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2016年03月19日20:15

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ハンブルクバレエ来日公演 リリオム

ハンブルクバレエ来日公演の感想、最後はリリオム(公演順とは逆ですが)。

2016/3/4金 18:30-
2016/3/5土 14:00-
2016/3/6日 14:00-

原作:フェレンツ・モルナール
音楽:ミシェル・ルグラン
振付・衣裳・照明:ジョン・ノイマイヤー
装置:フェルディナンド・ヴェゲルバウアー
指揮:ジュール・バックリー
演奏:北ドイツ放送協会ビッグバンド、および録音音源

東京文化会館

リリオム:カーステン・ユング
ジュリー:アリーナ・コジョカル(ゲスト・ダンサー)
ルイス:アレッシュ・マルティネス
風船を持った男:サシャ・リーヴァ
マダム・ムシュカート:アンナ・ラウデール
マリー:レスリー・ヘイルマン(3/4, 3/6)、カロリーナ・アグエロ(3/5)
ウルフ:コンスタンティン・ツェリコフ(3/4, 3/6)、レナート・ラドケ(3/5)
フィスカー:ダリオ・フランコーニ
水兵:キーラン・ウェスト
天国の門番:エドウィン・レヴァツォフ(3/4, 3/6)、イヴァン・ウルバン(3/5)
内気な青年:アリオシャ・レンツ
悲しいピエロ:ロイド・リギンズ
エルマー:エマニュエル・アムシャステギ
幼少時のルイス:ヨゼフ・マルキーニ(3/4, 3/6)、ガブリエル・アラン(3/5)

ハンブルクバレエ、来日公演の幕開けはリリオムでした。この作品、初演以来何度か観ているのですが、後になればなるほど印象がよくなる。自分の慣れもあるとは思いますが、演じるダンサー達が自分の役を把握することで、話の輪郭がよりくっきりしてくる効果も大きいのじゃないかなーと思います。とはいえ、以前も少し書きましたが、個人的にはノイマイヤー作品の中でそれほど好きなものではないことには変わりありません。(気に入られた方、すみません!私はジョンの作品では「苦悩する男」のモチーフが好きなもので。単に好みの問題であり、作品としての完成度はとても高いと思います^^;)

今回日本で3連続でリリオムを観て改めて思ったのは、この作品の一番の主役はミシェル・ルグランの音楽だな、ということです。さすがメロディメーカーのルグラン、2日連続で観たあたりから、重要な場面の音楽が頭の中でぐるぐる回るようになっちゃって。あの愛のテーマも素敵ですけど、失業者の群舞のところも超印象的。

ジョンもそのことを分かってるのでしょう、あえて人をあまり動かさずに音楽が活きる振付にしているところもたくさんありました。私はこの作品、バレエというよりは芝居に近いと思うんですよねー。ジュリーの動きも踊りというよりもはやmovementという感じで、初めて観たときはあんなに踊れるコジョカルを使ってるのにもったいない!と思ったものですが、あの音楽にはこれがあっているのかもと今は思います。

さて、そのコジョカル。日本には彼女のファンがたくさんいることを知ってるし、かつ、私もかつては彼女の大ファンだったのですが・・・。ノイマイヤーの作品を踊っているコジョカルは、実は私の中ではこれまで全くしっくりこないことが多かったのです。初めてリリオムを観たときも、アシュトンやマクミランを踊ってるそのままの感じで振りだけが違うという印象だったし。サーシャとの椿姫も全くマルグリットに見えなかったし。ロミジュリに至っては振りこそ違えどマクミランのときの彼女を移植したみたいな感じで(多少役づくりは違いましたが)。

何でなんだろう、とずーっと思ってて最近少しわかったのが、彼女、ステップとかポーズとかが余りに正確で、それはいいことなんだけど、キャラクターの心情と身体の動きがバラバラに見えるんですよね。真のノイマイヤーダンサーは、正確に振付を踊りながらもそれが「振り」ではなく、「演技」に見えるものなんです。ここで脚を開くのは、そう決まっているからではなくて、彼への熱情が脚の動きとして表面化したものなんだ、と観客が自然に思うように踊ってほしいんです。

あと、コジョカルって観客として見ててもとてもガードの固い人だなと感じることが多いです。コボーと踊っているときはとても気持ちの交流を感じるのですが、他の人とだと余りない。孤独で妥協を知らず、頑なな完璧主義者。そうやって身を守ってきたんだろうなと思っておりました。

日本公演のリリオムの初日も、こういうところが目に付いて「あーあ」と思ったのですが、2日目の後半からのコジョカルは、今までと違っていました。多少バランスがぶれても、気持ちが途切れずに手足から伝わってくる。そうそうこれよこれ!!(←何様モードすみません) カーステンとの気持ちの交流もとてもあったように思ったし。初めて、役が降りてきた彼女を見た気がしました。おかげで、2日目後半と、それから3日目のリリオムは、ステージとして素晴らしかったです。

ハンブルクバレエを私よりずーっと前から見ている人の話だと、ハンブルクバレエ学校を経ずに移籍してきた人がノイマイヤーダンサーになるには5年くらいかかるんだそうです。確かに言われてみれば、今はあのバレエ団を代表する女性プリンシパルの一人であるエレーヌも、私が初めてハンブルクに行った頃(2009年)は全然今と違いました。コジョカルも2011年シーズンからのゲストのはずなので、やっとジョンの言語に慣れてきたということなのかも。ガラでのマルグリットもとてもよかったし、彼女のあのバレエ団での真価はこれから発揮されるのかな。来年もゲストダンサーを続けるのかしら・・・?

さて、他のダンサーで印象に残ったのは、ロイド(・リギンス)。このsad clownという役、今まではコールドのダンサーがやってるのしか観たことなかったんですが、ロイドがやると意味ありげで印象的な役になりますなー。流石です!ロイドは今回の日本公演、真夏の中日以外はすべてダンサーとしてステージに上がって踊りまくっていました。彼はもう46才、プリンシパルに名前はありますが、踊り中心の主役をやることはハンブルクでは今はあまりありません。貴重なものを日本で見せてもらって感謝です!ロイドのきれいでリズム感いい踊りも、こじゃれた演技も、きれいなお顔も、そしてファンに対する温かいサービスっぷりも、本当に大好き!!

NDRビッグバンドの演奏も、素晴らしかったですね。本当は、ステージ上のバンドとピット内のオケが生で共演する様が面白いのですが、録音音源でも音楽の二面性は十分楽しめたと思います。あのバンドのサックスの方が、後日、都内のライブハウスでの公演の最中に突然亡くなったというニュースにはびっくりしました。。。素敵な演奏へのお礼と、心からのご冥福をお祈りします。

さて、ハンブルクバレエの日本公演についての感想はこれで全部終わり。初日はちょっと淋しかった座席も、日が経つにつれて埋まってきて、また、観客の熱狂度も終盤に向けて上がっていったように思いました。ネット上で、コアなファンでない方でも絶賛してくださっているのを見て、涙が出るほど嬉しかったです。ジョンも、出待ちの人気にご機嫌だったし、任期中にもう一度来てくれるという話になるのではないかしら。。。と期待しつつ。
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