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2015年12月05日16:20

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マリインスキーバレエ 愛の伝説 

2015年11月27日(金) 6:30p.m〜 東京文化会館

音楽:アリフ・メリコフ
振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
台本:