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2016年05月23日23:47

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◆★ ◎ 物語を考えてみた ◎ (第1778回)

一話完結型の新しい物語です
暇なときにでも、読んで頂けると幸いです
面白かったら「イイネ」や「コメント」等をして頂けるとありがたいです(^_^)

※ライトノベルのような文章が好きな方は、好みが合わないかもしれません
※雰囲気が伝われば面白いと思います

タイトル「最後の疑似恋愛」

――

恋愛なんてものは、どれだけ幸せだったとしても必ず別れるのがくる…
それは、たくさんの時間を過ごしていれば自然と理解してしまうと思う

現在、私は学生の頃から憧れていた看護師をしています
辛い時もあるけど、患者さんには私のマツシタミキという名前から「ミッキー」とニックネームを付けてもらったりして、励まされながら誰かを助けられる事に喜びを感じる毎日を過ごしています

そんなある日の事でした
私はヤマグチシュンさんのお世話をするようにと上司に言われました
情報によると、その人は20代後半で余命半年と診断された末期ガンの男性患者ということでした

それを聞いた時、私は正直、関わるのが嫌でした
何故なら、大抵の末期ガン患者の人は「もう長く生きられない」と気持ちが沈んでしまって鬱になる方が多いのを知っていたからです

しかし、仕事という事で断ることが出来なかったため、私は自分の気持ちを引き締めて、ヤマグチさんの病室に入り、彼に話しかけました

『ヤマグチさん。こんにちは。今日からお世話を担当させて頂く、マツシタと申します』

すると、彼は私を見るなり、挨拶をしてくれたのです
それは、末期のガンを患っているとは思えないほど明るく…

『ヤ、ヤマグチさん。お身体の調子はいかがですか?』
『それなりに良いですよ』
『そうですか…。どこか痛いところはありますか?』
『今は痛いところはないですよ。まぁ、最近はベッドにずっと寝てますから、床擦れで痛いね』

そう言って彼は苦笑う

『なら、外へ行きますか?』
『良いんですか?』
『はい。病院の敷地内までですが、出るのは大丈夫ですよ』
『ありがとうございます! いやぁ〜。さすがに窓から見える景色には飽き飽きしてた所だったんですよ』
『それは良かったです。じゃあ、準備をして来ますので…』

私は病室を出て、少しの雑務をした後に彼を乗せる為の車椅子と一緒に、再び病室を訪れました

『では、ヤマグチさん。外へ行きましょうか』
『はい』

ヤマグチさんは嬉しそうに私が持ってきた車椅子に座わり、一緒に病院の庭へ出掛けました

綺麗な庭の中で車椅子を押しながら彼とお話をしていると、突然、彼が『あっ!』と声を出しました

『どうしたんですか?』
『いやぁ。懐かしい花があったなぁ〜って』
『懐かしい花?』
『あれですよ』

彼が指差した方向を見ると、そこにはこの病院に入院している子供達が、大切に育てているアサガオがありました

『アサガオが、どうかしたんですか?』
『昔ね。親戚の子供の観察日記に付き合わされた事があったんです。で、日替わりで私も育てる事になってたんですが。私の育て方が悪かったのか、何故か4日目に枯れてましてね。子供にバカァ!って、言われた事があったんですよ』
『へぇ〜。良い思い出ですね。その子は今、どうしているんですか?』
『今は多分、中学生になって思春期を謳歌してるんじゃないんですかね。彼女を作ったりね。まぁ、バカやってると思いますよ。あはは』

こんな会話をしながら、私達は散歩を楽しみました

それから数週間、そんな会話を繰り返しながら少しずつ親しくなっていきました
そんなある日のことです
いつものように病院の庭をヤマグチさんと一緒に歩いていると、彼が少し真面目な顔で話してきました

『あの…』
『どうしました?』
『マツシタさんって、彼氏っているんですか?』
『えっ? まぁ、今はいませんが』
『そうですか』
『それがどうしたのですか?』
『いや。マツシタさん。お願いがあるんですよ』
『なんですか?』
『出来ればでいいんですけど…。俺、産まれてから彼女が出来たことないんです。だから、ちょっとの間だけで良いので、彼女になって頂けたらなぁ〜って思いまして…』
『えっ…?』

私は、突然の申し出に驚きましたが、彼の気持ちが上向きになればと思い、散歩する時だけを条件にそのお願いを受けることにしました
すると、彼は本当に嬉しそうに笑っていました

『ありがとうございます! で、もう1つお願いがあるですけど、良いですか?』
『何?』
『あの。一応、カップルという設定なので、下の名前とかで呼びたいんですけど…。ダメですか?』
『う〜ん…。別に良いですけど』
『本当ですか!? ありがとうございます! じゃ、じゃあ! マイさんって呼んで良いですか?』
『うん。良いわよ。恥ずかしいけどね。じゃあ、私はシュンさんと呼びますね』
『は、はい…!』

