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2016年08月14日08:15

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むしょうに書きたくなった話

あいつはいつも、そこにいた――。

初めて会った(見た?)のは小4のとき、4年生には見えない体格の良さに驚いた。
そして中学生になり、選抜に選ばれたときにあいつはいた。
「大柴喜一です。よろしく」
そうぶっきらぼうに挨拶する。
すでに180センチを超えているであろう身長のあいつはみんなの目を引いた。
練習のとき、どんなに鋭いパスでもあいつはくらいついてくる。
「へぇ」
おもしろくなった。
ただデカイだけではない。
デカくて、足元も上手い。

「おい、おまえ」
休憩中、急に呼ばれた。
「あ?」
ぶっきらぼうに応える。
「おまえ、なんでオレにだけあんな取りにくいパスするんだ」
気づいてやがったか…。
「そんなことねーよ、たまたまじゃねぇか」
「いいや違うね。オレには優しさがない」
「優しくして欲しいのか」
俺は大柴をじっと見た。
「い、いや…」
大柴は目を反らす。
そのとき、監督の練習再開の声がした。
「ほら行くぞ。また取りにくいパスしてやる。それからな」
俺は大柴に顔を近づけた。
「俺の名前は君下だ。君下敦」

それから月日は流れ、都選抜としていろいろなところと戦った。
九州選抜は強かった。
相庭未蘭、あいつの顔は忘れない。
それは喜一も同じだったらしく、かなりの闘志を燃やしていた。
俺はいつのまにかあいつを喜一と下の名前で呼ぶようになっていた。

「聖蹟?」
それは中学3年生のときだった。
喜一が聖蹟高校に行くと言ったのだ。
「名門、聖蹟。あそこでサッカーやる」
俺も進路を考えなかったわけではないが、父子家庭で金が無いのに私立に進学するのは気が引けた。
「聖蹟かぁ、俺も行きたいな」
つい本音がこぼれた。
「おまえも来い。まだまだ一緒にサッカーしてやる」
「してやる、って…してください、だろ」
「おまえのパスを受けれるのはオレだけだ」
その言葉はなぜかストンと胸に落ちた。
「すげー自信」
「あぁ」
ニヤリと喜一は笑う。
「しかしよ、聖蹟アタマのレベルもそこそこ無いと受からないぜ。おまえのアタマで行けるのか」
「そこは寄付金積んでやる」
「は?」
俺は喜一をまじまじと見つめた。
ヤツは大真面目な顔をしている。
大真面目で裏口入学すると言っている。
やっぱりバカだ、こいつは…。

かくして、俺は聖蹟高校に入学した。
俺のアタマなら楽勝だった。
オヤジには苦労かけるが、「気にするな」と言ってくれた。
ありがたい。卒業したら、楽させてやるからな。
入学式、あいつはいた。
また背が伸びたのか、新入生の列の中でひときわ目立っていた。
裏口入学したのかは知らない。
「よぉ、また背が伸びたか」
驚いた様子で俺を見下ろす。
「っ、君下っ!」
俺はにかっと笑った。

おもしろい高校生活が送れそうだ。




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