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2016年03月28日00:20

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【読んだ本メモ】小宮正安『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』(集英社新書ヴィジュアル版)

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タイトルのヴンダーカンマーってなんやねん?
といいますと、ドイツ語で「驚異の部屋」を意味する言葉です。

15〜18世紀ごろのヨーロッパで、貴族の書斎や文物を収集したり研究室のように使われていた部屋が進化したもので、あらゆるお宝珍品が大量に集められたことをいいます。
拾った画像だけども、こんなイメージ図。
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すっげえワクワクするんですよ。
一部チラッとだけ上げると、例えばこんな感じのもの。
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骨董品ともジャンク品とも言えないようなものがたくさん出てきました。
動物の剥製とか、サンゴや象牙の加工品とか、意味不明の置き物とか、蝋細工、マジもんの人体模型というか人体細工。

歴史の流れに合わせてヴンダーカンマーの変遷を辿っています。

最初は主に教会の聖遺物が集められていたのだけど、技術の発展とともい航路が広がって新しい世界に出て行くようになって、ヨーロッパの外の世界のものがたくさん集まってくる。
中国の陶磁器や日本の和傘・漆器もあるそうだ。
自分の趣味でヘンテコなものを集めていた閉じた空間から、人に見せるための部屋になっていったのだそうだ。
バロック期の王様はことさら権勢を誇示する必要があったから、金をかけて凝ったものを集めまくったんだね。

やがては王侯貴族だけでなく、民間の研究者の手でも開かれるようになっていく。
こっちは研究のための収集という面が強かったわけだけども。
宗教絡みだとカトリックは権威の誇示で、プロテスタントは教育目的で集めていたりして、ひとくくりにヴンダーカンマーといっても時代と蒐集者の立場によって内容がガラッと変わってくる。

万物を集めようとしていたヴンダーカンマーだったけど、科学技術の発展が進んでひとつの部屋や建物になにもかも収めることはできなくなる。
技術がどんどん細分化・専門化されていって、ヴンダーカンマーの存在意義が時代にそぐわなくなり、やがて廃れていった。

一部のヴンダーカンマーはやがて博物館の前身となり、学問上は大きな意義を持つことになったのでした。
でも、多くは解体されたり、集めていたものもゴミのようなものが多かったから捨てられたり。
有名なところ以外のヴンダーカンマーはなくなっちゃった。

と思ったら、近年、ヨーロッパの旧共産圏の国々では、融通のきかない官僚主義や仕事の遅さが幸いして、撤去を免れたヴンダーカンマーが見つかったりしたのだという。
仕事しなくてよかったんだ!!
断捨離しなくてよかったねえ!!


空想上の生き物のミイラのような、デタラメなものが堂々と展示してあるのがよい。
魚のイッカクの角?を獣の剥製かなんかの頭部にくっつけて「一角獣ゲットー!!」みたいなことをやっている。
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バジリスクや竜のミイラとか。
オモロいからええやんけ!精神があるのが良い。

また、初期のヴンダーカンマーには「世界のすべてを知り尽くしてやろう!」という情熱が感じられる。
だんだんと集めることが目的になってしまったバロック期は豪華だけども集めることがメインになっちゃったぶん、装飾過剰なものが目立ちます。



この本を読んだ一番の感想は「金持ちになりてえ、ヴンダーカンマー持ちてえ」ですね。

全体的に面白いんですけど、惜しむらくは、新書サイズだから載っている写真が全部小さいことだね。
細かいとこが見たいのに……


ヴンダーカンマーという単語自体を知ったのは、このまんがだったんですよね。
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ナチス・ドイツのトンデモ秘密兵器開発部隊が出てくる。
クトゥルフネタも入ってるオカルトヘンテコギャグまんがです。
実家に置いてきちゃったから長らく読んでないけど、面白いですよ!
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コメント

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