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2016年09月27日19:26

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日本人民必読の「石田勇治・東京大学教授の話(前編)」(3/3)

 この三派は、戦争中、国内が飢餓などであまりにも悲惨になったので、戦争の早期終結のため平和決議を出しています。第一次世界大戦で敗戦したドイツを、アメリカは民主化したかった。ヒトラーなどは、ヴァイマル憲法を『連合国の押しつけ憲法だ』とも主張しています」
社会民主党と共産党が手を組んでいたら、ナチ党は押さえられた!? デジャヴュのようなヴァイマル共和国の歴史

岩上「ヴァイマル憲法のもとで8時間労働が実現した、意外です。ロシア帝政の堕落に対してロシア革命が起こり、8時間労働はレーニンが世界で最初に書き込みました。それを敗者であるドイツが真似たのですね。しかし、現在、日本ではブラック企業が跋扈(ばっこ)し、こういった権利も、平和も空洞化してきています。こうして見ると身近な話ですね」

石田「そうです。社会民主党は労働者の政党です。現在、われわれの持っている多くの権利は、長い歴史を経て積み上げられてきた。一方、こういうものを快く思わない人たちの、政治的な動きが表面化してきています。歴史的に見ても、利益団体は裏で大変な圧力を加えているのです。

 ヴァイマル共和国は第一次大戦後、社会民主党(Sozialdemokratische Partei Deutschlands=SPD)が権力を握ると、1919年、フリードリヒ・エーベルトが大統領になり、秩序を維持するために共産党を弾圧するようになります。共産党のローザ・ルクセンブルクやカール・リープクネヒトらは殺されてしまいます(1919年1月革命)。

 ドイツの社会民主党は世界でもっとも古く、労働運動の中心になった伝統のある政党です。共産党はその社会民主党から戦争反対派が辞めて作った政党で、ロシア革命ののち、ソ連共産党(コミンテルン)に組み込まれていった。両党ともマルクス思想の政党ですが、社会民主党は政党維持のため富裕層とも妥協しました」

岩上「今日でいうと、社会党から民主党と社民党に、そして民主党がさらに民進党になったのに似ていますね。今日の日本共産党は、ヴァイマル共和国の共産党とは体質的に違うのですか?」

石田「働くものの代表という意識は共通します。今の日本共産党は、ヴァイマル共和国のドイツ共産党よりずっと穏健で民主的です。

 第一次大戦の敗戦直後から、極左の共産党、極右のナチ党、帝政派(国家人民党)のいずれも、ヴェルサイユ講和条約を受け入れるヴァイマル連合(社会民主党・中央党・ドイツ民主党の連立政府)を潰しにかかります。

 1920年になると帝政派がクーデターを起こし、ナチ党も加わった。エリートの多い帝政派にとって、大衆へのアピール力があるナチ党は便利だったので、武器を与えて役割分担をし始めました。

 徐々に支持を失っていくヴァイマル連合でしたが、最後まで3分の1議席は維持。憲法改正まではなかなかできなかったんです。ナチ党が第一党になるまで、社会民主党は第一党です。彼らが共産党と手を組んでいたらナチ党は押さえられたと、当時から言われていました」

フォト


岩上「まさに、今(の日本の政治状況)とそっくりだ。今回の参議院選挙では1人区で野党共闘ができたが、安倍総理はそればかりを批判しています」
「どうか天性の怠慢と臆病な心のせいで我らが野蛮の中に沈み込むことのないようにしよう」──アインシュタインらが求めていた野党共闘!

