日刊ベリタ記事の転載です。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201512102252154
2015年12月10日22時52分掲載 印刷用
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柯隆著「中国が普通の大国になる日」
富士通総研の主席研究員である柯隆氏が書いた「中国が普通の大国になる日」は興味深い中国分析である。本書の骨子は中国が抱える課題を指摘していることである。2013年、最高指導者が習近平国家主席に変わって以後、中国はいろんな形で改革を行っていると報じられている。しかし、柯氏によると、本来、改革に着手すべきだったのは前任者の胡錦涛国家主席と温家宝首相の時代だった。なぜなら、この10年間こそ中国にとって経済成長が加速した時期であり、政治改革は景気が良い時ほど、やりやすいというのが柯氏の骨子となっている。
中国は社会主義国でありながら、激しい格差社会になっており、本書ではその実情はアメリカ以上であると指摘されている。
「世界銀行の統計によれば、米国の場合、5%の人口が60%の富を独占しているのに対し、中国の場合、たった1%の人口が41.4%の富を独占している。また、都市生活者の1人あたりの所得は、農村住人の3.3倍であり、国有企業幹部の平均給与と中国サラリーマンの平均給与の格差は128倍にも達しているという」
このデータが真実かどうか、筆者には確かめるすべがないが、真実であるなら、すさまじい格差である。
「その行き着くところが暴動の多発だ。中国政府の正式発表によると、中国国内で起こっている暴動の数は年間10万件だが、アメリカの情報機関の推計では、それを上回る年間15万件の暴動が起こっているという。」
こうした中で習近平国家主席には待ったなしの改革が求められているのだが、今年の夏の株式市場の暴落に見られるような経済の変調があり、成長が低迷してきた中で改革を進めていかなくてはならなくなっている。柯隆氏はいくつかの論点を挙げながら、中国に対する冷徹な分析を行っているものの、中国に対する嫌悪から書いているのではないことが感じられる。このことが本書に一種の風通しのよさを感じさせるものである。
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