいで上手いのに、何となく自身なさげに見えてしまうのが勿体ない。なんでだろうとずーっと考えていたのですが、彼、ちょっと視線が弱いのかなと思いいたりました。あの役は特に、彼の感情や意志を観客が一緒に感じることで舞台に引き込んでいく重要な役割を持っていると思うのですが、それは体の動きだけで伝わるものではないんじゃないかな。遠い席からだと表情は見えないけど、視線の方向や強さは伝わるもの。そこがちょっと変わるだけで振付の輪郭もよりはっきりしそうな感じがします。そういう意味では、初演の高岸さんは凄かったんだろうな。

さて。実はザ・カブキは、ハンブルクから移籍してきたブラウリオ・アルヴァレスの東バでの初舞台でした。一人外国人なのにデビューが四十七士でルックスで浮いちゃわないかと心配だったのですが、彼は髪も落ち着いたブラウンだし、まったく悪目立ちすることなくちゃんとコールドとしてバレエ団に馴染んでいてほっとしました。特に目立つ役でもポジションでもなかったけど、公演回数の多いハンブルクで鍛えた舞台度胸と見せ所の勘は抜群で、ポーズだったり走るところだったり、あと演技はいい意味で他のダンサーと違っていたと思います。彼自身も東バから得るところは多いだろうし(ハンブルクにいたらベジャールなんて踊れない)、バレエ団と彼の間で良い影響を与え合える関係になってくれることを、心から祈っています。

あ、ちょっと宣伝。ブラウリオ、ブログやってます。日本語・英語・スペイン語の3カ国語で、内容もエッセイに近いものがあって面白いので、ぜひのぞいてあげてくださいね!
http://ameblo.jp/tokyodancelife/

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