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2016年03月05日17:14

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時代のうつりかわりと商法の司法試験問題

時代のうつりかわりと商法の司法試験問題

          弁護士 岡本 哲
司法試験もさまがわりしてしまい、昭和の合格者である筆者の経験はいまではまったく受験対策の意味はなく、歴史記述ということになってしまう。
平成も1桁ころまでは司法試験の論文式試験では手形法・小切手法は14分の1または12分の1の重要性があり、これで7段階評価の最低成績Gをとると不合格間違いなし、となっていた。
6科目または7科目でそのうち1科目の商法は2問出題されるのだが、そのうち1問が必ず手形法・小切手法からの出題だった。現在は論文式試験からは手形法・小切手法は消えている。受験生が勉強しない分野なので合格者と不合格者で差異をつけるいい問題がつくりにくくなっているのだろう。
 会社法分野でも利益状況が変わって、いい問題だったものが、そうでなくなってしまっている例もある。
昭和63年の商法論文式問題は
第1問
甲株式会社の資産総額は200億円であり、甲会社の内規によれば、10億円以上の借入れには取締役会の決議が必要である。甲会社の代表取締役Aが、甲会社の名において乙銀行と次の取引をしたとき、それぞれの取引の効力はどうなるか。
(一) Aは、取締役会の決議を経ることなく、20億円を借り入れた。
(二) Aは、自己の住宅購入資金にあてるため、2億円を借り入れた。
第2問
個人営業を営む甲が、A株式会社代表取締役甲名義で約束手形を振り出した場合、甲の手形法上の責任はどうなるか。A会社が実在する場合と実在しない場合とに分けて論ぜよ。
これを2時間でそれぞれ1000〜2000字くらいの答案を作成して回答する。いまのいままでどんな問題だったか忘れていたので、そんなに苦戦せずに解答したものと思われる。

昭和63年だと定期預金の金利が1割をこえており、土地が値上がりし続けるという土地神話が健在であり、物価もインフレ傾向であった。民事の5パーセント、商事の6ポーセントの遅延損害金は利息としては安いことになる。マイナス金利や住宅ローン金利が2パーセントの平成23年現在とは異なる。
第1問については当時の商法260条違反の効果と、判例の民法93条但し書き類推との効果について判例理論をかいたあと、200億円の資産総額、20億・2億という金額 事業負資金か自己の住宅購入資金かを期待して会社が責任をおうべきかどうかをとわせるものであった。乙銀行側としては契約どおりの利息をとあらないと十分な利益がえられない背景事情があった。
ところが平成28年段階では代表取締役Aに十分資産があるのであれば、契約を無効にして不法行為として法定利息をとったほうがいいことになる。利益状況がかわったうえ、無効にしたほうが乙銀行の救済がはかられるという事態になってしまった。相対無効ではなく絶対無効でいいとなると、条文どおりの解決でいいわけで、解釈論の苦労はなくなってしまう。
 第2問は名義とはなにか偽造とはなにか、無権代理人の責任の類推は可能か、ということで刑事や民事につながる基本的概念とその応用を問ういい問題と思われる。
しかし、文房具屋に手形用紙があたりまえにあった時代ではなくなり、当座勘定取引契約のない一般人が手形を振り出さなくなった。現在では、銀行が認定しているひとが振出人になるだけのことであり、振出人の特定は実務上意味がなくなってしまった。
ときのながれとともに良い問題だったのが、そのままではつかえない問題になってしまった。

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