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2016年01月13日18:43

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ヤマト旅立ちの時

『「宇宙戦艦ヤマト」を作った男 西崎義展の狂気』を読んだ。

岡田斗司夫が自らのプロデューサー時代を語った著書『遺言』においても庵野とともに西崎義展と会談した章は奇妙で豪快すぎて笑いが止まらなかった。旧世代のプロデューサーと新世代のプロデューサーとの対決という世代抗争の場面というより、二大怪獣の大決戦というべき代物だった。

その西崎義展という人物がいったいどういう人間だったのか。自身の大言壮言と虚言と大ボラの霧を取り払い、実相に迫ったのがこの本である。

最初はアニメのプロデューサーの一代記と思って読んでいくと大きく裏切られる。途中からピカレスクロマンとも犯罪実録とも悪党のルポタージュともとれる、そのような印象が強い。平気で人を裏切るわ、金を踏み倒すわ、あり得ないほどの借金をしてあり得ないほどの愛人を侍らすわ、これが本当にアニメのプロデューサーかと疑ってしまう。
大ボラでも吹いていたんじゃないかなと思っていた『遺言』の西崎義展の章の描写も裏付けがとれた。いわく、西崎氏のまわりにはやたらと女秘書がいてタイトスカート姿でひざまづいて給仕していたこと。いわく、西崎氏は途中で見たこともない変な薬を飲むとどんどん発言がおかしくなること。いわく、まずは大金を与えてそこからビジネスの話をすること。ここらへんの裏付けがとれた。

『ヤマト』が生まれた経緯よりも、『ヤマト』をどのようにビジネスとして成功させたのかがこの本では詳細に描かれている。現在にも引き続き受け継がれているプレゼント作戦やファンを動員してリクエストを大量に送るリクエスト戦略、ポスターやグッズの物販を中心とした版権マネージメント戦略の詳細もすごい。
結果的に毀誉褒貶のすさまじい(西崎氏のことを好きな人はとことん好きで尊敬すらしているが、嫌いな人は口に出すことすら汚らわしく思い「N氏」とか「ヤマトの某氏」と表記している)人物の強烈な陰影と内実が露わになっている。

この本は非常に極端だがアニメのビジネスのやり方の一例を示している。これが参考になるか、参考にならないか、興味を示した方は一読を
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