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2016年01月17日12:59

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イリ&オットー・ブベニチェクによるプレトーク

2016/1/12火 18:30- ティアラこうとう中会議室

東京シティ・バレエ団の「Double Bill―ダブル・ビル―」という公演が1/30土-31日に行われます。プログラムは下記のとおり。

・ウヴェ・ショルツ ベートーベン 交響曲第7番
・イリ・ブベニチェク L'heure bleue(ルール・ブルー) *日本初演
東京シティ・バレエ団のこの公演の公式サイト http://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000009.html

それに伴い、ブベニチェク兄弟(イリ、オットー)の2人によるプレトークが開催されました。一般人も参加可能だったので、大好きなイリとオットーに会うために行って参りました。

当日は芸監の安達さん自らが司会と通訳をつとめてくださいました。会場はこじんまりとした会議室。イリとオットーは時にはプロジェクタでPCの画面を映しながら、日本との関係や今回日本で初演されるルール・ブルーについてを語ってくれました。ダンサー3名が登場して、実際に作品の一部を踊って見せてくれるシーンも!

内容は、日本と自分達とのかかわり、また、この作品ができた背景、また、作品の制作過程やそこでのPCのソフトウェアの役割など。終始、彼らの「伝えたい!」という想いが伝わってくる、とてもフレンドリーで楽しいトークイベントでした。開催してくださり、一般人にも参加の機会を与えてくださった東京シティ・バレエ団に感謝したいです。

L'heure bleueというのは、英語でいうとblue hourのことで、1日に2回ある、昼と夜の境目のことを指すらしいです。昼と夜、始まりと終わりなどの間にあってどちらにでも動く可能性がある瞬間。高貴な女性がふとしたことで恋に落ちる、そういうことが今回上演される作品の背景にあるインスピレーションだ、とのこと。少しだけ見せていただいた踊りを見ても、クラシックとモダンの中間を行くやわらかな、そして見事なまでに音楽に乗っている振付で、とても面白そう。また、シティバレエのダンサーさんも、密に彼らとレッスンを続けている成果なのか、彼の舞踊言語をしっかりマスターしていて、とても期待が持てる公演だと感じました。

振付家としてはイリ・ブベニチェクという名前が前に立っていますが、彼の作品の多くはオットーが衣装や舞台デザインを行っており、彼らは実質二人で一つのユニットとして動いています。彼らは双子ゆえ、見た目はそっくりなのですが、性格や得意分野が違っていて、お互いを補完し合ういい関係だというのが、とても興味深かった。

イリは感覚的で自由奔放なタイプのようでした。振付してるときは小さな子供にかえってそれだけに没頭するそう。一方オットーは二人の中ではどちらかというと頭脳派で、PCやソフトウェアの扱いも得意、バーチャルリアリティにも興味あるとか(そこのくだりでイリは「自分はそれ興味ない!現実のこの瞬間しか興味ない!」と茶々を入れてました)。イリにとってオットーは大切な相方で、感覚で創作してるイリの傍らで常に、その振付はストーリーに合ってるのか、意味は何なのか、などを問いかけてくれるそう。また、振付家にとって衣装や舞台装置や美術を担当してくれるパートナーはとても貴重だと。確かに、一人で全て出来る人は多くないし、バレエやダンスは衣装や舞台美術を含めて初めて作品になるという部分も大きいですもんね。

以下、彼らの発言メモを残しておこうと思います。基本は安達さんが訳してくださった内容をベースにしていますがところどころ私が聞き取った部分があり、もしかしたら間違いがあるかも。また、だいぶ意訳になっているところもあると思います。素人ですゆえご容赦いただけますと有難いです(^^;) 長文ゆえ、ご興味とお時間のある方のみお読みください。

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(イリ)
自分達は16才のときに初めて日本に来た。チェコの振付家に頼まれて、作品のコンクールでダンサーとして踊り、そのときの審査員にジョン・ノイマイヤーがいた。彼が自分達に興味を持ったのはこのときが初めてだった。

それ以来、20回以上来日している。ハンブルクバレエで初めて日本に来たときはまだコールドで、地方公演もあり6週間も日本にいた。また、Bunkamuraのステージにも2回立ったことがある。前回の公演では自分で公演を演出した。今回の仕事は、日本のバレエカンパニーが公式に招いてくれたものとしては初めてのものとなる。

安達さんとはローザンヌの40周年記念のときに会い、それ以来連絡をとってきた。今回の作品ルール・ブルーは半分は既存の振付だが、半分は新しく今回の公演のために新しく作った。この作品を長くしたいと思っていたがそれが叶って嬉しく思う。

