米長邦雄の本を手掛けていた頃、時折、青野九段ともお会いした。
同じ鷺ノ宮に住んでいたこともあり、米長は弟分のように接していた。
青野は、私とほぼ同世代で、アマチュアの指導に熱心、将棋の実用書も多く書いている。
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「9マス将棋」発売前から大反響で増産
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=84&from=diary&id=4161298
いかにも青野らしい考案で、子どもに将棋を教えるには最適だろう。
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青野の人柄を伝えるエピソードを思い出した。
ある時、アマチュアの老人との指導対局で2枚落ちを指した。
青野が飛車と角を引いてのハンデ将棋。
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2枚落ちは大きなハンデだが、プロが本気になったら、
そこらのアマではどうにもならない。
アマの棋力が三段か四段くらいないと、勝てないだろう。
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青野とアマ老人の対局は、2枚落ちの定跡どおりに進んだ。
中盤に差し掛かった頃、青野はあることに気付いた。
アマ老人の指し手が、青野が実用書に書いたものと同じだったのだ。
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アマが二枚落ちを勝ちきるには、いくつものバリエーションがある。
実用書は、それを解説し、アマ側がほぼ勝ちとなる局面を示し、
「これにて下手(したて)勝勢」と記して筆をおく。
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しかし、そこから先、アマが1手でも間違えれば、ひっくり返ってしまう。
あるいは、プロが変な手でワナを仕掛け、グチャグチャな将棋にしてしまえば、
アマは勝ちきることができない。
米長は「2枚落ちでプロに勝てるのは人柄のいい人です」と言っていた。
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アマ老人は、青野が実用書に記した手を指し続けた。
青野は、自分が書いた手を指し続けた。
そして、アマ老人が、本に書いてある最後の手を指すと、青野は投了した。
「負けました。よく勉強されています。お見事です」
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