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2016年10月08日18:14

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モリッシーの歩む道

先日モリッシーの来日公演がありました。横浜で急遽中止になったり相変わらずなドタキャン王
振りは健在と言った所でしょうか。
僕は観に行きたかったのですが、まあ都合が合わず泣く泣く諦めたので未練タラタラで
ネットやこのミクシーなどで様々な人の感想や印象を読んでみました。

ほとんどがモリッシーの圧倒的な歌唱力に酔いしれたと好意的な批評が多かったように
思いますので、自分もやはり行きたかったなあと羨ましさが加速しています。

しかし幾つか気になった文章も目にしました。
ロック的な視点のみでモリッシーを捉えている方が意外と多いなあと言う印象です。

ロックは今や世界の音楽の最先端として世界をリードし続ける先鋭的な音楽とは言い難く
なっています。
しかしロックはカウンターカルチャーとして機能し、パンクを筆頭に前時代の価値観を否定し
自分たちの新たな世界観を創り出せるアーティストがクールであるというのが大前提として
今でも割と公然なこととして語られています。

今やEDMやその他の先鋭的とされる音楽と比べるとロック周辺の音楽は時代の流れからは
正直取り残されているのですが、それでも先端であること前進、進化することが良しとされる
ロック文化の文脈の流れで言うと音の創意工夫が、それほどなされていないギターの音を
メインに据えた60年代の正統派ヒットソング調に近い曲を執拗に創り続けるモリッシーの音楽を
代わり映えしないワンパターンの音楽であるとばっさり切っている人が思った以上に多いと
感じました。

まあモリッシーも細かく言うとロカビリー調やグラムロック調、グランジに近いハードな音の
ロック調と多少の変化はありますが、大きな括りで言う所のギターロック界隈から逸脱する
ような音楽は確かに創ってはいません。



スミスは実質5年に満たない短い時間の中で驚異的なスピードで進化を繰り返し80年代の
ロックバンドの最重要バンドの一つとされていますが、モリッシーはシンセサイザーを使う
ことは良しとせず、あれもダメだこれもダメだとサウンドを担う相棒ジョニー・マーに注文を
付け続けました。

マーはそういうモリッシーの強行的な音の志向性の限定振りに嫌気がさしたことがグループ
脱退の大きな原因の一つではあったようです。

その後のキャリアでもマーはモリッシーが名指しで全否定していたようなアーティストと多数
仕事をしていますから、自由に音楽を創り自分の音楽の幅を広げてくれるようなアーティストと
積極的に仕事をしています。ロック的な価値観で語られるとマーの方が商業的な大成功を
納めているモリッシーよりも充実したキャリアを歩んでいるように言われる方もいます。

しかしスミスの音楽がユニークだったのは音楽的に自由にやりたい音楽の舵を取っている人と
楽曲の完成度や自分好みの狭い音楽的趣向に異常に拘っていた二人に依って創られて
いた為、その縛り故に逆説的に出来る範囲内での挑戦が良い方に転んだからでした。

それでもやれることの限界まで挑んだ為に才気溢れるマーに取っては飽きが来たのは
当然のことだと思います。

ですから二人の別離は当然のことが至極当然に起きただけの結果なので、モリッシーは
ソロになり自分の好きなギターロック周辺の世界観だけを推し進めることが出来るように
なりました。

なのでモリッシーに大きな音楽的な変化や前進が見られないというのは批判してる人には
悪いですが言ってることは全然間違ってはいませんが正直的外れです。彼はそんなことは
最初からまったく望んでいません。

モリッシーは自分のキャリアに対して何を望んでいるのか、それは音楽的な変化や変容
ではなく楽曲の完成度やメッセージ性や詩の高い文学性、シンガーとしての技術や表現力の
向上を主眼としてキャリアを重ねているように思います。

彼は一般的なロック畑のアーティストと比べてもライブ盤が非常に数が多いです。
アルバムも再発のリマスターにはライブのCDが付けられることが多々あります。
モリッシーは気分屋で知られライブも日程寸前でのドタキャンも今までも何度をやっていますが
ファンに自分の声を届けることに非常に力を注いでいるのがわかります。

彼はシンガーたるものこれが最後なんだと思って全力でやらないとダメなんだという意味合いの
発言も過去ありました。


それにアルバムの再発もした際に楽曲の曲順を入れ替えたりオリジナルとは異なった
バージョンを収録したりしています。アルバムのジャケットのデザインまで変更したりしますから
すぐには聴き慣れた同じアルバムとは思えないように感じることもあります。

技術の進歩で音質が飛躍的に向上したとはいえ、ファンにまったく同じ物を二度も買わせる
ことに申し訳ない気持ちから何か変化を付けてというのも思惑としてあるでしょうがアルバムと
しての完成度を高めることや納得出来ていない部分を刷新してファンに届けたいという気持ちの
方が大きいように彼のこれまでの活動からすると感じてきます。