(安達さん)
彼らの作品をいくつか見て、理事会でこのルール・ブルーがシティバレエに合っているのではということになり、決定した。

(イリ)
以前にこのルール・ブルーという作品をアメリカのカンパニーに振付けたときは3週間しかなかった。今回は1ヶ月ほど時間がある。

L'heure bleueというのは、英語ではblue hoursの意味。パリ・オペラ座バレエ団に招かれて椿姫を踊ったときに着想を得た。そのときは4週間パリにいて、計3回、アニエス、オレリーと椿姫を踊っただけだったので、時間がたくさんあった。パリで素敵な作品を思いつくことが多い。オペラ座はラビリンスのような作りだし、小さなスタジオがある。美術館、博物館、劇場に行って、インスピレーションを受けるようにしている。

ラファイエットはガルニエに近いのでしょっちゅうそのそばを歩いていたのだが、ショーウィンドウに二人が何かやりとりをしているようなものがあった(*注:このあたり、意味がよくとれていないので間違っているかも)。それを見てインスピレーションが湧き、イメージに合う音楽を探した。次の日の朝にはバレエになっていた。オットーにも、すぐ(電話で?)相談した。

L'heure bleueというのは、英語でいうとblue hourのこと。薄い光が真ん中にあり、一日の終わりにも始まりにもなる、どっちにも行ける時間。高貴な女性がふとした瞬間に恋に落ちる、というような、そういう感じ。(*注:イリがいろいろと言葉で説明してくれようとしたのですが、感覚的なことだったのでなかなか理解が難しく)

(オットー)
舞台デザインは、PCで3Dのソフトを使ってデザインする。(実際にプロジェクタにソフトの画面を映し出しながら)このように、実際にどのように見えるかというのをシミュレーションすることができる。劇場からパースをもらってそれに合わせて作るのです。

(ソフトには彼らのいろいろな作品の舞台デザインのフォルダがあり、それを指しながら)これはPiano、有名な映画(ピアノ・レッスン)から題材をとった作品、いつか日本にも持ってきたいと思っている。このあとはハノーヴァーで自分達の作品の初演があり、今年の終わりはドクトル・ジバゴも予定している。

時々、舞台デザインをするうえで問題があることがあるが、それがいい結果にもつながったりすることがある。例えばこの劇場はオーケストラピットが狭くて自分達の使いたい音楽を演奏するためにはオケが入りきらないことが課題だった。が、それを逆手にとり、ステージの奥にオーケストラを配置することに。これはとても面白いと思う。

ここで、作品の一部を皆さんに実際にご覧に入れたいと思います。ダンサーは、岡博美、清水愛恵、榎本文
の3名(*注:ここ、早くて聞き取れなかったのでやや不安)。

作品をつくるときは、彼らの美しさだけではなく、それぞれのキャラクターを見ながら振付けている。イリは、伝統的なクラシックと現代的なものを組み合わせたいと思っている。

Q 劇場をどう使う予定か、教えてほしい

A (イリ/オットー)

いつも、劇場を実際に見たときのインスピレーションを大切にしている。今日劇場スタッフとライティングについて相談したばかりで、まだ劇場に入れていない。

作品を依頼されたときは、まずカンパニーを実際に見て、話してみて、そのインスピレーションを大切にする。

例えば、ピアノは一年かかった。18世紀にある女性がニュージーランドにやってきてマオリ族と結婚する話。振付は短くてもその準備には莫大な時間がかかるものだ。

作品は、ストーリーが大切。内省的(?)な作品をときには大きな劇場で上演することもあり、そういうときは内省的な作品に見えるように工夫しなければならない。

(自分達の師、)ジョン(ノイマイヤー)はとても物語をたいせつにする。さらに自分達には、チェコの伝統がある。チェコはいい劇場があり、演技という伝統を持っている。

今、有名な映画監督が1年間自分達を密着取材している。1年前の自分達のプラハでの公演を見て興味を持ってくれた。双子で才能があるダンサーというところが興味を引いたようだ。今年の9月のプラハの映画祭でドキュメンタリーとして上映される予定。この監督は非常に有名な人で、イリ・キリアンや、民主化された後の初めての大統領のドキュメンタリーも作っている。自分達が子供の頃見ていた映画も作っているような人。また、自分達はサーカス出身なのだが、サーカスの映画も彼は作っていて子供の頃の自分達もそれに出演していた。

Q 東京シティバレエ団をどのように思われましたか?

A (イリ)

人に対して、欧米は何かを要求するけど、日本人は相手を助けようとする。なので、一緒に仕事をしやすいと感じる。また、彼ら(東京シティバレエ団のダンサー達)は覚えるのがとても速い。今日振付したところをムービーにとって、後で復習し、次の朝には覚えている!彼らのレパートリーはクラシックが多いけれども、私達は今回今まで彼らが経験したことのないことを教えようとしているので、学ぶところが多いと思う。また、自分達も常に、一緒に働くカンパニーから何かしら学んでいる。

Q イリの背中にある入れ墨の漢字はなんですか?どういう意図でそれを入れたのですか?

