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2016年04月19日21:10

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Hamburg ballet / Othello ハンブルクバレエ オテロ

2016/4/16土 ハンブルク州立歌劇場

Music: Arvo Pärt, Alfred Schnittke, Naná Vasconcelos et al.
Choreography, Staging, Set, Costumes: John Neumeier

Ballet by John Neumeier after William Shakespeare
Othello: Jung,
Desdemona: Bouchet
Jago: Riabko,
Emilia: Heylmann
Cassio: Trush,
Brabantio: Alvarez,
Bianca: Park,
The Wilde Warrior: Wang
La Primavera: Mazon – Lin, Tselikova
5 Soldiers (Dancers of the Moresca): Stuhrmann, Evans, Martínez, Tselikov, Worrell

Conductor: Garrett Keast
Violin: Konradin Seitzer, Joanna Kamenarska
Piano: Richard Hoynes
Hamburg Symphony Orchestra

ノイマイヤー作品は大小合わせて35作品ほどライブで観てきましたが、オテロはその中でも5本の指に入るお気に入り。かなりダークなものですが、そういう痛いものが好きな性質なもので。

ストーリーはシェイクスピアのオテロですが、タイトルロールよりも目立ち、ストーリーを引っ張る役がイアーゴ。狂気、嫉妬、憎悪、怒り、侮蔑など複雑に絡み合う感情を持つキャラクターで、演じる人によってかなり解釈の幅があり、ストーリーさえ変わって見える存在。対してオテロは主役ではありますが、イアーゴの受けに回り、悲劇の王子の役割とでもいったところでしょうか。

ハンブルクバレエの男性ダンサーにとってイアーゴは憧れの役なんだそうです。確かになあ、あそこのダンサーは王子をやりたいという人は少なそう。一癖もふた癖もある役の方がやりがいあるだろうなあ。

さて、今回は大好きなサーシャがイアーゴにキャスティングされているということで、2泊4日の弾丸でハンブルクに行ってきました。昨年の1月にハンブルクで初めてサーシャのイアーゴを観て、しばらく現実復帰できないほどの強い衝撃を受けまして、これはまた観ておかないと…と、強く思ったのです。

今のところ、私が観たことのあるイアーゴはオットー(ブベニチェク)とサーシャだけ。二人を比べると、サーシャのイアーゴは哀しい人物に見えるなあと思います。

オテロの愛情を受けたいのに、オテロはデズデモーナやカッシオに気を取られて自分の方を向いてくれない。可愛さあまって憎さ百倍、それなら彼らとの絆を全部壊してやる…!それで知力の限りを尽くしてオテロを操っていく。最後はデズデモーナの死骸を見て高笑いするのですが、その笑いが寒々しい。本当にあなたが望んだことはそれなの?と、イアーゴに対して恐さよりも痛々しさの方を強く感じるのは、サーシャが演じる役に常につきまとう絶望的な孤独感ゆえだと思います。その孤独感こそが、私が彼に惹かれてやまない理由のひとつなのですが。

そうそう、イアーゴの見せ場として、兵士達を従えて女装で踊るシーンがあります。仮面をかぶって女装して登場するので初めて観るときはイアーゴと分からないんですが。そのシーンのサーシャの動きがまあ色っぽくて美しくて。彼、ここ何年かで筋肉ががっしりついて男っぽい体型になったように見えますが、元来中性的な人なんだよなあ。

さて、イアーゴだけだなく登場人物としてはタイトルロールのオテロ、そしてデズデモーナももちろん重要。この日はカーステン・ユングとエレーヌ・ブシェという私生活上でもパートナーの二人。カーステンのオテロも前に観たときからかなり進化し、深みのある渋いオテロですばらしくよかったです。エレーヌのデズデモーナは絶品。育ちのいいお嬢様が異国の野蛮な国の軍人のセックスアピールに負けて恋に落ち、いつしかそれが真剣な愛に変わる様がわかりやすい。ただエレーヌのデズデモーナはアンナ・ラウデールのそれほど、オテロに殺されることに納得はしていないように見えました。だからこそ、彼女を殺してしまったあとのオテロの嘆きが余計に胸に響きます。

ダンサーの話が先にたってしまいましたが、この作品は全体の構造や演出も本当によく出来ているなあと思います。セットは、リリオムのように舞台真ん中後方にオケの乗るステージが置いてあります。そこには布がかけられていて、下のスペースはオテロとデズデモーナの寝所、オケのスペースは船上になったりも。また、最初はオテロの出自であるムーア人のイメージが音楽でも表現され、前方の壁には民族的なタペストリーなどがかかっている。

話が進んでいくとともに少しずつそれらの舞台セットがなくなっていきます。ストーリーも、最初の内は状況説明が多かったのが、どんどん登場人物の心理描写に集中していく。そして最後はオケの乗ってるステージの骨組みだけが残るのです。このあたりの舞台装置とストーリーの表現の巧みさ、まさにノイマイヤーの真骨頂!

というわけで、本当に満足度の高い公演でした!観客の拍手やブラボーも大きくて、演じていたダンサー達もとても嬉しそうでした♪

オテロは今シーズンはこの日が最初で、このあと5月にかけて何回か上演があります。イアーゴのもう一つのキャストはイヴァン・ウルバン。5月は彼と、もう一度サーシャのイアーゴを観るために、また弾丸する予定です。どんだけ好きなんだか(^.^;

最後に、これまでのオテロの感想へのリンクを。
オットーのイアーゴ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1929172681&owner_id=2438654
サーシャのイアーゴ http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1937604906&owner_id=2438654

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