少し前、車で中華料理屋に行った。
かなり混んでいた。
駐車場は空き待ちの満車状態だった。
順番を待って車を止めて中に入って…
中で食事をしていると、動揺した店員が片言の日本語で店内の客に何かを聞きまわっていた。
僕にも聞いて来た。
「○×▽◇(車のナンバー)の持ち主ですか?」
僕の車だった。
「そうだけど、何ですか?」
「ちょっと来て…」
…
駐車場に行ってすべてを理解した。
隣の車が店を出ようとしてバンパーを擦ったのだ。
当てた車の運転手が謝って来た。
前の車ならそのまま良しとして放置する程度の傷だったけど、今は買い換えたばかりの新車だ。
当たり前だが直して貰うことにした。
連絡先を貰ったら、保険を使うと言っていた。
保険を使うと言った時点で通報したのだろうと思って、あまり深く考えもせずに豚骨ラーメンとエビチリの待つカウンター席に戻った。
伸びかけたラーメンとエビチリ食べながら次の連絡を待ったが何もない。
少し待ったが、何もない。
色々とおかしい。
電話番号をメモではなく、着信履歴の形で残させて良かったのかも知れない。
不審に思って、食事を終えてからその番号に電話をした。
「警察に届けた?」
「してません。」
どうやら、そのまま自宅に帰ったらしい。
「は?事故証明無いと保険下りないよ。」
「え?はい。今から戻ります。…。」
確かにその場で通報しろと言わなかったけどさ…
なんか、間抜けな展開になってしまった。
主が返ってくるまで20分、警察が来るまで30分も寒い中、駐車場で待ちぼうけだった。
当てた車は歴戦の勇士(傷だらけ)だったから、それくらい知っているだろうわかっているだろうと思って任せたのが失敗だった。
今になって考えれば、それだけの傷を直さずに放置しておく猛者だったとも言えるかも知れない。
確かに、高価な車の割に傷だらけなままで、アンバランスな感じではあった。
結局、相手が現場に返ってくるのを待つ間に僕が通報した。
通報した段階で相手はまだ帰ってきていなかった。
説明の仕方によっては「当て逃げ」にも出来たのかも知れない。
まぁ、でも、良しとした。
大した傷じゃなかったし、一応、連絡先を置いて行ったから弁済の意思は有りと判断した。
そもそも、不要な争いをしてもしょうがない。
たかが擦り傷くらいで事件にしても税金の無駄遣いだ。
いざとなれば連絡先は掴んでいるし…
経験値がモノをいう事態だった。
有り難くない経験値ではあるが…
経験値と言えば、出てきた警察官。
こないだの事故の時と同じ人だった。
僕の車検証を控え忘れて保険屋を困らせた人だった。
聴取を済ませて、そのまま帰りにケーキ屋で苺プリンを買って家に帰った。
翌日、親父は言った。
「もう、苺プリン買ってこなくて良いからな。」
「ん?」
「おいしくなかった。」
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