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2016年04月20日23:34

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Hamburg Ballet / Young choreographer Program B

2016/4/17日 19:00- Hamburg Opera Stabile

ハンブルクバレエの若手振付家の公演、日曜日ソワレだったBプロの感想です。マチネはいらっしゃらなかったのですが、ソワレではノイマイヤー御大が一列目ど真ん中に!あと、プリンシパルのレスリーも旦那様と仲良く観に来てらっしゃいました。Aプロは2日目だったんですが、Bプロはこの回がプレミアだったからかな。


Alioscha Lenz / GOTTERBOTEN
Dancer: Madoka Sugai, Lennart Radtke, Dale Rhodes, Sasha Riva, Luca Andrea Tessarini

人間の苦悩を描く作品が多い中で(コンテってどうしてもそうなりがちなイメージ)、異色な作品。デヴィッド・リンチのI want you の音楽にのって、昆虫かエイリアンか、、、というようなコスチュームを着たダンサー達が踊る。完全にウケ狙いじゃなく、振付はかっこいい部分もあってコミカルホラーな感じ。うん、ちょっとオシャレな特撮映画のワンシーンみたいだった。


Florian Pohl / I GIORNI
Dancer: Florencia Chinellato, Greta Jorgens, Yun-Su Park, Florian Pohl, Lizhong Wang

Florianはものすごく背が高くてがっちりした体型なのに、ロマンチストなんだなぁと微笑ましくなるような正統派ネオクラシックな作品。個性は少ないかな。


Christopher Evans / SOUL SKETCH
Dancer: Yaiza Coll, Miliana Vracaric, Nicolas Glasmann

ちょっと疲れちゃってこの作品の細部は余り記憶に残っていない。ただ、Yaizaの舞台上での存在感が凄いのが印象的。彼女はこのバレエ団の女性ダンサーとしては珍しく、人外な感じやディープな狂気が似合う。演技力の点では女サーシャみたいだ。


Kristina Borbelyova / ORATIO
Dancer: Yun-Su Park, Luca Andrea Tessarini, Lizhong Wang

最初にかなり暴力的なダンスが入っていたのに女性の作品だったので驚いた。でも、途中からしっとり苦悩系になってしまい、この手の感じの作品に食傷気味になって集中力が切れ気味に。


Marc Jubete / METAMORPHOSIS
Dancer: Yaiza Coll, Nako Hiraki, Greta Jorgens, Christopher Evans, Marc Jubete, Luca Andrea Tessarini

Marcは今たぶん、ジョンの一番のお気に入り。背が高くて男らしい顔つきで、舞台で役を演じるとなんか存在感があるので、役者として惹かれるのはとても良く分かる。怪我をしてて日本公演に来ていなかったのが残念。
その彼の作品はフィリップ・グラスの音楽を採用。ストーリーは「ピグマリオン(人形愛の方)」みたいに見えた。たくさんダンサー名があるけど実質はYaizaとMarcの2人芝居でピグマリオン役はMarc自身。愛する彼女が、不在中に(あるいは彼の不在をはかなんで)白い粉をかぶって石化してしまう。戻ってきて落胆する彼の後ろで彼女は幽霊のようにすーっと後ずさって壁の前でかたまったように動かなくなる。壁にひいてあったカーテンがすーっと開くとそこには同じように石化した人間たちが・・・。彼も同じように粉をかぶる。途中、冗長だなぁと思ったところもあったがストーリーはなかなか面白かった。ここでもYaizaがその不気味なほど存在感のある演技力を発揮。


Lennart Radtke / M.A.
Dancer: Kristina Borbelyova, Sara Coffield, Winnie Dias, Nako Hiraki, Greta Jorgens,
Maria Tolstunova, Lennart Radtke

M.A.はマリーアントワネットのこと。これも全体の中ではかなり異色な作品で、ダンスというよりは芝居の範疇か。セリフは録音、アントワネット本人と彼女の本音を2人のダンサーが別々に演じる。衣装やセットはロココ調で、他の作品が舞台装置がシンプルだったなか、これが一番小物をたくさん使っていた。宮廷生活を窮屈に感じるアントワネットの前にフェルゼンらしき人が現れる。アントワネットは逡巡した末に、とうとうきゅうくつなコルセット付ドレスから解放され、身軽な衣装で彼と踊るが、最後は膝をついて上半身を倒して首を前に差し出し、断頭台行きになることを表現する。
ストーリーは意外にシリアスだが表現法がメルヘンチックでジョンの好みではないかもしれない。でも、もう少し長く肉付けしたらなかなか面白い物語バレエになるのでは、とも。しかし、Radtke君、こんなに少女趣味だったとは。可愛い!


