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2016年01月03日22:28

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大気を変える錬金術

『十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない』
これはSF作家アーサー・C・クラークの言葉である。
現代において、魔法といえる科学技術はいったい何だろうか? 原子力技術か? 航空技術か? 宇宙技術か?
おそらく私は化学のある技術だと答える。
それは「空中窒素固定法」いわゆる「ハーバー・ボッシュ法」である。あらゆる生物においてもっとも重要だが入手の難しい元素「窒素」 空気中のおよそ三分の二を占めるのに固形では一部の方法をのぞいて抽出不可能といわれる元素である。20世紀初めのドイツで難関といわれたこの窒素固定を実験室で成功させたフリッツ・ハーバー ハーバーの窒素固定法を産業規模に出来るまで大型化したカール・ボッシュ。二人の科学者の名前をとって「ハーバー・ボッシュ法」と名付けられたこの方法は高温・高圧下の条件で窒素と水素を鉄触媒で反応させることでアンモニアを生産する。これにより、空気中に無限に存在する窒素を取り出し、あるものは化学肥料に使うことが出来る。そしてあるものは硝酸に変化させて火薬に使用する。第一次大戦中のドイツが硝石輸入を止められても自国内で硝石を生産し使用したことで戦禍は長引くことになった。
このように窒素固定という錬金術(魔法)を科学は実現したのである。

ではこの魔法と科学を入れ替えてみてはどうだろう。

昔、読んだことのあるライトノベルファンタジーでは魔法はもっぱら軍事技術に利用されるといわれた。精神力を因子に物理現象を操作すること、それが魔法と呼ばれる現象だとするなら、魔法そのものはエネルギー技術であり、そのエネルギーをただ軍事技術にだけ利用するのは合理性に欠ける。魔法を平和時に利用する方法を考えたとき、「魔法を使ったハーバー・ボッシュ法」でひたすら肥料を作っている、というのはどうだろう? 中世的な世界観において魔導士たちが力を合わせてアンモニアを作っている。そんなファンタジーがあってもいいと思う。
(この世界での魔法は実在の物理法則・科学法則の支配下におかれ、いわゆる物理現象のひとつにすぎない。それを前提にしている)
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