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2016年09月19日10:46

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ニュー・アドベンチャーズ 眠れる森の美女

2016/9/17土 12:30- シアターオーブ

演出・振付: マシュー・ボーン
音楽: ピョートル・I・チャイコフスキー

*音楽は録音音源

AURORA: Mari Kamata
LEO: Chris Trenfield
COUNT LILAC: Christopher Marney
CARABOSSE/CARADOC: Adam Maskell

マシューボーンの眠りを観てまいりました。この作品、テレビ放映と映画館上映をそれぞれ一度ずつ既に観ておりまして、なかなか上手い演出だな、と思ってました。ライブで観てもその印象は変わらず。初演キャストが残っているうちに観られてよかったです!

古典バレエの「眠れる森の美女」でご都合主義すぎて納得いきにくい部分にきちんと説明つけているのがマシューボーン流。ロイヤルバレエの古典の演出も出来事や人物の因果関係を明確にする傾向があるように思うので、このあたりは演劇の国イギリスのDNAなのかしら。

一番なるほど!と思うのが、オーロラを目覚めさせる男性の設定。古典バレエだと100年後に突然やってきて姫にキスして目覚めさせて結婚する、っていう何ともタナボタ的な存在でありますが、マシュー・ボーンのだと違う。姫が眠る前からの恋人(レオ)で、姫の目覚めの時期を待つために吸血鬼になって永遠の命を得るのです。ご都合主義な存在ではなく、一途な恋心を抱く青年に。そしてこの物語の主役は、姫というよりは彼なのですね。

リラの精はリラ伯爵という男性の役になり、姫の守護神的な役割は古典と変わらないながら、実は吸血鬼の設定。ルックスも牙があったりしてちょっと怖い感じがあるけど、その妖しい感じが力を感じせてこれまた納得度高いのです。

あと、初めてテレビで観たときは姫がレオのキスで目覚めた後の展開が衝撃的でした。カラボスの子供カラドックが姫を奪い、悪魔的な儀式の生贄にしようとする。結局リラ伯爵とレオの活躍でカラドックは倒されて姫は無事レオと結ばれる(そして吸血鬼になる)のですが、カラドックの描き方が個人的には好きだなあ。

オーロラとカラドックは、オーロラの成人パーティのときに出会う(カラドックが彼女を眠らせるために会いにきてる)のですが、そのシーンがロミジュリの出会いのシーンにそっくり。この二人は実は惹かれあっている設定なの?!とびっくりしました。そしてカラドックは眠り続けるオーロラのそばにずっとついていて、何とか彼女を目覚めさせようと歩かせたりキスをしたり、それがすべて無駄だと知って何とも切ない顔をするのです。儀式の生贄にするために彼女の命を奪おうとするのですが、そうではなく単に妻にするだけだったら意外にこの二人は幸せに暮らせたのではないかしらねえ。

オーロラの造形も面白い。赤ちゃんの頃から(この赤ちゃんのパペットが面白いんですが!)、野性味あふれるお転婆娘として描かれていて、それが何とも魅力的です。

舞台装置のデザインはゴスロリ調で私好み。振付は、古典版眠りのニュアンスを入れたものがたくさんあって、古典を知ってると倍楽しめると思います。踊り自体は、クラシックではなくコンテンポラリーとブロードウェイミュージカル風ダンスの中間くらい。この作品、私にとってはバレエとは呼べない感じでした。セリフはないけど踊りを見せるというよりは芝居としての完成度を大事にしているところから、バレエ風のミュージカルというのが一番しっくりくるように思います。

そして、音楽。あらためて今回、チャイコフスキーの眠りの音楽は素晴らしいな、と思いました。ロミジュリもプロコフィエフの音楽がほぼ主役ですが、眠りもそれに匹敵するパワーを音楽自身が持っています。

さて、ダンサーについて。一番観られてよかったと思ったのは、リラ伯爵のクリストファー・マーニー。善も悪も兼ね備えているように感じる妖しい、でもどこかコミカルなリラ伯爵、彼の演技の力量を感じます。踊りももちろんキレキレ。そして、カラボス/カラドックのアダム・マスケルも悪の色気がとても素敵。この役が色っぽくないと、面白くないだろうなと思います。

オーロラ役は鎌田真梨さん。初演キャストのハナ・ヴァッサロほどの猛烈なパワーはないけど、お茶目なオーロラを好演されてました。レオ役のクリス・トレンフィールド、ちょっと弱気な役にとても合っていると思いました。

終演後はスタオベされている方も多かったです。ニュー・アドベンチャーズにはたくさんの熱狂的なファンがいるのだなあ。

公演は9/25まで。まだチケットも十分あります。ミュージカルの気軽さで楽しめるこの作品、バレエは敷居が高いと思っている方にもオススメです。
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