A (イリ)

漢字としては「信」、faithという意味。本当はtruthがよかったのだけど、ハンブルクの入れ墨屋に頼んだらこれになってしまった。あの頃は自分はバイクにも乗ってたし、ちょっとcrazyだったと思う(笑)。

Q 彼らが双子であるということについて(*注:質問詳細覚えておらずすみません)

A (イリ/オットー)

ハンブルクバレエでの役柄を見ると、最初の頃、イリはhappyな役を踊ることが多く、オットーは繊細だったり官能的だったり真面目な役を踊ることが多かった。でも人間は変わっていくもので、役柄も時と共に変わっていった。自分達の中では、オットーはSofterで、イリはSharperなイメージである。

Q お二人が自分達で踊られる予定は(*注:質問詳細覚えておらずすみません)

A (イリ/オットー)

振付家とダンサー、この2つのバランスをとるのは自分にとってはとても難しい。またダンサーはどこが(年齢的な)限界かを見極めるのがとても難しい、誰もやめろという指示はしてくれないし。

自分達の夢は、カンパニーを持つこと。そのためには、今始めることが大切。

今は、創作したい。その活動を広めていくことで、いつかカンパニーが持てると考えている。イリのダンサーとしての活動は11月のドレスデンでのマノンで終わった。

自分達は今とても忙しく、2-3年先までスケジュールはいっぱい。8月にオルフェウスという作品を上演するが、これは自分達二人と1人の女性ダンサー、さらに1人の有名な俳優がキャスト。これは機会があれば日本にもってきたいと思っている。

Q 日本の国の文化から影響を受けていることはありますか?

A (イリ)

能からは影響を受けている。また、福島の原発事故からも。福島の原発事故があった後、benefit galaを行い、収益を日本に送った。日本にお返しをしたかった。

以前、ドレスデンのcontemporary museumで作品を上演する機会があって、能にインスパイアされたものを創った。museum内でのパフォーマンスを観衆が自由に追いかけられるというもので2日間の4回公演で5000人の人がきてくれた。

いつか、日本の歴史にヒントを得て作品を創ってみたい。

Q 舞台美術を考える際、モデルを作ったりはしないのですか?

A (オットー)

時々、PCだととても遅いので、モデルをつくるときもあります。PCのいいところは見る側が小さくなったり、中に入り込んでいったり、自分がまるでそこにいるかのように見え方をシミュレーションできること。いつか、VRの世界の中で踊ったりする日が来ると思う。 

(イリ)
自分はそういうことは全く興味がない。今このリアルな瞬間が大事。

(オットー)
ソフトは説明書を見なくても、直感的に使い方が分かる。そういうのが自分は得意。デザインも好き。時々、壁の表面の質感に美しさを感じることもある。美しいものは大好き、女性も。単純さ、複雑さ、も美しい。人はその場の雰囲気を作るもの、だから興味がある。

Q L'heure bleueの新制作部分に、ダンサーや日本の印象が反映されているか。

A (イリ)

ラファイエットからの着想は単なるフレーム。時々、ダンサーに自分で動いてもらって、いいと思ったら採用することもある。スタジオで、その瞬間に創っていて、あまり考えていない。

ルーブル美術館の古い絵からポーズを採用することもあるが。でも、今回の作品のスタートが日本の絵だったりしたら、全然違う作品になっているだろう。元がパリで着想を得た作品であり、それが突然日本に変わったりはしない。日本ではなく、ダンサーのインスピレーションを得ている。異なる文化にはとても興味がある。

いつか、日本にインスピレーションを得た作品を創るとお約束します!日本人の方が親近感を持っているいい素材があれば、ぜひ教えてください。

この作品は、最初はプラハ、そのあとアメリカ、そして東京で創られている。インターナショナルなバレエと言えるかな。最初は2人、アメリカでは4人、そして東京では男女5人ずつの作品となった。これでこの作品は完成、これ以上の拡張は考えていない。

Q (*注:質問忘れました。あるいはなかったかな?)

A (イリ/オットー)

我々は双子なので同じモノの見方(view)を持っている。また、同じ嗜好(taste)を持っている。時々、全然違ったりもするが。もちろん、喧嘩もする。でもお互い正直になれるのがいい。たまに、イリはデザインに対して強気に出るし、オットーも振付が気に入らないと言ったりする。でもそれはいいこと。助け合える兄弟がいない人も多い。

オットーは、しょっちゅう、ストーリーはどうするの、なぜそれなの、と振付中の自分に問いかけてくる。それは助けになる。でも決めるのは結局僕だけどね!

衣装や舞台美術をデザインしてくれる人を探すのは難しいこともあるから、オットーがいてくれることはとても幸運。

L'heure bleueはとてもpeaceful(*注:違う単語かも)な作品。振付も衣装も、クラシックとコンテンポラリーが混在している。例えば、衣装も上半身はクラシカルだけどスカートがクラシックではありえないようなふくらんだ形だとか。また、女性二人が男性用のジャケットを着ていたり。男性用のジャケットに素足だと、かえってフェミニンに見える効果がある。

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