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2015年12月20日09:11

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泉ウタマロ。カナリアの黒い子。後編。



泉ウタマロ

物語【カナリアの黒い子】後編
テーマ:ウタマロ月明かり物語



「異端児」とされた悲しい運命の黒い子…。
物語の続きです。
( ̄ー ̄;)


*前編はこちら*



◆+◆+◆+◆+◆+◆+◆



満月の光が教会の高い窓からさしこんでいます。


月明かりはマリア像に落ち、
風はなく、静かな夜のことでした。
フクロウでさえ眠っています。




母カナリアは我が子を連れて、そっと教会に入りました。

黒い子は十字架にとまって鳴き始めます。









+・*・+・*・+・*・+


その声は、まるでハスの葉のすれる音、
その声は、まるでうたた寝するインドの牛のよう。

その声は、まるで東洋の歌でした。








母カナリアは我が子の歌を、
じっとうれしく聴いていました。
けれども涙がこぼれます。



「あなたの祈りに、いつもと違いがあったのですか?」


どこからともなく声がしました。



母カナリアが顔を上げると、
どうやら声はマリア像のようでした。









「あの黒い子が生まれる前夜、
あなたの祈りはいつもと違っていましたか?」

マリア像は再び訊きました。


母カナリアは少し考え答えます。

「いいえ、いいえ、マリア様。
私の祈りは同じでした」



「それなら・・・」
マリア像は言いました。


「あの黒い子が届けるものに、何か違いがありますか?」




母カナリアは言葉に打たれ、
再び歌を聴きました。



黒い子は一生懸命歌っています。
それは誰も聴いたことのない歌でした。



けれども心をとおった時には、



それは他の子となんら変わりない、歓びを届ける歌でした。
そして他の子と同じ、愛を届ける歌でした。




黒い我が子は一心不乱に歌っています。


声は教会を越え、森を越え、遠い世界に響きます。







+





いつしか朝日がさし込みました。
母カナリアの心にも、新しい光がさしました。











森に、清々しい朝の風がとおりました。










+・*・+・*・+・*・+




泉ウタマロは、どのように異質でも
「祈りに貫かれている」と確信できれば、
作品を発信してゆく所存です。

これからもよろしくお願いいたします。
(*゚ー゚*)




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