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2016年06月21日19:30

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平野貞夫氏の論

今回も濃密だった

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『田中角栄を葬ったのは誰だ』あとがき

 今年は異形異能の政治家田中角栄がロッキード事件で逮捕され
てから40年目。異常とも思える「角栄ブーム」が起きている。
 私は昭和35年に衆議院事務局に就職して以来、国会の裏方と
して、また平成4年に参院議員に当選してからは国会議員として、
政治の表裏をじっくりと観察してきた。
 ロッキード事件が起きたのは、私が前尾繁三郎衆院議長秘書時
代のことだった。今回、私は意を決して、ロッキード事件の真相
を事実に基づいて克明に綴った。それは何としても健全な議会政
治を復権させたいという、私の執念からである。それは私の心の
叫びでもある。
 戦後70年余、紆余曲折をへながらも、議会制民主主義のもと
でわが国は戦後復興を成し遂げ、国民生産額でも世界有数の地位
に上り詰めた。しかし、敗戦国であるわが国の平和と繁栄は、戦
勝国アメリカの庇護のもと、国家の最高規範である憲法はもちろ
ん、安全保障も外交もすべてアメリカに丸投げにし、屈辱に甘ん
じてきた末に獲得した「不名誉な果実」だ、といっても間違いで
はないだろう。

