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2016年04月04日23:11

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転機

去る3月9日、もうそろそろ危ないと言われていた子守猫「2号」が死んだ。



8日・9日は休みだったので、7日はフラフラになった件の2号を看ていた。
いつもは長男と一緒に2階で寝るのだが、もう、階段を上がれない。
長男はリビングのフローリングに布団を敷いて寝た。

2号はあちらにフラフラこちらにフラフラしながら、辛い体をあちこちに持って行く。
玄関に置いてあるトイレに行ってはトイレの砂の上でグターっとなっていた。

夜中の3時頃、玄関の段差を登った所で肩で息をしている2号を、長男の枕元に連れて行って、私もその日は寝た。

8日は長男は仕事だったが、私は休み。近所の獣医師「ダクタリ動物病院」に日帰り入院し、静脈に点滴で栄養を入れてもらった。夕方帰る時、獣医師に「ずっと歩き回っていましたよ」と言われ、元気になったのだと胸をなで下ろした。


その少し前の昼過ぎ頃、大学近くに部屋を借りている娘1号から電話があった。
娘1号:「おっかあ〜、ものすごちっさい猫が道路に出て来てんねん」
母:「ふ〜ん・・・・・・・・・・・・ほんで?」
娘1号:「道路に向かって歩きよんねん。車の通りが多いから轢かれてしまいそうや」
母:「ほう・・・・ほんで?」
娘1号:「どうしたら良い?」
母:「・・・・・どうしたいん?」

・・・・・・・・・拾ったようだ。

片手に乗る大きさの黒猫。多分生後1ヶ月弱。目やにが沢山付いていてくしゃみしてるらしい。・・・・・その日は雨。ジャジャ降り。

・・・・・死ぬな・・・・・

私は小さい頃から子犬や子猫を拾っては母に叱られ、拾っては飼い主を探し・・・を繰り返す子だったので、雨の日に濡れてしまった病気持ちの子猫がどんな事になるかはだいたい想像できた。

そして娘に兎に角水気を拭き取って保温。そしてお尻をふきふきして排泄物を出せ。出たら元気になるかも知れん。その後は段ボール箱に入れて保温しながら、すぐに獣医さんに見せろ。と指示。

娘1号は里親を探すと言った。



家では子守猫2号が息も絶え絶えにトイレを目指す。ちゃんと立てなくて平泳ぎをするように動く。
「ああ、トイレに行きたいんやね〜よしよし」と言いつつ抱いてトイレに連れて行く事数回。

仕事から帰った長男は2号の姿を見て「ちょっとペットシーツ買って来るわ」と、買い物に出かけた。ペットシーツと共に大量のピンクのタオルやバスタオルを抱えて帰ってきた。

何枚か値札を外し、ペットシーツと一緒に段ボール箱に敷いて、2号を寝かせた。
多分午後9時過ぎ頃。子守猫2号は少し落ち着きを取り戻したように見えた。
そして、また長男の枕元に、今日は段ボールごと寝かせた。

午後10時頃、様子をうかがった長男が「おばちゃん、2号息してる?」と言った。
子守猫2号は、子守をしていた長男の枕元で息を引き取った。


娘1号、娘2号、次男と、お世話になった獣医さんに、2号の死を伝える。
2号の遺体が葬儀まで腐らないように、氷を買いに行く。
夜中に娘1号を迎えに行くと、小さめの布袋を持っている。
獣医さんに連れて行ったりを手伝ってくれた友人にお礼を言い、彼女を送り、黒猫と共に帰宅。

皆で泣いた。

次の日は以前から頼んでいた「LPガス→都市ガス」の工事。
朝から夕方まで家の中は工事の業者の人達が出入りしていた。

やっと工事が終わり、夕方6時頃、父ちゃんと娘2号は仕事が抜けられなかったが、家族みんなで近所の「稲荷山動物霊園」で2号を見送った。
カリカリや煮干しやサーモンの刺身を段ボールの棺に入れ、先に逝った1号にも分けてやれよと言いつつ骨を拾ってみんなで又泣いた。


次の日の朝方、寝ていた私の耳元で子猫の声がした。拾ってきた猫よりもうちょっと大きい子の声が左右に代わる代わる聞こえた。
猫アレルギーの私の寝室は猫入室禁止の筈なのに!
飛び起きて辺りを見回しても何も居ない。

幽霊関係は全く見えないけど、よく夢枕に立たれる人な私は、階下の子猫が死んだのではないかと思い、子猫を見に降りると、スヤスヤ寝ている。

ああ、2号が1号と一緒に挨拶に来たのか・・・・・。そういえば1号2号がうちに来た時ぐらいの大きさの声だった。

午前4時26分だった。



今年大学卒業予定の娘2号の仕事が決まらない。彼女は無名の大学だけど、そこそこの成績で、テキパキした性格なのだが、何故か決まらない。
ずいぶん相談も聞いたが、結果、賢そうに見える外見が邪魔してるのではないかという事になっていた。
気が強い、ハキハキと受け答えする様は、彼女が目指した事務職としては敬遠されただろう。
人前に出ると緊張するのも災いしたかもしれない。面接でトンチンカンな答えを言ってしまったと何度も聞いた。



