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2016年09月23日13:51

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【おかえりなさいませ】炊飯器のお話【ご主人様】

 糖質制限中の私は、玄米にシフトした。
玄米だって糖質だけど。

自分はとっても健康志向ですと、意識の高さをアピールするために。


その意思の堅さと米の堅さで飯を炊いているのだよ。
洗米を忘れたりしてるけどな。

ある日、炊飯器がうっかり保温されっぱなしになっているのを見た。

うおおおー これは、一日放置保温された米のヘブン!
日本酒の一歩手前になってしまっているぅぅうう!


幸いそのときの炊飯器の中身は空っぽで 何も無い空間を保温していたことになる。


おかしいなあ。
なんでこんなことが。
空っぽを感知して保温を切るとか、日本の技術力ならもっと出来るはずでしょ。


そして 次の日、私は気がついた。


この炊飯器は、不退転の決意を持っている。

一度決めたことはやり通すのだ。



「取り消し」と書かれたボタンだけが 反応しない。



保温すると決めたら 保温し続けるのだ。


くそう、なまじっか静電パネルとか かっこつけやがって。
指先の静電気で反応するパネルとか、いいから そういうの。
触っても触ってる感覚がないんだよ。この不感症が!


20年前のテープデッキみたいに 停止ボタンをゴツンと押すような。
録音したかったら 再生と録音を同時に押すみたいな、ああいう操作感が欲しいよ。


古来より止まらなくなった家電製品への対処は決まっている。


電源を絶つ!そして入れる。
悪い子にはご飯を抜くのだ。


するとどうだろう。

なんてことだ。それでも保温をし続けるのか。

ファミコンですらリセットすれば何もかも消えるのに。

日本の技術力おそるべし、炊飯器はファミコンを超えるのか。

彼女はタマゴを守る親鳥のように、保温することを決してやめない。



その強い意志と愛あふれる姿に私は 感涙し落涙した。


だが、困るのだ。

保温されっぱなしでは次の飯が炊けないのだ。
その前に その愛には電気代がかかるのだ。


涙をぬぐいながら私はコンセントを抜いた。
ダメなのだ。
その愛は忘れてしまわねばならないのだ。


翌日目が覚めた頃合いに、炊飯器を揺り起こすと、「おかえりなさいませ ご主人様」」と
不特定多数のご主人様の相手をしてきた商売女のような風情で起動した。


昨日の愛など覚えていないといった風情で、炊飯器は保温を忘れていた。


よし これで行ける。
この子は翌朝まで記憶が保持できないのだ。オキテガミ某みたいな記憶力なのだ。

私はご飯が炊ける度に コンセントを抜くという一手間をかけることで、ご飯を美味しくしてきた。



玄米を炊くには 十分な浸漬時間をとるために予約炊飯がよろしい。

と見聞きしてきた私は、予約炊飯という新しいプレイを仕込むことにした。


触れても響かない 感度の悪い子には新しいプレイだ。

ひゃっはー。

私はサディスティックに口角をあげながら 玄米を研いだ。

悪い子お仕置き。

予約  ん?やっぱりボタン効きがわるいな うん。
ぎゃあ!     15時間後に予約してしまった!

15時間も浸漬したら 生ゴミになってしまうか、日本酒になってしまう。

なああ 取り消し取り消しっ




ってあああああああ。
効かない。
ならばコンセントを抜く。また記憶喪失になってもらうぞ。 


なんだその目は。
「いいえ ご主人様 私はあなたのいいつけを守ります。」

予約炊飯は記憶が飛ばない だと?!
電源を断たれても保持し続けるのか。

たいした度胸だ。
だが、所詮飯を炊くしか脳のないオマエがどこまで愛を貫けるか 見てやろう。

電源を断って二時間。
人間にとって2時間でも、炊飯器は今頃きっと骨と皮だけになっている。

バケツで顔に水をぶっかける気持ちで、コンセントを入れてやる。

なんだ まだそんな目が出来るのか

これは・・・・・・。
バッテリーバックアップ?!

まさか長時間停電に耐えうるのか。

からっぽの釜を保温し続ける間抜けのくせに!なんだこの日本の技術力は。

この娘が記憶を失うのが先か、中身が日本酒になるのが先か。
これでは大抵の場合は生ゴミになる。


私の負けだ。
決して取り消さない 取り消させない というオマエの意思の強さに私は負けた。

本来なら命令に背いた家電など、放逐してしあたらしい娘をもらってしまうところだが。

オマエの愛に報いて もう一度チャンスをやろう。

現在修理見積もり連絡待ち。

圧力釜で炊飯してみたら 思いの外美味しく炊けちゃって もしかして炊飯器いらねえ?って思い始めてます。
浮気相手が本妻になるみたいな。

















































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