漫画家の浦沢直樹氏が自分が描いた漫画がどうしても納得出来ていない部分を単行本が
発売する際に訂正することがあると言っていました。
締め切りに追われる職業ですし、より完成度の高いものを読者に提供したいという
アーティストとしての強い拘りからでしょう。そんなことをしてもその部分でお金になる訳でも
ないでしょうから、高い志を持つ人達の共通項としてモリッシーのそれと同じ行為だと
思われます。
浦沢氏は勝手に変えるなと読者に後から怒られると言って冗談めかしてましたけどね。


ロックアーティストのライブ盤を聴くと音楽性に大きな変化やメンバーチェンジがあったりした
場合当然今現在の音とは違う訳ですから、人それぞれ好みもあるので過去のあの時代が
良かったあの頃は絶頂期である、ボーカリストの表現力や声量がキャリアの最大値であったと
様々な観点から当然ですが好き嫌いや評価が分かれます。

しかしモリッシーに至っては先ほども書きましたが、多少の音楽的な変化はあれどライブに
おいてメインに歌われる楽曲は当然シングル曲が中心となりますし音楽的に劇的な変化は
ないのでバンドメンバーも今はほぼ固定していますからキャリアが続けばバンドのテクニックも
アンサンブルも当然向上しますし、彼の音楽観を高めるのはより好都合のように思います。


シンガーもプロスポーツのアスリートと同様肉体的に衰えますから、普通は歳を取ると
個人差はあるものの一定の歳を取ると声量が落ちたり声域が狭くなったりします。
しかしここがその他のシンガーと絶対的に違うのが、モリッシーは年齢的には普通に考えたら
下り坂になってもおかしくない年齢にも関わらず、技術的にも表現力も声量も数日前にも
つぶやきで同様のことを要約して書きましたが格段に向上が見られます。

ですからあのアーティストはあの時代が良かった。あのメンバーでやっている時、あのアルバム
の時代が最高だったと言うような評価や評論とは彼の場合にはかなり距離を持って語らない
と正確ではないと思われます。


モリッシーが年々向上していることを実感出来るのが2005年に出た2004年のアールズコート
でのライブ盤と2008年に出たベスト盤の限定盤にハリウッドボウルで行った2007年のライブ
からの曲が8曲だけピックアップされて出されているのを聴き比べるとたったの数年で
これだけ差があると瞬時には同じ人が歌っているのが信じ難いように感じます。

これが僕だけが感じていることなのかと思ったらほぼ同様の感想を抱いた方がいらしたようで
ネットでアールズコートと比べてハリウッドボウルを絶賛されている文章を書かれている方
が実際にいました。

やはり8曲だけでは物足りないので、この日行われたライブの全容が聴いてみたいと
思ったのはファンとして当然のことであります。

そこで色々と調べてみたんですが、ライブ・アット・ザ・ハリウッドボウルというタイトルで
DVDが発売する計画があり、物は創ったもののモリッシーが気に入らなかった為か真意が
わかりませんが発売中止になったようです。

しかし今の時代こういうソースもどこかで漏れてしまうので、Youtubeにアップされています。
マイミクさんは僕よりスミスやモリッシーに詳しい方が大勢いるので、そんなの大昔から
知ってたよ!と仰る方も多いかもしれません?

スミスの曲が6曲演奏されてるのかな?今でもライブで取り上げられる曲が多いですが
ここには今までオフィシャルで出されたライブ盤には多分お目に掛かっていない
Girlfriend In A Comaが収録されています。この曲が演奏されたライブ盤が発売されなかった
のはつくづく残念でしかたありません。






Youtubeの映像や音はダウンロード出来るので、DLして繰り返し聴いています。
1時間40分ぐらいあり長いですから一気には聴けないので、少しづつですね。
ファンやブート業者の隠し撮りとは違うので、音も良くモリッシーは怒るかもしれませんが
観ておかないとファンとしては損かもしれません?

The National Front Discoやここでは収録されていませんが、後にSpeedwayというシングル
カットしてないような曲をアルバムに収録されたバージョンより手を加えて更に質を向上させて
ライブの定番曲にしてしまう手法もモリッシーのアーティストとしての拘りを感じています。


この人は食肉は殺人だ等常に物議を醸し出す発言が多く正義感が強くある意味中二病に
侵された後ろ向きで面倒な人と捉えられている傾向もありますが、これだけ強く芸術家として
自分が更なる向上と飛躍を出来ると微塵も疑ってない前向きな人はそれほど多くはいないと
僕は常々思っています。

ハリウッドボウルのライブに感動しながらも、最近のライブをYoutubeで見つけて観てしまうと
またもやすべてにおいてパワーアップしたモリッシーがそこにはいます。
良い意味であ〜あまたか限がないやと思います!


引退の引き際を自己認識出来ずダラダラ醜態を晒したくないと彼は以前強く公言して
いましたが、常識を覆し年齢を重ねても衰えを見せない彼に絶頂期、最高傑作は?
という言葉はいつかは衰えを感じる日が来るかもしれませんが、今現在はさほど意味が
ないように感じて来ています。

アーティストはどんな人も次作が最高傑作だと答えますが、モリッシーほど次のライブが次の
アルバムがピークに違いないと疑わずに思えるアーティストは僕はすぐには思いつきません。


今後日本に来てくれることがあるかわかりませんが、今よりもっと凄いモリッシーを観せて
ほしいとただそれだけを切に願っています。
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コメント

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