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2016年04月24日21:54

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101回目の夢の小料理屋のはなし

「そう言えばさ。」
女将さんの作る、もうこれ以上無いってぐらい美味い出し巻き卵を箸で切りながら、カウンターで一人ボケっと酒を飲むミーちゃんに話しかけてみる。
「何ですか?」
「ミーちゃんの世代って、テレビ見ながら部屋で一人酒なんてやらないの?」
「私は、部屋で一人で飲むってのは無いかなぁ。会話が無いとお酒飲めないタイプなんですよねー。」
ああ、その気持ちはちょっと分からんでも無い。
何故なら、僕もそのタイプだからだ。
だから、毎晩ここで飲んでいる。
どうせなら、女房の顔も眺めてたいし。
「お兄さんが若い頃はどうでした?」
「僕が若い頃?もうそれは、麻布、赤坂、六本木…」
「港区港区に女が居たのかしら?フフフ。」
あら女将さん、声しか笑ってない。
でも、その「キッ」って感じでこっちを見る女将さんの目、好きなんだよね。
アーモンドアイって言うの?
女将さんのどこが好き?って聞かれたら、即座に「目」って答えちゃうぐらい、その目に僕はやられてる。
服を着た状態なら、目が一番好き。

「でも、20年ぐらい前だと、ホントに月曜の夜は街から女の子が居なくなった事があったのよ。テレビのドラマ見るために。」
女将さんが、ちょっと懐かしそうな顔をする。
「鈴木保奈美なんか、ホントに可愛かったんだから。」
「女将さんは、誰かのファンだったりしたんですか?」
「私はW浅野とか憧れたわー。バリバリ仕事しちゃうみたいなカッコよさがあったもの。」
「W浅野って?」
「え、ミーちゃん知らない?浅野ゆう子と…」
「浅野内匠頭だよ。」
「こらっ、赤穂浪士は関係無いでしょ。浅野温子です!」
「でも、浅野温子って言えば、101回目の…ねぇ、そんなのあったねえ。『僕は、死にましぇん!あなだが、すぎだがらー。』」
「どうして途中から韓流スターみたいなカタコトの発音になったの?でもまぁ、あったわよね。101回目のプロポーズ。」
「女将さんは見てた?」
「その頃はもう、テレビどころじゃなくなってたわ、毎日遅くまで仕事ですもん。」

若い頃って、遅くまで働く事に生き甲斐みたいなのを感じてた気がするなぁ、僕も。
今は、出来る限り早く帰りたいと思うようになったけれど。
そらそうさ、早く帰ってこんな風に美味い出し巻き卵を食べる日常って、やっぱり最高だもんさ。

「ところで、最近のテレビって昔ほど面白いって番組がなくなったわよね。」
「あれは、どうしてだろうねぇ。」
「まぁ、私としては、みんなが外で飲んでくれた方が嬉しいけどね。」
そう言ってニッコリ笑う女将さん。

まぁ、あれだな。
テレビがどうなろうが、ここのカウンターはこの先もそれとは無関係なんだろうな。

さて、今日はもう一杯だけ飲んだらやめとこう。
明日からまた、新しい一週間だもんね。
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