石田「ナチ党が第一党になる1932年7月の選挙の前には、かのアルバート・アインシュタインが、社会民主党と共産党の野党共闘を求めていました。彫刻家のケーテ・コルヴィッツ、評論家のハイリンヒ・マン、作家のエーリヒ・ケストナーなど、著名な学者、芸術家、文学者ら33名が連名の緊急アピールを宣言した」

岩上「『ひとつになるための目前のチャンスは7月31日だ。そのチャンスを活かし、統一的な労働戦線に向けて一歩を踏み出すことが大切だ。統一的な労働戦線は議会だけでなく、その他すべてを守るために不可欠である。

 最善策は2党の統一候補者リストだが、せめてリスト協力が実現するように望む。どうか天性の怠慢と臆病な心のせいで、我らが野蛮の中に沈み込むことのないようにしよう』と、当時の切迫感は驚くほど今と似ています! 当時の人たちは、今と同じように娯楽やゴシップで気をそらされていたのですか?」

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石田「当時も知識人は気づいていたが、大衆は現在と同じかもしれません。ヴァイマル時代の共産党は完全にソ連のコントロール下で、社会民主党をファシストだと攻撃していた。だから、アインシュタインらのアピールは絶望的でした」

岩上「今、日本の野党共闘を実現させたのは国民の声の後押しです。共闘に後ろ向きだった民進党に、市民連合、SEALDs、ママの会、(安全保障関連法に反対する)学者の会などが働きかけました。

 特定秘密保護法、安保法制、明文改憲。安倍政権は、ホップ、ステップ、ジャンプと、必ず争点を隠した選挙を挟んで可決させてきました。ところが最後の改憲のかかったこの参議院選挙が一番盛り上がっていない。なぜ、もう一歩が届かないのでしょうか。緊急事態条項については、ある程度歴史や法律的知識がないと理解しにくい。でも、ドイツの歴史を知っていれば、危機感が生じるはずです」

石田「去年の夏から、私自身も学者の会に加わりましたが、あれから時間が経ち、人々も日常の瑣事(さじ)の中ですでに忘れ去られてしまって、現実的ではなくなっているのでしょう。

 ドイツの歴史は、人類の大きな不幸の失敗例です。そこから学ぶのが人類の義務なのです。同じことを繰り返してはいけません」

岩上「それ(手口)を学べ、と言う改憲推進派の方が先に進んでいて、ドイツの悲劇を学ぶ人があまりにも少ない」

石田「アインシュタインは米国に亡命し、米国の戦う相手がナチ・ドイツだから、戦争に賛同しました。原爆の開発に間接的に加担したアインシュタインは、戦後、それをとても悔やみました。

 ヒトラー政権が生まれていなかったら、あんなに短期間に、原爆の開発は進まなかったでしょう。しかし、その原爆は日本に落とされたのです」

岩上「天皇制ファシズムにはとても古い歴史があるかのように思われているかもしれないが、明治憲法下の日本はプロイセンをモデルにしています。つまり帝政ドイツのような日本と、(ヴァイマル憲法下でナチズムが独裁を確立した)新しいドイツとが手を結びあって、第二次大戦で世界に挑んだんですね」

石田「ドイツ帝政では戒厳令があって、それを大日本帝国憲法は取り入れました。戦前の日本を復刻したい人たちは、同じ轍を踏みたいらしい」

岩上「日本会議など中国を敵視する人たちは、第二次大戦前のアメリカと日本のように、今の日中に経済力の差があることを忘れて『将来、中国には勝てないが、今なら局地的戦闘能力は日本が上。一撃を加えれば、相手はビックリして降参する』と信じています。

 南西諸島を舞台に、巌流島のような決闘をやれば、中国にキューと言わせることができると。そんな論理が大衆右翼主義者に蔓延しています。その闘いにはアメリカは助っ人に来てくれないと、さすがに気づき始めていますが」

石田「そういう考え方があることはわかっていたが、安倍政権を支えている人たちが思ったより多くて、本当に恐ろしい。もっと、歴史を学ぶべきです。国際紛争を戦争で解決するなどと、堂々と言う政治家は失格です。同じ過ちを2回繰り返すのですかね」

岩上「そう考えると、帝政の考えを持った人が残存していたヴァイマル共和国と、岸信介の考えを孫の安倍晋三氏が引き継いでいる現代の安倍政権化の日本は、とても似通っています」

(後編へ続く)

(了)

【関連情報】
●【石田勇治東大教授「なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?」】

1:04〜
https://www.youtube.com/watch?v=khxNWh5nLWY&feature=youtu.be
20160617 UPLAN 石田勇治「なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?」
三輪祐児
2016/06/17 に公開


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