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2015年12月06日07:48

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水木しげる。人生をいじくりまわしてはいけない。

 「入隊して問もなく、私は南方の島、ニューブリテン島のラバウルヘと送られることになりました。
腕を失って前線から後退した私は、島で暮らす人たちと仲良くなった。

彼らは朝起きると、主食であるバナナを採りにいく。そして昼問は涼しい家のなかでのんびりしている。
客人が来れば心からもてなす。祭りの日にはみんなで歌い踊る。ただそれだけの生活です。

彼らには義務のような仕事などありません。
もしかしたら人生の目標なんていうものもないのかもしれない。それでも彼らは、とても満ち足りた表情をしていました。

彼らのなかには「幸せ」という言葉はありません。それでも彼らの村には「幸せ」の空気が充満しています。
それは彼らの日常生活の中に、幸せが自然に組み込まれているからです。

あえてこれが幸せですと取り出して確かめなくても、ほのぼのとした幸福感に包まれているんです。

「幸せ」なんていう言葉がないほうがいいと私は思います。
そんな言葉があるから、人は「幸せ」を叫ぶのです。もっと幸せになりたいと叫ぶのです。

本当の幸せとは、叫んだからといって手に入るものでもない。私は彼らの村に流れる幸せの空気を、日本に帰国してからも思い出しながら、暮らしてきました。

やりたくないことは無理にやることはない。自分にできないことは他人に任せておけばいい。

小さい頃から私はそう考えていました。自分の好きなことをやる。

そのために人は生まれてきたのだと私は思っています。
やりがいだとか、充実感といった言葉をよく耳にしますが、結局は自分が好きなことにしか、そういうものは見つからないような気がします。

やりたいことが見つからないと言う人がいますが、まずは自分が好きなことは何かを考えること。
小さい頃に熱中したものを思い出すんです。

ただし、好きだからといって成功するわけじゃない。いくら情熱を傾けて努力をしても報われない人はたくさんいます。

努力は人を裏切るということも知っておくことです。それでも、好きなことに情熱を傾けている問は、きっと幸せの空気が漂っているものです。

私は自分が幸福だと思っています。好きなことに情熱を注いで、人生を生き切ること。
うまくいく時もあれば、うまくいかない時もある。そんな時に、あたふたと騒がないほうがいい。幸福だの不幸だのといちいち口に出さないほうがいい。

人生にはいろんなことが起こって当たり前。それらに一喜一憂するのではなく、放っておくことです。人生をへたにいじくりまわしたところで、何の解決にもなりません。

起きてしまった不幸はもうどうしようなもない。ならば自然の流れに身を委ねてしまったほうがいい。
しょせん人問の力ではどうしようもないこともあるものです。

ラバウルの人たちは実にわかりやすい人生を送っています。神様から与えられた人生を決していじくり回したりしません。
だから、幸せの空気に包まれているのでしょう。」(

水木しげる「人生を、いじくり回してはいけない」2005年)

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