泉ウタマロ
物語【カナリアの黒い子】後編
テーマ:ウタマロ月明かり物語
「異端児」とされた悲しい運命の黒い子…。
物語の続きです。
( ̄ー ̄;)
*前編はこちら*
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満月の光が教会の高い窓からさしこんでいます。
月明かりはマリア像に落ち、
風はなく、静かな夜のことでした。
フクロウでさえ眠っています。
母カナリアは我が子を連れて、そっと教会に入りました。
黒い子は十字架にとまって鳴き始めます。
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その声は、まるでハスの葉のすれる音、
その声は、まるでうたた寝するインドの牛のよう。
その声は、まるで東洋の歌でした。
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母カナリアは我が子の歌を、
じっとうれしく聴いていました。
けれども涙がこぼれます。
「あなたの祈りに、いつもと違いがあったのですか?」
どこからともなく声がしました。
母カナリアが顔を上げると、
どうやら声はマリア像のようでした。
「あの黒い子が生まれる前夜、
あなたの祈りはいつもと違っていましたか?」
マリア像は再び訊きました。
母カナリアは少し考え答えます。
「いいえ、いいえ、マリア様。
私の祈りは同じでした」
「それなら・・・」
マリア像は言いました。
「あの黒い子が届けるものに、何か違いがありますか?」
母カナリアは言葉に打たれ、
再び歌を聴きました。
黒い子は一生懸命歌っています。
それは誰も聴いたことのない歌でした。
けれども心をとおった時には、
それは他の子となんら変わりない、歓びを届ける歌でした。
そして他の子と同じ、愛を届ける歌でした。
黒い我が子は一心不乱に歌っています。
声は教会を越え、森を越え、遠い世界に響きます。
+
いつしか朝日がさし込みました。
母カナリアの心にも、新しい光がさしました。
森に、清々しい朝の風がとおりました。
完
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泉ウタマロは、どのように異質でも
「祈りに貫かれている」と確信できれば、
作品を発信してゆく所存です。
これからもよろしくお願いいたします。
(*゚ー゚*)
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