 名ばかりの独立国である日本は金満大国にはなったが、国家観
は希薄で、歴史観すらもアメリカ製の戦後レジームを引きずって
いる。有体にいえば、残念ながら日本はアメリカの従属国なので
ある。しかし、この不愉快極まりない厳粛なる事実に正面から向
かい合わない限り、独立国としての名誉も誇りも回復できない。
そう私は考える。
 三木武夫首相はロッキード事件を「外為法違反」という名目で
田中角栄を別件逮捕することで、早々に決着を図った。この裏で
疑惑の中心人物児玉誉士夫の口を封じる謀略が、白昼堂々と行わ
れた。私は今回この事件の真相を白日のもとにさらすことにした。
 児玉は敗戦後、A級戦犯として三年余にわたって巣鴨拘置所に
収監された。児玉とCIAの関わりについては早稲田大学教授の
有馬哲夫氏が『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』文春新書)で詳述し
ている。
 有馬氏は「児玉とCIAは、日本を共産主義に対する防波堤と
する、再軍備させ、軍備を強化する、というところまでは共通点
が多かった。だが、児玉の最終目的が日本を独立国とし、アジア
の盟主として復活させることだったのに対し、アメリカの目的は、
日本を自らに従属させ、対抗勢力にならないようにすることだっ
た」と述べている。
 最重要証人である児玉誉士夫の証人喚問が実現していたら、ど
のような事態が生じただろうか。自ら「国士」をもって任じてい
る児玉が事件の真相と、政界の裏面を暴露する可能性がまったく
なかったとは言い切れまい。児玉証言は核爆弾級の衝撃を与える
可能性があったのだ。そのため、児玉の証人喚問を是が非でも阻
止しなければならない者がいたのである。
 こうして児玉誉士夫を意識障害で口もきけない状態にする謀略
が行われた、と私は考える。その結果、ロッキード事件のターゲ
ットは田中角栄に絞り込まれた。
 このことによって利益を得たのは誰だったのか。結局、この児
玉証人喚問を封じ込めたことが、ロッキード事件最大のターニン
グポイントになった。
 本書で述べたように、田中角栄を起訴に持ち込んだ最有力証拠
は「嘱託尋問調書」だった。この嘱託尋問は、日本国憲法はもち
ろん刑事訴訟法にも違反しており、本来、証拠として採用できる
代物ではなかった。
 案の定、田中角栄が死去して2年がたった平成7年、最高裁判
所は嘱託尋問調書の証拠能力を否定した。
 「日本の刑事訴訟法上、刑事免責の制度を採用しておらず、刑
事免責を付与して獲得された供述を事実認定の証拠とすることを
許容していないものと解すべきである以上、米連邦法上に基づい
て行われた嘱託尋問調書については、その証拠能力を否定すべき
である」(平成7年2月22日、最高裁判所大法廷)
 最高裁は田中角栄を違法な証拠で起訴したことを、自ら認めた
のだ。前代未聞のことである。いまから20年以上も前のことだ
が、当時、政治家もマスコミもこの問題を深く追及することはな
かった。
 今回、このあとがきを書くに当たって、『新潮45』に掲載さ
れた天野恵市氏の手記「児玉誉士夫の喚問回避に手を汚した東京
女子医大」を、改めて読んでみた。
 そこには、ロッキード事件が発覚してから48日目の昭和51
年3月23日に、アメリカに留学経験のある外国人を妻にした元
ポルノ俳優が、セスナ機で児玉誉士夫邸に突っ込んで、炎上した
ことが書かれていた。天野氏はこの時、自分が児玉邸に行ってい
れば、「死者は操縦していた日活の元ポルノ俳優に東京女子医科
大学の医療チーム2人を加えた3人となっていたはずだ」と書い
てある。
 ここまで読んで、私はハッと思い、身震いがした。児玉の証人
喚問は喜多村孝一医師による注射によって実現不可能になった。
しかし、児玉喚問を何としても阻止しようとする勢力は、児玉誉
士夫の命そのものを奪おうとしたのではなかろうか。そんな考え
がふと私の脳裏をかすめたのだ。
 最後に、私たちはロッキード事件から何を学ぶべきかを考えて
みたい。
 この事件は、戦後政治に巣食う病根を図らずも明らかにした。
一つは「ロッキード事件=虎の尾論」、つまり、いまも続く対米
従属シンドロームである。第二に、自民党内の陰湿な権力闘争に
必然的に伴う、政・官・財の三者による「権力の犯罪」である。
そして第三に、官僚支配からの脱却を図ろうとする政治家を排除
する勢力の存在である。
 ベルリンの壁が撤去され、冷戦が終焉した時が、わが国にとっ
ては対米自立の最大のチャンスだった。平成5年8月、細川護熙
首相のもとで非自民八党派連立内閣が成立したが、細川政権は一
国繁栄主義、官僚支配政治から脱却し、アメリカとは「自立・協
力」関係を樹立する方向を模索した。細川政権は、対米自立を志
向した「角栄政治」の改革的発展を目指したのだ。
 しかし、細川政権による対米自立路線は、ポスト冷戦期にアメ
リカの巨大資本による世界支配が始まることによって、挫折する。
奇しくもこの年の12月、田中角栄が脳梗塞で言葉を失ったまま、
無念の涙を呑んで75歳で没した。
 その後、自由化・規制緩和を標榜し、国境を超えて、ヒト・モ
ノ・カネが勝手気ままに移動するワンワールド志向の「新自由主
義」が世界を跋扈するようになる。対米自立は雲散霧消してしま
った。
 こうした中で起きたのが「小沢一郎・陸山会事件」である。議
会政治の復権によって、自立国家を創造しようとする政治家を政
界から葬ろうとする点で、ロッキード事件と陸山会事件は「権力
による犯罪」という同じ構造を持っている。
 この「権力による犯罪」は、対米従属シンドロームに由来する
ことは明らかだ。アメリカと政治的経済的な利害関係を共有する
わが国の政治家、官僚、財界は無意識のうちに、アメリカの利益
を代弁している。
 アメリカの一部巨大資本の利益を最優先にするTPP。このT
PP交渉で大筋合意に持ち込んだ甘利明前経済再生担当相が今年
1月、現金授受問題で閣僚を辞任した。甘利氏は千葉県の建設会
社から600万円を受け取っていたと追及されたが、結局は不起
訴処分になった。国会閉幕前日のことである。
 国会開会中、甘利氏はTPP問題に関して、アメリカに不利だ
と思われることは一切明らかにせず、辞任後は「睡眠障害」と称
して、国会への登院すらしなかった。対米従属シンドロームが、
かくも深く底流に流れているのか、と思わせる経過である。
 安倍自公連立政権は、安保法制を強引に成立させ、普天間飛行
場の辺野古移設を強行し、立憲主義を崩壊させた。この手法は、
敗戦後の対米従属シンドロームのなせる病的な統治ノウハウとい
える。
 問題は日本人の多くが、これを良しとして許容していることだ。
 明治維新以来、官僚は「お上意識」と「天皇制」を巧みに利用
して、「天皇制従属シンドローム」ともいうべき統治ノウハウを
編み出した。それが大東亜戦争、敗戦という悲劇を招いたことを
忘れてはならない。
 いまも官僚支配の根底にある日本人のお上意識、これを何とし
ても改革する必要がある。自らの頭で考え、自らの責任で意思決
定する「人間の自立」なくして「日本国の自立」はない。福沢諭
吉がいう「独立自尊」とはそういうことだ。
 10年前、私は講談社から『ロッキード事件――葬られた真実』
を上梓したが、今回は同書に新たな事実を加え、大幅に加筆修正
したものである。
 私は陸山会事件以後、「日本一新の会」代表として、対米従属
シンドロームの打破を願って週一回のメルマガを発信して活動を
続けている。本書についてのご意見があれば、日本一新の会事務
局(jimukyoku@nipponissin.com)にお届けいただければ有難い。
 最後に、きわめて短期間で本書を刊行できたこと、さらに貴重
な進言をいただいた(株)K&Kプレス代表取締役の南丘喜八郎
さん、副編集長の中村友哉さんはじめ、スタッフの皆さんに謝意
を表したい。

  平成28年6月15日

            日本一新の会代表   平野貞夫妙観

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

下記日程の準備が進んでいます。お仲間にも吹聴願い、会場は溢
れんばかりの参加者で埋めたいと目論んでいます。ご協力をよろ
しくお願い申し上げます。
                    日本一新の会事務局

  ◇◇◇ 平野貞夫出版記念シンポジウム(仮題) ◇◇◇

        ―  記  ―

  期 日:平成28年7月26日(火)5時〜
  場 所:憲政記念館講堂
  主 催:日本一新の会・(株)K&Kプレス
  参加費:無 料

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  ◇◇◇ 参議院選挙・日本一新の会支援候補者 ◇◇◇

以下の方々を日本一新の会として推薦しますので、最大限のお力
添えをよろしくお願い申し上げます。(順不同)

   比例区  青木 愛

   比例区  北出 美翔

   比例区  末次 精一 (維持会員)

   比例区  姫井 由美子(維持会員)

   比例区  日吉 雄太

   岩手県  木戸口 英司(維持会員)

   新潟県  森 裕子
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