mixiユーザー(id:2438654)

2016年09月26日22:53

348 view

STAATSBALLETT BERLIN / MULTIPLICITY. FORMS OF SILENCE AND EMPTINESS

2016/9/23 Fri. 20:00- Komische Oper Berlin

Choreography and Production: Nacho Duato
Sets: Jaffar Chalabi (based on an idea by Nacho Duato)
Costumes: Nacho Duato (in collaboration with Ismael Aznar)
Music (Composition) recorded: Johann Sebastian Bach (Collage)
Light Design: Brad Fields
Dancing: Soloists and Corps de Ballet of the Staatsballett Berlin
With: Michael Banzhaf, Giuliana Bottino, Weronika Frodyma

ついに念願のナチョ・ドゥアト全幕を観てきました!邦訳は2007年のスペイン国立ダンスカンパニー来日公演時のパンフレットなどによると「バッハへのオマージュ 〜マルチプリシティ・静けさと虚ろさの形たち〜」ということらしい。

ナチョの代表作の一つとされているらしく1999年にワイマールで初演。バッハの様々な曲のコラージュに乗せた二部構成の作品で、明確なストーリーはないけどテーマの一つに「死」は入っているのではと思いました。

曲の構成は下記のとおり。プログラムはドイツ語での紹介だったのでこちらのブログ(http://plaza.rakuten.co.jp/cutentag/diary/200702040000/) の邦訳をお借りいたしました。あ、音楽は残念ながら録音でした。会場で買ったパンフには演奏者まで全部書いてありましたがそれは省略します。

<第一部 マルティプリシティ>
・ゴルドベルク変奏曲 BWV988
・世俗カンタータ「墓を裂け、破れ、砕け」
・無伴奏チェロ組曲第一番 ト長調
・音楽の捧げもの
・管弦楽組曲第2番 ロ短調
・音楽の捧げもの
・ブランデンブルク協奏曲
・ヴァイオリン・ソナタ ホ短調
・4台のチェンバロのための協奏曲 イ短調
・ヴァイオリン協奏曲 ト短調
・2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調
・メヌエット ト短調
・世俗カンタータ「消え去れ、悲しみの影よ」
・ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第5番

<第二部 静けさと虚ろさのかたち>
・フーガの技法
・トッカータとフーガ ニ短調
・オルガンのためのトリオ・ソナタ第6番 ト長調
・死と永遠を想うコラール
・シンフォニア
・教会カンタータ「我がうちに憂いは満ちぬ」
・フーガの技法
・フーガの技法


第一部、バッハが登場。彼の指揮に合わせてダンサーが踊る。ダンサーは音楽(または音譜?)そのものを表現していると思われます。ナチョの振付は音楽を実によく表現していて、そしてとても疾走感があるところが大好き!この作品の振付はネオクラシックで、クラシックのテクニックがないときれいには踊れないタイプだと感じました。あるときはコミカルに、あるときは艶やかに、バッハの曲に合わせて入れ替わり立ち代わり小作品が続いていきます。衣装は黒をベースにしながら刺し色をきかせていて、ビスチェだったり短いチュチュだったり、ナチョ得意の前が割れた長い袴みたいなスカートだったりと、とても美しい!あと、弦楽器の弓を使った振付も面白かった。チェロを弾くように人間の体に弓をあてて踊るのですが、音楽との調和が見事でした。途中で白い仮面をつけた女性が出てきて、バッハと親密なパドドゥを踊ります。バッハが彼女に手をひかれて、舞台奥にあるバヤデールの影の王国みたいなスロープを上がっていって第一部が終わり。

第二部は第一部よりも少し暗い印象。仮面をかぶった女性は、おそらくは「死」。最後にバッハ役のダンサーおそらく死を迎えたと思われるシーンがあり、そのあと音譜達は舞台奥のスロープに並んでいく。それぞれの持ち場についたら、一斉に止まったりわっと動いたりというシーンがあって静かに幕が下りる。この最後のシーンですが、スロープとは別に水平のバーが地面から天井までの間に等間隔に5本あって、そのバーに各ダンサーが留まっているような見え方だったので、五線譜に置いてある音譜達なのじゃないかと思いました。

様々な曲を創りだしたバッハが亡くなり、彼の生前は生き生きと自由に動いていた音譜達は五線譜の中の形に閉じ込められ、バッハがいなくても残っていく。私の解釈はそんな感じでしたが、他にもいろいろな解釈があるのではないかと思います。

振付も衣装も素敵でしたが、舞台装置も面白かったな。舞台奥にはスロープがあると書きましたが、そのスロープは五線譜の間の4つの隙間で開け閉めできる黒いカーテン(布じゃないけどこういう書き方しかできない!)で、客席から見えたり見えなくなったりします。このカーテンの間からダンサーが出入りするシーンもあった。あと、横から見るとZ型をしたシンプルな椅子も効果的に使われていました。ステージングもナチョがアーティストと協力して行っていると書いてあったし、この人は単に振付だけではなく演出まで考えられる稀有な振付家の一人なんだなぁとつくづく思いました。

さて、ダンサーさんについて。今回、名前を知ってるダンサーは一人も出てなかったのですが、クラシックのテクニックがきちんとある人がキャスティングされているなと思いました。ここは次期芸監の件でいろいろモメているそうですが、この公演で踊ったダンサー達だったらクラシックの比重が低くなると自分達の地位も脅かされると思う人も多いのかもなと感じます。ただ、私達の横にいた、おそらくベルリン在住のご夫婦が、私達に対して「とても古典的な作品だよね」とおっしゃっていたので、ベルリンという進歩的な街ではひょっとしてこのスタイルは古臭いと思われるのかなぁ、とも。最近、バレエ団の芸監選びって本当に難しいのだなと感じさせられることが多いです。私の愛するハンブルク・バレエもジョンが芸監から降りるときはどうなることやら、心配・・・。

ところで、会場はKomishce Oper Berlinというところ。黒い鏡で囲まれた赤絨毯+丸いシャンデリアのホワイエがとても美しいです。規模もそれほど大きくなく、どの席でも見やすそうでした。
2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する