Luca Andrea Tessarini / AETHER
Dancer: Patricia Friza, Xue Lin, Christopher Evans, Marc Jubete, Aleix Martinez,
Sasha Riva, Luca Andrea Tessarini

この作品、一番今っぽいコンテだと思った。Lucaはコールドのダンサーだけど、本人の踊りの質も創る作品も、ノイマイヤーの枠を軽く超えている。良し悪しの問題ではなく、単に事実として、このバレエ団におさまっていない。すごい器のダンサーだと、この公演で初めて思い知った。彼は円加ちゃんと同じくユースバレエの出身でもある。
作品について。ステージ中央後方に文章が書いてある正方形の黒板(緑色の)がある。ダンサーは黒板の裏から登場、文字をなぞる人もいれば、それと同時に前で踊る人もいる。防毒マスクを思わせる黒いマスクをつけた3人のダンサーも現れて黒板の横で踊る。動きもテーマも、ものすごくコンセプチュアルでかつ個性的。完全に理解できたわけではないけど。
Lucaのダンスは凄い。強いバネが入っているような動きで、野獣のようなしなやかさ。彼はもはやバレエダンサーではなく、コンテンポラリーのダンサーだと思う。ノイマイヤー作品ではこの人の本当の良さは活きないだろうな。と思ったら、4/19に発表された来シーズンのダンサーのリストになかった。移籍して、世界的なダンサーになって活躍してほしい。


Konstantin Tselikov / SOLO FUR ZWEI
Dancer: Madoka Sugai, Alexander Trush

円加ちゃんとプリンシパルのトルシュ、二人のSolo for two。椅子が左右に2つあって、二人は椅子を使って、また時に相手と絡みながらパワフルに踊る。イメージ的には、ロビンスとか、バリシニコフが得意にしてたような感じで、ハードに踊りまくるんだけどとっても洒落てる作品。Konstantinの踊りや演技もそんな感じなので、本人のイメージそのまま。とっても完成度高くて好き!彼本人が踊ってもいいだろうなあーと思った。
しかし円加ちゃんはこういうのを踊らせたらもう天下一品である。キレッキレだし、ゴムまりみたい!うまい!プリンシパルのトルシュもよかったけど、彼を食う存在感であった。


Aleix Martinez / KLEINES REQUIEM
Dancer: Patricia Friza, Yun-Su Park, Madoka Sugai, Nicolas Glasmann, Marc Jubete,
Marcelino Libao, Lennart Radtke, Sasha Riva

天上から逆さに吊るされたマネキン、その下に棺を思わせるような台。静→動→静の構成。静は死んだ女性の魂が感じていることなのか。動の部分は一般群衆思わせる衣装を着た人々が狂乱的に踊る。想像するに弔いの場にいる薄情な人間達か?静の部分は今一つ完成度が低いなーと思ったが、動の部分は振付も音楽も個性的で面白かった。

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Bプロはサーシャとシルヴィアもいなかったしだいぶ疲れてて、途中で記憶があいまいなところも。でもA・Bプロ合わせて17作品、バラエティにも富んでいてとても楽しかったです。

舞台のセットについて追記しておくと、道具は全くないか、あってもごくわずか(時間的に転換できないというのもあるんだと思う)。代わりに、舞台の客席側を除く3方の壁の内側1mくらいのところにかけられている自由に引ける黒いカーテンをみんな上手に使っていました。ある時は扉になったり。

今回のこの作品の中からいくつかをジョンが選んで、7月の恒例バレエ週間の、バレエ団の本公演のお休みのとき(いつもはゲストカンパニーが来る)にオペラ劇場で上演するのだそうです。おかげで、若手のモチベーションは非常に高まったそう。ただ、これらの作品をそのままオペラ劇場でやるのはちょっと難しいだろうな。会場の規模が違い過ぎる。いろいろ手直しが必要そうです。

さて、今回の公演をオーガナイズしたのはコールドで自身も作品を発表したBraulio Alvarez。スポンサー探しなども自分でやったそう。どうやら希望があれば音楽や衣装や装置の件も手伝ったらしく、忙しいときはお昼ごはんも食べられないほどだったとか(彼、日本好きで日本語堪能なので、マチネの後で会ったときにいろいろ話してくれました)。その彼への感謝と称賛の意味で、各回の公演の最後は必ず、出演者と観客から温かい拍手が。とてもいい雰囲気だったな!ブラウリオ君、お疲れ様でした!
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