■アロマキャンドルで火災報知機は鳴るのか? ポイントは煙の粒子、万が一鳴った時の対応は…
(ウィズニュース - 12月15日 07:00)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=220&from=diary&id=3760150
夕方、日勤がそろそろ勤務終了と言う頃。ちょうど午後イチで上野から特急列車に乗車したビジネスマンがチェックインに訪れて、お茶一杯も飲む暇が無い。
突然、火災報知電鈴鳴動、受信機に飛び付くと8階東のランプ点灯、デジタル表示盤に2804の数字が。
一番元気の良い奴に2804号室まで非常階段を使いダッシュで向かい(エレベーターは本当に火災の場合途中で停止する事もあるので)、状況をエレベーターホール内線電話で報告するよう指示。
事務のおねいちゃんに客室へ内線電話を掛けさせるが、なかなか出ない様子。
フロントカウンターの電話に内線着信、人手が足りない!表示盤のランプ・数字の変化(=延焼状況)を観察したいところだが、とりあえず主電鈴停止位置にスイッチを切り替えて、カウンターへ全速力で走る。
客室電鈴は発生階と直上階のみ鳴動になっているので放置する。(全館鳴動なら迷うところだが)
既にロビーは事務所から聞こえる主非常電鈴に気が付いたお客様がキョロキョロしている。
電話機の表示は内線325、地下二階警備室からだ。
「フロントのら猫です!」
「あぁ、こちらビル警備室、今一人は8階へ向かわせたから。火災報知機の電話持っているから連絡が入ったらそちらでも聞いてくれ。延焼状況はこちらで見るから」
「了解です」
電話を切ると同時に御客様と事務員から同時に声が掛かる。
「只今係員が状況確認に向かっておりますのでこのままお待ちください」とだけ御客様に云うと事務所へ飛び込む。
「2804のお客様、火災は起きていないとおっしゃっています」
誤作動か?
またカウンターの電話が鳴動、内線2830、8階エレベーターホールからだ。
「(ゼエゼエハアハア)**です、只今2804号室確認しました。例の”5人に同じ手紙を出さないと祟られる”という郵便物が届いた御客様が立腹して、備え付けの灰皿でその手紙を燃やしたとのことで、燃え滓と消火の確認をしました。煙が廊下まで漏れていて、ベルで廊下に出た他の部屋のお客様へ状況を説明していた為連絡が遅れました、すみません」
「判った、お疲れ!悪いが廊下に出た御客様がルームキーを持っているか確認して、締め出しがあるようならお名前と部屋番号を伺って、こっちへ戻ってフロアマスター(キー)を持ってドアを開けてやってくれないか」
「はい、何名か締め出されていますので確認してきます」
「宜しく」
火災報知機がブーブー鳴っている。非常ベルの電話機からの呼出だ。
「フロントのら猫です」
「警備室++です、**君から話は聞いてるよね。煙が廊下全体に広がっちゃったからちょっと換気を掛けるよ。暫く冷えるけど勘弁してくれ」
表示盤を見ると、8階西のランプも点灯している。
「宜しくお願いします。表示盤では8階東西検知していますが、確認できますか?」
「ああ、確認灯両方とも点いてたな」
「もしもし、警備室です、途中からすみません、8階の感知器は全部解除していいですね」
「確認済みですので解除して下さい」
廊下の各ランプ、2804の表示が消灯する。
主電鈴スイッチを停止から鳴動へ戻す(これを忘れて大火災になった事例が実際にある)
事務のおねいちゃんに声を掛ける。
「悪いけど8・9階とロビーに誤報のアナウンス入れて貰えないかな。こういう時は女性の声の方が安心感有ると思うから」
「はい、やっておきますから、カウンターでお待ちのお客様をお願いします」
「ほいきた!」
事務所を通り抜けようとすると**君がフロアマスターを取りに来ていた。
「無事で良かったな」
「そうですね」
フロントカウンターには行列が出来ている。
誰に云うとでも無く、全体に「大変お待たせして申し訳ございませんでした」と頭を下げてから、順番にチェックインに取り掛かる。
こんな時に限って大荷物のお客様が居たりして、ベルマンはこちらから指示する間もなくカートを持って動き回っている。
御客様データをオフコン(死語)に入力すれば、客室冷蔵庫解錠と外線電話が開通するが入力の余裕が無い。IB(冷蔵庫)とPBX端末を直打ちして解除を掛ける。
冷蔵庫使用料と外線電話代金が全部未収部屋(という電子計算機上の架空の部屋)に上がってくるので、本来の部屋へ振り分けなおすと言う後の事務処理が途方も無く面倒だが、御客様の都合の方が優先だ。
御客様のざわめきの向こうから「只今の非常ベルは誤報でした。御心配をおかけして申し訳ございませんでした」のアナウンスが日本語と英語で繰り返し流されている…
と、御客様の壁の隙間から警備員の声が掛かる「異常なし、お疲れ!」
並んでいた御客様から一瞬ため息が聞こえたような気がするが、チェックインが忙しいので気のせいにする。
一通り御客様対応を済ませてから、今一度報知機を確認。
報知機主電源正常、非常電源正常、検知器表示全消灯、主電鈴鳴動、客室階電鈴発生階・直上階鳴動、…
設備が古いので119自動通報装置が無かったのが幸い?
もし装備されていたら、今頃「特定中高層ビル火災」出動指令で、建物はハシゴ車やポンプ車に取り囲まれていただろう。
さて、次の特急列車が駅に入るまでに(=次のチェックインラッシュまでに)、端末で開いた客室をオフコンと連携させる作業を終えなければならない。
溜りに溜ったレジストレーションカードと予約票との格闘が始まる…
と言う訳で、部屋では火をつけないで下さい。
バブル絶頂期のホテルマンより。
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