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2016年06月26日14:21

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英国ロイヤルバレエ ジゼル

東京文化会館

音楽: アドルフ・アダン
編曲: ジョゼフ・ホロヴィッツ
振付: マリウス・プティパ(ジャン・コラーリ、ジュール・ペローによる)
台本: テオフィル・ゴーティエ(ハインリッヒ・ハイネによる)
演出・追加振付: ピーター・ライト
美術: ジョン・マクファーレン
照明: デヴィッド・フィン(ジェニファー・ティプトンのオリジナル・デザインによる)
指揮: クーン・ケッセルズ
管弦楽: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

◆2016/6/22水 19:00-

ジゼル: マリアネラ・ヌニェス
アルブレヒト: ワディム・ムンタギロフ
ヒラリオン(森番): ベネット・ガートサイド
ウィルフリード(アルブレヒトの従者): ヨハネス・ステパネク
クールラント公: ギャリ―・エイヴィス
パ・ド・シス:
 崔 由姫、アレクサンダー・キャンベル
 フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ
 ヤスミン・ナグディ、アクリ瑠嘉
ミルタ(ウィリの女王): イツィアール・メンディザバル
モイナ(ミルタのお付き): オリヴィア・カウリー
ズルマ(ミルタのお付き): ベアトリス・スティックス=ブルネル

◆2016/6/24金 19:00-

ジゼル: ナターリヤ・オシポワ
アルブレヒト: マシュー・ゴールディング
ヒラリオン(森番): トーマス・ホワイトヘッド
ウィルフリード(アルブレヒトの従者): ヨハネス・ステパネク
クールラント公: クリストファー・サンダース
パ・ド・シス:
 高田 茜、ジェームズ・ヘイ
 イザベラ・ガスパリーニ、マシュー・ボール
 メーガン・グレース・ヒンキス、ベンジャミン・エラ
ミルタ(ウィリの女王): クレア・カルヴァート
モイナ(ミルタのお付き): エンマ・マグワイア
ズルマ(ミルタのお付き): ヤスミン・ナグディ


ロイヤルのジゼル、4回の公演のうち前半の2つに行ってきました。「ロイヤルでザッツ古典ってなんだかねえ」と思っていたのもあり(2013年来日公演の白鳥は今一つ私の心に響かなかった)、ロミジュリで観るのはあれだけどどんな進化を遂げているのか確認したいオシポワと、ロミオの配役が原因でジュリエットを見ないことにしたマリアネラと、だけに絞ったのでした。が、フタを開けてみればライト版ジゼルはとても演劇的で面白かった。原典プティパの振付と大きく違うわけではないのですが、コールドまで、舞台上の全員が役を生きているからかな。

あと、舞台装置も素敵ですねー。細部にこだわっていて、特に1階席からステージを見上げると本当に深い森の中にいるように見えます。ロミジュリもそうですが、衣装も重厚感があって素敵。さすが演劇の国のバレエ団。

以下、それぞれの回の感想を。まずは、水曜日。

マリアネラのジゼル、1幕は彼女の身体能力の高さに改めて驚かされました。踊りがシャープでジャンプは高く距離も長い(フィギュアスケートみたいな表現だ・・・)!割と元気なジゼルだったな、メイクも濃かったし。が、2幕でそれが一気に死霊ウィリに変身。1幕の活発さは2幕との差を出すための計算だったのだ、と後で気づかされました。2幕に入っても彼女の身体能力の高さは健在。でも、足元はとても強靭だしリズムがはっきりしてるんだけど、上半身がとても柔らかくてたおやか。その組み合わせが、死して狂ったように踊り続けるウィリという妖精を絶妙に表現していて興味深かったです。ジゼルが登場した直後のあの、アラベスクのままの回転(踊らない人なので名称が分からない)、あそこのマリアネラは凄かったなあ。軸足の踏みかえがあまり分からないので、すーっと高速に回ってるように見えるんです。いい意味で不気味で、あんなの初めて観ました。

そしてワディムのアルブレヒトもとってもノーブルでよかった!もう踊りの点では完璧ですねー。彼は割と長身の方なのに体をきっちりコントロールできていて、ジャンプも軽い。身のこなしも、もともとノーブルなので、1幕で農民の格好をしていても隠し切れない高貴さがあり、そういうところはこの役柄がとても似合うと思いました。欲を言えば、役作りの点。アルブレヒトって実はとても難しい役ですよね、二股かけていた女の敵である1幕をどういうふうに演じるか。その点は、まだまだ進化の余地があると思います。でも、まだ26才だし、これからの成長に期待です!

