mixiユーザー(id:5347088)

2016年03月14日08:21

40 view

夢の小料理屋のはなし 97

最近、小料理屋の二階で寝る事が増えた。
飲んで気持ちよくなっちゃうと、もうそこで寝たくなっちゃうんだよね。
それを察してなのか、この頃布団が二枚敷いてある事が多い。
そう、女将さんも、ここで寝ているのだ。
一応シャワーなんかもあるので、きちんと清潔な身なりになって寝る事が出来るのと、広いところで朝ごはんが食べられると言うメリットがあったりする。
女将さんが片付けやら何やらを終えて、床につくのは大体夜中の2時前。
僕も、よっぽど疲れていない限りはその時間まで起きているようにしている。

そんな時間まで働いて「さあ、寝よう」って時にさ、「おやすみ」って言っても返事が返って来ないなんて、寂しいだろうなと思ってさ。
おやすみを言った後に、もぞもぞっと女将さんの布団の中に左手を入れて右手を捕まえるのは、日課になってる気はする。
意外と手が冷たいんだよ、女将さん。
でさ、握ってるとそのうち温かくなるんだけれど、でも、手が温かくなると女将さんすぐ寝ちゃう。
お店に居る女将さんって、こうシャキッとしていていかにも「いい女」って感じの佇まいだけど、見えないところではそう言う妙に子供っぽいところがあったりするから可愛い。
とりあえず、ここ最近はそんな感じで一日が終わる。

でも、土日以外はどんなことがあっても、女将さんが先に起きて朝ごはんの支度をしている。
「あなたが出て行った後に、二度寝するから良いのよ。」なーんて言ってるけれど、そんなに寝て無いんだろうな、と言う事はなんとなく分かる。

女って、大変だよな。

豆腐とワカメの味噌汁を啜りながら、女将さんの顔を見てみる。
すっぴんでニコニコしながら目刺しを食べるその姿は、どこか愛おしくある。
美味しそうに御飯を食べる女性の姿が嫌いな男は居ない筈だ。
見てると、それだけで元気になる気がする。

朝食を平らげ、歯を磨き、顔を洗う。
少しづつ、外で戦う顔になっていく。
ネクタイを締める頃には、僕もきちんと「部長」みたいな顔になる。

「じゃあ、行ってくるね。」
そう言ってカバンを抱えて表に出るとき、女将さんは必ずハグを求めてくる。
甘い声で僕の耳元で囁いて、そして笑う。
「今日も一日働け!フフフ。」
ああ、頑張って働いて来ますとも。
夜の一杯目のビールの為にも、ね。

やっぱり今日は、朝から天気が良くない。
でも、僕の心は、天気とは関係無く晴れやかだ。
5 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する