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2016年02月07日11:49

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東京バレエ団 白鳥の湖 

2016/2/6土 14:00- 東京文化会館

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
改訂振付:ウラジーミル・ブルメイステル
第2幕振付:レフ・イワーノフ、アレクサンドル・ゴールスキー(三羽の白鳥)

オデット/オディール:渡辺理恵
ジークフリート:秋元康臣
ロットバルト:森川茉央
道化:山本達史

指揮: アントン・グリシャニン
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

東京バレエ団がブルメイステル版を初演・新制作したこの公演。NBSのバレエの祭典の中に組み込まれていたので、行って参りました。ファーストキャストではないのですが、最近入団された秋元さんを目当てにこの日を選びました。

ブルメイステル版の白鳥の湖は「演劇的だ」と言われているのをよく見聞きします。昨年5月にダンチェンコバレエ(日本の公演では国立モスクワ音楽劇場バレエとなっていました)が来日したときに初めてこの版を観たのですが、そのときもそして今回も、その意味が分かりませんでした(ダンチェンコバレエの白鳥の感想はこちら→http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1942433047&owner_id=2438654)。

私は「演劇的だ」と言われると、ついつい、物語バレエのように踊りで心情まで表現することを想像してしまうのですが、今思うに、ブルメイステルの「演劇的」はそういうことではなさそうです。むしろ、踊らずにマイム(演技)だけで表現するシーンも多く、踊り中心のバレエに対して所謂演劇の要素を盛り込んだ、と理解した方が私の中ではすっきりしました。個人的にはストーリーも心情も踊りで表現することができることの方が素晴らしい!と思ってしまうので、私の好みとはちょっと外れているのですよね。

なーんてことを真っ先に思ったこの公演でしたが、久々に観た東京バレエ団の古典全幕、ダンサーの皆さん全体的にはよく頑張っているなあ、やっぱりここは底力はあるのだなあ、と思いました。

何よりの収穫は、秋元さん。さすがロシア仕込みでテクニックで突き抜けているのは勿論ですが、演技も上手い。そして舞台上での存在感、堂々感、場数を踏んできた方の余裕やオーラを感じました。主役級をやる場合は、テクニックや演技だけじゃなく、観客へのアピールというか、観客に何を伝えたいか、ということがはっきりしていることがとても大事なんだな、と思います。渡辺さんは美しいし手足も長いし、楚々としていて繊細だし、白鳥に雰囲気はぴったりなのですが、このあたりが弱かった。緊張していたし自分のやることに精一杯で観客を忘れちゃっていましたね・・・。白鳥の湖という作品は、ブルメイステル版であってもやはりオデット/オディールがよくないと作品が力を持ってこないのです。そういう意味では、この公演は私にとってはあまり満足のいくものではありませんでした。

ただ、全体的には東バの皆さんはよくやっていたと思います。コールドもよく揃っていたし。他に特にいいな!と思ったダンサーさんは、まずは道化役の山本さん。ジャンプ力もあるし回転の軸もしっかりしてるけど決して力任せではなくポジションが美しい。音感もgoodだし、演技もよかったし、何より舞台を楽しんでいらっしゃるのが伝わってきました。

もう一人いいと思ったのは、アダージオの河谷さん。彼女、何か人を惹きつけるところがある。今でもノイマイヤー版のロミジュリを怪我降板されたのがつくづく残念です。またああいう機会が巡ってくるといいのですが。

さて。新しい芸監の方針で、東バはクラシックに重点を置いていくのだということがプログラムの中にも書かれていました。クラシックを踊れるテクニックはコンテンポラリーを踊るのにも必要なので分かるのですが。このバレエ団のこれまでが、半分くらいベジャール・バレエ・トウキョウと言っても過言ではないところにあった中で、がっつり古典のバレエ団を目指すことが本当にいいのかな、と疑問に思ってしまいました。今回の公演はなかなかのレベルだったとはいえ、新国のように主役を3キャスト出せるわけではないし(正直この人のオデット/オディールを観たいという人は思いつきません)、コールドまでルックスもテクニックも粒ぞろいというところでは新国には及ばないのが実情。古典もやりながら、ベジャールに代わる彼らの個性というのを見つけてほしい、と切に願うばかりです。

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