あまりにも就職活動がうまく行かず、投げやりになってブラブラしていたので、時間は十分有る。
猫の子育てが始まった。

最初、子猫は殆ど動かなかった。
潰れたような声で、か細すぎて聞こえないぐらい。
目は目やにで殆ど開かない。
餌は自分で食べられない。
水も自分で飲めない。

病猫が居た為に、家にあった小さなシリンジ(注射器)で水を含ませ、無理矢理口を開けさせて、水でふやかした餌と薬をなんとかねじ込む。そして定時に目薬と鼻薬をさす。
子猫は精一杯抵抗しながらくしゃみでそれらを吹き飛ばす。

・・・・・を4時間置きに繰り返す。

最初の2日間、おしっこは出るけどウンコが出ないと心配していたが、出た!
「おお!ウンコちゃん出たで〜〜〜〜!」喜びもつかの間、次の日の朝、袋の中で下痢ウンコまみれになっていた・・・・・
そしてそのちっさい黒猫は我が家で「ウンコちゃん」と呼ばれる事になった。

娘1号は獣医さんに通いながら、あちこち里親を探していた。
保護猫専門の猫カフェに電話したり、友達に電話してみたり・・・・
なかなか見つからなかったが、その中から「欲しい」という人が現れた。
近所の幼馴染みのお母さんの友達の友達の旦那さんという事だった。

拾ってから10日ほどして、やっと目やにでひっついた目がパッチリと開き、ちょっと可愛いネズミみたいになった。

日を合わせてお見合いに行った。
欲しいという人のご自宅は私の職場の近所だった。
旦那さんは優しそうなおっちゃんだった。
ただ、4月の10日ぐらい迄待ってほしいという事だった。
話はとんとん拍子に決まった。


すごい!ちゃんと里親探して来よった・・・・・。娘1号、お前スゴイよ・・・・・。

そしてウンコちゃんは幸運を持ってきたのか、娘に大学職員の仕事のオファーが来て、とんとん拍子に就職が決まった。

それと前後して娘1号は晴れ着を着て卒業する事となった。




話は変わって・・・・・
次男はお父ちゃんと気が合わず、小さい頃からボンクラ呼ばわりされ、大学を休学していた時に家をたたき出され、今はお祖母ちゃんちに住んでいる。

確かに気が回らない事は目に付くが、次男は一番お父ちゃんと性格が似ていた。
お父ちゃんは自分の嫌な部分を見るようでイライラしたのだろう。
気が合わない親子は大変だ。

経済的な事情で休学し、元来の「書類仕事が苦手」を発動して様々な失敗をして大学に6年在籍していた。

私は次男に大学をちゃんと卒業して欲しいと思い、私名義で学資ローンを借りて後押ししていたが、次男は一向に働かない。

心が躓いたのだろう。と待っていたが、そろそろ私の体も限界が来ている。

お祖母ちゃんちでぐずぐずしている次男を見ると、もう良い歳なのに、私が彼の芽を摘んでいるのかも知れないと思うようになっていた。



3月の20日頃、次男に「もうおっかあは限界や。君は自分の食べる分は自分で働いて稼がなあかん。もう働いてくれ」と引導を渡した。




若い頃、大学に行きたかった。
当時、父親に、女の子に学はいらんと言われていた。
女の子の4年生大学への進学率は、物凄く低かった。
私は獣医になりたかった。

生家は貧乏で、高校受験の時、受験料が惜しくて私立を受験する事を控える程だった。
高校では「勉強しても、どうせ大学へなんか行けない」と思うと、切なかった。

結婚して子供を産んだ後、生活が苦しくて職を探したけど、高卒では職が無かった。
無情に書かれている「短大卒以上」が私に何度も鉄槌を下した。


子供達にそんな思いはして欲しくなかった。
そして産んだ子供は全員大学生になった!

必死で働いた。
子供達は奨学金という名の借金をした。
次男は書類仕事が苦手で、奨学金を逃した。
借金が死ぬより嫌いなお父ちゃんに代わって私が学資ローンを借りた。

ローンはもう私の年収を越えてしまった。


ふと思う。私の妄執で子供達に物凄い借金を負わせてしまったのかも知れない




娘1号を見た。

情をかけて拾って救って育てた猫に、ちゃんと里親を探して渡そうとしてる。

翻って自分を見た。
意地を張って、周りに迷惑をかけているのではないかと思った。

あいつ、スゴイわ。我を通す事を良しとせず、ちゃんと自分の足下を見て苦しい決断をしている。


そして、次男と一緒に大学へ行った。

退学届を出した。

「先生、この子は書類仕事が苦手なので、次回の奨学金の手続きを手伝ってやってください」という言葉を、何度も、何度も飲み込んだ。
ここで他人をアテにしたら、次男は「そんなものか」と思ってしまうだろう。
私は絶対に先に死ぬ。
次男はこれから一人でやらなければならないのだ。



帰る車の中で、次男に、私に力が足りなかった事を詫び、心機一転これからがあんたの人生やで!とエールを送る。

社会に出る一歩が大学中退で、さぞ心細いだろう。
でも、お母ちゃんも妹も、ちゃんとあんたの良い心ばえを知っている。

あんたはこの社会に絶対必要な人だという事を肝に銘じて、行きなさい。






そして、毎日、毎日が過ぎて行くのだ。


























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