と、主役の二人はここにはとても良かったし全体的にはとても完成度が高かったのですが、今一つ感動できなかったのは、彼らの間にあまり愛情が感じられなかったんだよなあ。いえ、よそよそしかったというわけではないし、踊りの点では息はぴったりだったと思います。でも、心の通い合いみたいなものがもっとほしかったな。サラ&スティーヴンの日を観た人の二人のパートナーシップに感動したという感想を見ていると、ジゼルというのはとてもそのパートナーシップが大切な作品なのかもしれません。

さて、主役二人以外にこの日はパ・ド・シスは最強のメンバーだと思いました。ロイヤルのダンサーって本当に音楽性豊かで、体の使い方がとても丁寧で、観ていて気持ちいい。このパ・ド・シスは、バレエフェスでこのメンバーで出てほしい、ってほど抒情性豊かで楽しかったです。ユフィちゃんは本当に、ちょっと東洋的な、女性らしくて柔らかな踊りをしますねー。

で、踊りはしないけど面白かったのがギャリーのクールラント公!なんかね、貴族のクセして凄みがあるんですよ・・・!顔だけじゃなくて態度がね。狩の格好ということで一部毛皮つきのちょっとワイルドな衣装なこともあり、相当裏で黒いこともやってる極道っぽい領主様に見えてしまいました^^; (真田丸の草刈パパにそっくりという話も!) こんなクールラント公って初めてみたのでロイヤルは独特なのかしらと思ったら、金曜日のサンダースはオーソドックスな役作りだったので、これはギャリーのオリジナルだと思われます。まったくもー、ギャリーって本当に楽しい!

続いて金曜日です。

ボリショイからロイヤルに電撃移籍したオシポワ。昔は身体能力の高さのあまりに体操系って感じで、一部のバレエファンからはひどく嫌われてしまっていました。私は身体能力高い人は基本的に好きなので彼女は演目によっては観たいダンサーだったのですが、それでもロイヤルに移籍と聞いたときは、えーマクミランは似合わないよね?って思っておりました。

ロイヤル移籍後の彼女、これまでに2回観てます。一度は2013年12月ロイヤルバレエの本拠地コヴェントガーデンでスティーヴンとのジュエルズ・ルビー。テクニックは上手いけど、リズムのとり方がいけてなくて、スティーヴのリズム感を殺さないで!って心で叫んだなあ。あとは2014年ABTのガラ公演でのマノンのソロ。これまた、上手いけどマクミランっぽくないなと思ったり。

というわけで、今回彼女はどうしようと思ったのですが、ロンドンで人気ということはロイヤルにふさわしい何かがあるはず、と思い、マクミランは勇気が出なかったのでジゼルを取ってみた次第です(長い前置きすみません)。

で、オシポワのジゼル。これが実はとってもよかったです!観てからずーっと考えていたのですが、実は私、マリアネラよりもオシポワのジゼルの方が好きかもしれない。マリアネラもよかったんですが、オシポワはその上を行っていた、ということです。

意外なことに、オシポワのジゼルの役作り、実にロイヤルらしくオーソドックスでした。一幕は、つつましくて朗らかで踊りが大好きな、皆に愛される村娘にしか見えない。もちろん、あのすごい身体能力は健在で踊ると凄いんですが、これみよがしではなく、その踊りと演技が実にナチュラルに一体化していました。アルブレヒトの正体に気づいた後の演技もよかったなあ。マニアネラはこの剣を引き回すシーンで狂ったように笑っていたのですが、オシポワの狂い方はもっと儚げで痛々しい感じ。不覚にも、涙を誘われそうになってしまいました。

そして二幕も素晴らしかった。踊り的には、もう流石としか言いようがない。ただ、マニアネラも上手かったからなあ。テクニック的にこの二人の間にさほど差があるようには、ジゼルでは見えなかったです。それどころか、実はマニアネラの方が身体能力の高さは際立っているような気さえしました。で、オシポワのウィリなんですが、本当に空気を感じさせない、儚く漂うような幽玄の美を持つウィリでした。昔と比べると、リズム感と上半身の使い方がだいぶ変わったように思います。これ、演技の面も含めて、ロイヤルでのレッスンの成果ってことですよねえ。すごいなロイヤルメソッド!

オシポワのジゼルは本当に想定外によかったのですが、対してマシューのアルブレヒトがなあ。彼、踊りは上手いですよ。ノーブルだし。でも、何だかマシューはマシューで、アルブレヒトに見えない。その辺の普通の人に見えちゃう。ワディムのアルブレヒトも薄味ではありましたが、ちゃんとアルブレヒトっぽくはありました。マシュー、この演技力のなさは勿体ない。もっと勉強してほしいなあ!

金曜日のその他の見どころとしては、パ・ド・シスに私のお気に入りのジェームズ・ヘイがいて楽しかった!彼は音のとり方が抜群によくて、手足の先の細かいところまで気が行き届いたシャープで洒落た踊りをしますね。観ていて気持ちいいです!

あとは、ドゥ・ウィリの片割れのヤスミン・ナグディがよかったなー。彼女、ロイヤルのくるみを映画館で観たときにいいなと思ったのですが、実際に生で観るととても華があって猶更いい!将来のプリンシパル候補ですかね。今後が楽しみなダンサーです。

そうだ、この日はヒラリオンのトーマスもよかった。男らしくてイケメンで、しかもジゼルへの溢れる愛情が伝わってきて、マシューが今一つ役になりきれていなかったこともあり、この二人だったら考える余地なくヒラリオンでよくない?などと思ってしまったのでした。

金曜日は、オケも合格点。ホルンが結構頑張っていたな。シティフィルさんこの調子で最後までお願いしますね。

さて、ロイヤルの東京公演は、これを書いてる時点で上演されているジゼルでおしまい。このバレエ団、私はハンブルクに次いで好きなバレエ団なので、祭りはとても楽しかったです。ポンドもしばらく安そうですし、ご無沙汰しているロンドンにまた出かけてみたくなりました。

参考までに、2013年12月にロンドンで観たジュエルズの感想はこちら↓
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1919804851&owner_id=2438654
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