恋人ゴッコのつもりで軽く呼びあったのだけど、意外と恥ずかしく、互いに照れてしまう

『き、緊張してるんですか?』
『は、はい…』
『緊張してたらカップルになれないじゃないですか…』
『で、ですけど…』
『ま、まぁ、時間を掛けて慣れていきましょう』

それから、私達は自分の緊張をほぐすように会話をしながら、庭を散歩を楽しみました

後日
私が簡単な事務作業をしていると、看護長からの呼び出しを受けました

『何ですか? イイヅカさん』
『実は、アナタに話しておかないといけない事があってね』

看護長の真剣な雰囲気に緊張が高まる

『……』
『アナタが担当しているヤマグチさん、なんだけど…。ガンの進行が思いのほか、早いらしいの』
『えっ…。それって、まさか…』
『うん…』
『そう、ですか…』
『まぁ、辛いと思うけど、こればかりは仕方ないことだから。心の準備はしておきなさい』
『はい…』

看護長は私の背中を優しく撫でて、仕事に戻っていきました

その時の私は、今までに経験した事のない、心の痛みを感じたのです
それは、チクリとした簡単に忘れるような痛みでしたが、何故か、いつまでも覚えていました

その日の夜
当直だった私は、壁に備え付けられた床近くの電灯がぼんやりと灯る廊下を、見回りの為に歩いていました
すると、どこからか人のすすり泣く音が聞こえてきたのです

『な、なに…? もしかして幽霊…』

怯えながら周りを見ましたが、それらしい気配はなく、感じるのは病院特有の雰囲気だけでした

『うぅ…。早く見て回ろう』

私は歩くスピードを上げて、足早に病室を見て回りました
すると、ある病室の前を通った時、その泣き声が一番大きくなっていることに気づきました

『ここは、もしかして…』

そこはヤマグチさんの病室でした

私は病室をゆっくりと開けました
すると、ベッドに腰かけて、泣くのを我慢しようとしながら涙を流しているヤマグチさんがいました

きっと、末期ガンという現実にとても耐えられなかったのでしょう

私は彼に気づかれないように、ゆっくりと扉を閉めた

翌日
朝の検診へヤマグチさんの病室へ行くと、彼は昨日、泣いていたと思えないぐらいの笑顔を挨拶をしてくれました
私はそれに驚きながらも笑顔で返し、検診を終えてから彼と一緒に病院の庭へと出掛けました
散歩の間、彼とたくさんの言葉を交わしましたが、私にはどうしてもそれが寂しく感じました

それからの散歩の時間は、その時だけ恋人のフリをする日々が続きました

そんな、ある日
彼と散歩をしている時です

『マツシタさん。今日も楽しかったです。ありがとうございます』
『こんなことで良ければ、喜んで』
『それで、あの…。もう1つ、お願いを聞いてもらえませんか?』
『何かしら?』
『プロポーズさせてもらえませんか?』
『えっ…!?』
『もちろん、本当じゃないですよ。形だけですから、お願いを出来ませんか…?』
『……』

その時の私は不思議な気分でした
受け入れられるはずのないと分かっているのに、想いを伝えようとする彼の気持ちと、そんな彼の想いを受け止めてあげたいという感情が私の心の中で混ざりあっていたからです

私はどうするか悩んだ末、彼の申し出を受け入れました
すると、彼はOKを貰えないと思っていたのか、スゴく嬉しそうな顔で喜んでいました

『ありがとうございます!! じゃあ、言葉を考えますからちょっと待っていてくださいね!!』
『うん。待ってます』


しかし、神様は残酷でした
私が彼とそんな約束をしてから3日後
彼の容態が急変し、彼は息を引き取りました

ふと枕元を見ると、そこにはプロポーズの言葉であろう言葉が書かれた紙が置いてありました

そこには、こう書かれていました…

『アナタの優しさは太陽の様で、私を照らしてくれていました。これからも一緒にいてくれませんか?』


看護師をしていると、誰かが死ぬのを見るのは見慣れることです
でも、この時は違いました
それは、何故かは分からない
だけど、冷たくなっていく彼の手を握っていると胸が苦しくなって、辛くなって、涙が流れていました

『私も…私も……』




―――あとがき-----
どうも僕です(⌒〜⌒)

今回は恋愛を書きたいなと思い、この話を書きました
文章は主観で話を進めたつもりなんですが、伝わって頂けたら嬉しいです(^_^)

でも、こんな話が本当にあったら、私なら不思議な気持ちになるでしょうね

次回も読んで頂けたら幸いです(^_^)v

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