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2016年07月02日00:17

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Noism 劇的舞踊 vol.3 ラ・バヤデール−幻の国

2016/7/1金 19:00- 神奈川芸術劇場ホール

演 出 金森穣
脚 本 平田オリザ
振 付 Noism1
音 楽 L.ミンクス《ラ・バヤデール》、笠松泰洋
空 間 田根剛(DORELL.GHOTMEH.TANE / ARCHITECTS)
衣 裳 宮前義之(ISSEY MIYAKE)
木工美術 近藤正樹
舞踊家 Noism1 & Noism2
俳 優 奥野晃士、貴島豪、たきいみき(SPAC ‒ 静岡県舞台芸術センター)

ミラン 井関佐和子
ヨンファ 梶田留以
バートル 中川賢
ポーヤン(フイシェンの侍女/ヤンパオ居留民のスパイ) 石原悠子

Noismの最新作、初日に観てまいりました。平田オリザさんを脚本に迎え、衣装にもISSEY MIYAKEの宮前さんを据えるなど、かなり力の入った作品。実際観ると、演出のすみずみまで計算された、素晴らしく完成度の高い作品でありました。

全体的な印象は、想定した以上にバヤデールそのもの。女性の群舞も多くて、金森さんが全幕バレエを振付けるとこんな風になるんだなと興味深かったです。

ただし、脚本にオリザさんが入っているということで、舞台はクラシックバレエのインドではなく、何と満州国に設定されています。

ストーリーは、ざっとこんな感じ。

日本の介入によって出来た偽りの国、満州国。日本の傀儡となる王は腹心の部下を欲しいと欲し、騎兵隊長のバートル(=ソロル)を自分の娘と結婚させようとする。しかしバートルにはミラン(=ニキヤ)という踊り子の恋人がいる。バートルは自分の民族の独立のために、そして王の娘は帝国を守るために、政略結婚を受け入れる。が、その婚約の祝いの場で悲嘆にくれるミランは殺されてしまい、悲嘆にくれ後悔に苛まれるバートルはアヘン漬けになり、彼女の夢を見る。バートルと王の娘の結婚式のとき、満州国は外国に侵略されて滅びる。このストーリーを、満州国に駐在していた日本人、ムラカミが振り返る。

舞台を満州国に置き換えて、日本の圧政に苦しんだ人達を想起させるあたり、現在の日本の右傾化に対する警告の意味が含まれていそう。もともと金森さんは頭のいい人だなと舞台を観るたびに感じるのですが、それにオリザさんが加わって更に頭のいい感じ。個人的には、若干理に勝る作品になっているなという印象かなあ。

全体通してまず感心したのは、相変わらず演出が素晴らしいなあということ。今回も作品は役者とダンサーが入り混じって上演されます。ダンサーは言葉を持たず、体でセリフを表現する。また、傀儡政権の王はダンサーでも役者でもなく、本当に人形だし!あと舞台セットも、細長い銀の柱をいくつか使っているだけ、それがあるときは宮殿になりあるときは廃墟になり。あと、衣装も素晴らしかった。布を贅沢に使ったつくりのものが多く、多数の少数民族を衣装で表現していました。また、第2幕ではバートルの幻の中のミランの儚さを表現するのも衣装だった。こういうところ、Noismはいつも凄いなぁと思います。

あと、ダンス。振付は、思った以上にクラシカルな感じで、ロマンチックバレエのような女性の群舞もたくさんありました。金森さんがバレエ バヤデールの全幕を振付けるとこんな感じになるのかぁと興味深かったです。特に印象的だったのは、影の王国の最初のシーン。ミランと同じ姿をした幻の女性が列になってバートルに迫ってくる。それがすっと左右に割れたり、1列に戻ったりしながら、だんだん広がっていくのです。アヘンで朦朧としたバートルの目の前で、ミランの幻が分裂して増殖していく。振付や衣装はとても美しいのですが、同時に非常に怖い。秀逸な表現だと思いました。

井関さんは、とても儚くて美しかった。この方はいつも割と生命力にあふれる役を演じているイメージだったので、ここまで変われるのか!と舌を巻きました。井関さんのダンスは本当にいつみても最高に素晴らしいのですが、他のダンサーさんも皆さんとてもハイレベル。いい意味で、井関さんが浮かない存在になっている。個人的に気になったのは、踊り子のNO.2を演じた梶田留以さん。動きが大きくて華があり、しかも強くて目を引きます。

と、個々のパーツを見ると非の打ちどころがない感じなのですが、、、私はこれよりは箱入り娘の方が好きだったなあ。完成度はとても高い作品でカルメンよりはかなりいいと思うのですけど、余りに具体的で解釈の余地が少なく、しかも満州についての知識も思い入れもないので、今一つ作品に感情的にのめりこむことができませんでした。どうも私はNoismの場合は、抽象度の高い作品の方が相性がいいようです。(あ、それと、たいへん申し訳ないのですが、SPACの役者さんたちが少々苦手)

とはいえ。オリザさんを迎えたりして、またまた新しい方向に踏み出したNoism、今後も注目していきたいことに変わりはありません。8月のNoism0『愛と精霊の家』埼玉公演も、観に行きますよ!
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