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2016年08月28日18:18

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ドラマの撮り直しについての考察

NEWS加藤シゲアキ&沢尻エリカ、迫真の演技に反響殺到「引き込まれた」「涙なしでは見られない」
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=137&from=diary&id=4164101

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今回のドラマの撮り直しのニュースを聞いて思い出したのは、11年前(2005年)の夏にあった連ドラ版「がんばっていきまっしょい」です。出演者の内博貴が飲酒で補導され、同じジャニーズの田口淳之介が代役で撮り直しが行われました。

この時は、法政大学でやっている講義のネタに使えないかと思って、ビデオを細かく見直してチェックした記憶があります。時系列を確認してみると、内博貴が補導されたのが7/16(土)で、7/19(火)に第3話、7/26(火)に第4話が放送されました。

その第3話には内博貴が登場するシーンが一切ありませんでしたが、映っているシーンやカットを編集で全部カットされたようです。この回の終盤にはレースのシーンがあって、応援の群衆の中には彼もいたはずなんですが、トリミングしたんじゃないかと思われるようなカットもありました。こういう対応が可能だったのは、彼が物語の展開に大きく絡んでいなかったからだと思われます。ヒロインの鈴木杏にチャチャを入れるような役回りだったので、カットしてもメインのストーリー(第3話ならレース)には影響がないわけです。

第4話からは、代役の田口淳之介が登場したのですが、細かくチェックするとカット単位で差し替えたと思われる痕跡がいくつかありました。たとえば部室のシーンでは、田口淳之介が映ってるカットとそれ以外のカットで、部室内の備品の位置などが微妙に違っていたりしました。この手の不具合は、撮り直しに限らず、同一シーンを2回に分けて撮影した時などによく発生することではあります。――ただし、これを講義に使ったことは、結局のところ一度もないです。講義の際にはネタの取捨選択するのですが、そんな重要なネタじゃなかったんでしょう。

で、昨夜放送された「24時間テレビ」内のドラマ「盲目のヨシノリ先生〜光を失って心が見えた」(脚本:水橋文美江、演出:中島悟)ですが、代役の小山慶一郎の出演シーンは3分程度で、若干のエキストラを除けば、ほとんどが加藤シゲアキと2人だけのシーンでした。

撮り直しをする場合、一番厄介なのは役者とスタッフの手配(スケジュール調整)なんですが、役者が2人だけというのは不幸中の幸いです。ひょっとしたら、他の出演者と絡むシーンもあったのかもしれませんが、そういうのはシーンごとカットしたか、高畑裕太が映っているカットだけカットして、最初からいなかったように再編集したんでしょう。

「がんばって…」の場合は、連ドラなので撮影チームも稼働中だったんですが、今回の場合、撮影チームが解散していたのかどうかが微妙です。近年のドラマは、放送日の直前まで撮影していることが多いので、事件が発覚した23日の時点で撮了していなかった可能性も高いと思っています。

その証拠というほどのネタではありませんが、気になったシーンがありました。盲導犬の学校で終了証をもらうシーンで、小山慶一郎が登場して加藤シゲアキに抱きついていましたが、盲導犬の学校にリハビリ病院の小山慶一郎がいるのは不自然です。ストーリー展開上も、たかだか3分しか登場しない人物が抱きつくのは不自然ですから、このシーンはおまけで付け足したような気がします。

「がんばって…」の第4話は、カット単位で映像を差し替えていましたが、今回のドラマはシーン全体を取り直していたようです。屋外のシーンは快晴だったので、天気記録から推測すると撮影したのは25日(木)か26日(金)だと思われます。ドラマの場合、撮影そのものよりも前段階の、脚本の修正やスケジュール調整の方が大変なので、そこをクリアできれば、撮影自体はそんなに時間はかからないと思います。編集などのポストプロダクションは放送日の朝までに完パケを仕上げる、というケースが多いようですから、その前日までに撮影が終われば、そこそこ無難なスケジュールでしょう。

これはドラマ撮影に限ったことではありませんが、どんな仕事(創作系)でも、一度やった作業を繰り返すというのは、最初の作業よりも短時間で済むことが多いです。たとえば、60分かかって書いた文章を誤って消してしまったとして、それを一から書き直すのにかかる時間は20〜30分程度でしょう。調べたり試行錯誤したりする時間が短縮されるからです。撮影の場合も、スタッフとの打合せや試行錯誤の時間が大幅に短縮されるはずですし、割本(撮影用台本)も同じものを使うのであれば、通常の倍くらいのスピードで撮影が進むと思われます。

ちなみに、通常の場合、1日で撮影できる尺の長さは、ロケだと7〜8分、スタジオだと15分と言われています。1時間ドラマの正味は45分弱なので、オールロケでも6日間あれば、1話分の撮影ができる計算になります。

ところで、撮り直しの段取りを決定する上で重要な役割を果たすのは、記録(ドラマ)とかスクリプター(映画)と呼ばれる人です。撮影した素材を記録・管理する人のことですが、今回の場合、高畑裕太が映っている映像が何か所あって、それの保管および進行状況がどうなっているのか――ということを正確に把握しているのは「記録」の人だけです。なので、この人と相談しなければ、演出家もプロデューサーも正確な状況認識ができないわけです。これに「スケジュール担当」から入ってくる、スタッフや役者の状況を加味した上で、撮り直しの段取りが決定されるわけです。

以下は、撮り直しとは全く関係のない余談。

今回のドラマ「盲目のヨシノリ先生〜光を失って心が見えた」の感想。
24時間テレビのドラマというのは、毎年作っているだけあって、大きくハズすようなことはなく、一定レベル以上のクオリティをキープしているという印象があります。毎回、似通ったネタを扱っているだけに、同じにならないように工夫(取材)しているので、他局の同種のドラマよりもクオリティが高くなるんです。今回のドラマもそんな印象で、この枠としては最低限的なレベル。何年か前の作品で、山田涼介が「死ぬ練習をすれば、死ぬのが怖くなくなる」とか言って、霊安室で横になってうっとりしている――というシーンがあったのですが、今回はそういう過激なエピソードはなかったです。

あと、盲目の先生が教壇に立つというネタは、何年か前にNHKでドラマ化されてましたね。「チャレンジド」、2009年と2011年で主演は佐々木蔵之介。こちらが教壇に立ってからの話が中心だったのに対し、今回の「盲目の…」は、教壇に立つまでのお話。その辺も、若干、新新味に欠けた理由かもしれないです。

撮り直しの屋外のシーンで気になるシーンが一つありました。加藤・小屋の2人が道路を横断する際に、バイクに乗った2人組にヤジられるシーンです。横断歩道の前で立ち止まるカットでは2人に日光が当たっていないのに、次のバイクと一緒に映っている引きのカットでは、2人に日光が当たっています。おそらく撮影中に太陽または雲が動いてしまったのだと思いますが、この種の不具合はテレビドラマではよくあります。

映画と比べるとテレビドラマは短期間で撮影することが多いので、太陽の光とか雨など、天候に関する部分で無理をしているケースは少なくありません。法政大学で毎年やってる講義でも、その種の「ミス」と思われるドラマ映像を学生さんに見せて、「映像作品というのは、バラバラに撮影されたものを並べて、つながっているように見せている」と説明しています。

……と、とりとめもなく書いていたら、我田引水になったので、これで終わりにします。(^_-)

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