【創作まとめ】
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【前回】
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警察に向かった私たちは、まずは氷室さんが事前に話をつけていた受付で来客者のリストを調べた。
出入りの業者、紛失物を探しに来た人、運転免許の更新に来た人、何かの届け出を出しに来た人、警察署内は人が多くごった返していた。
その中から裏切者に接触している人間を割り出すわけだが、意外にあっさりと見つかった。
答えは簡単、警察署員に面会を申し出た人間を調べると、該当者が一人だけだったのである。
届け出などで来た人間は、わざわざ署員を指定して面会をしたりしない。
「多田太郎・・・・・・来客者の名前はおそらく偽名でしょう。面会相手は・・・・・・捜査一課課長の山田さんか」
まずは来客者リストを調べた私たちは、次に石動君が拘留されている留置所へ向かう。
このまま部屋に突入して、戦闘になれば私たちだけでは心もとない。
いくら氷室さんが特殊部隊の強者だとしても、私を守りながらの戦いでは分が悪すぎるということだ。
それにしても、警察署内って出入りすることが無かったので少しドキドキするわね。
建物としては20階建てなわけだが、中央が吹き抜けになっており、屋上の天窓から光が差し込んでいる。
もっとごちゃごちゃしていたイメージなだけに、オシャレな造りに感心するわ。
留置所のある地下に向かうと、そこは六畳くらいを一部屋とした鉄格子の部屋が現れ何人か拘留されている。
「石動、元気してるか?」
「氷室さん・・・・・・と桜子さん!? なんでここに?」
「説明は後だ、警察の裏切者と組織の人間を捕まえに行く。力を貸してもらうぞ」
「あ、ああ」
留置所から出た石動君は軽く背伸びをしながら、節々の稼働を確認している。
「その前に石動君の状態をチェックさせてもらうわ。武装のオミットも解除したいし」
カバンからノートパソコンを取り出し、手早く石動君にケーブルを繋げる。
これで石動君が警察に捕まってからの全てを知ることが出来るわ。
「特にデータや装備をいじられた形跡はないようね」
次に武装のオミットを解除していく。
おそらく風間さんとの戦闘になるから、ことらも飛び道具は必須よね。
「時間ないので手短にお願いします」
氷室さんがせかしてくるが、せめて一つくらいは解除しておかないと後で泣きをみることになるかもしれない。
私は手早く解除コードを打ち込み、ある武装を開放する。
「桜子さん、どうして来たんですか?」
「ん? アンタが危険な目にあってたら普通来るでしょ」
「でも自分、今朝怒らせましたよね?」
「もう忘れた」
「自分はもうあの家には帰らないつもりで、わざと桜子さんを怒らせるようにしました」
は? 何言ってんのコイツ。
まさか今朝のが計算だったとでも言うつもり?
「アンタ、そんな器用な人間じゃないでしょ」
「自分があの家に居たら、また桜子さんやみなさんを危険に巻き込んでしまうかもしれない」
「あーうん、そうね」
その辺は母さんも懸念していたわね。
「だから自分はあの家に居たらいけないと・・・・・・」
「そうね、女所帯に居つこうする方がおかしいわね。うちを出ていくのはいいとして、定期的にメンテナンスには来なさいよね」
「え?」
作業の手を止めず私は続ける。
こんなこっ恥ずかしいこと、面と向かって言えないし。
「私がメンテナンスしなかったせいで、アンタがどこかで野垂れ死んだら夢見が悪いじゃない」
「そ、そうですよね」
「だからアンタはどんな任務にあっても、必ず生きて帰ってきて私のメンテを受けなさい」
「・・・・・・ありがとうございます」
そして私に戦闘データを渡すのよ。
システムの最終チェックを終えた私はカバンにパソコンをしまう。
「石動、私からも一言ある」
氷室さんが何やら決意を秘めたような目で石動君を見つめている。
「何ですか?」
「私を殴れ!」
「は?」
全く予想していなかった突然の言葉に私と石動君は唖然とする。
「私はお前の変身した姿を見て、恐怖を覚え距離を置こうとした。それが許せないんだ」
なんか青春ドラマみたいなのが始まったわね。
急いでるんじゃなかったの?
「だから力いっぱい私を殴ってくれ!」
「えと・・・・・・話は分かりましたけど、自分が力いっぱい殴ったら氷室さんの頭が木っ端微塵に砕け散りますよ?」
「え?」
石動君の言葉に顔が引きつる氷室さん。
まあオーガインのパワーで人間が全力で殴られたらミンチ間違いなしよね。
「だから今度、奢ってください」
「お、おう」
石動君は優しい笑顔でこたえるが、氷室さんはまだ納得いってないような顔をしている。
まあスッキリしないのもわからないでもないが。
「青春茶番は終わった?」
「桜子さんヒドいっすね」
「じゃ、行くわよ」
いつまでも続きそうな青春ドラマを無視して二人を促した。
私としてはこのまま石動君を連れて脱出したいところではあるが、どうもこのまま帰れそうにない。
ならさっさと用事を済ませて帰りたいものね。
私はこれから起こることにウンザリしながら歩を進めた。
【その5へ続く】
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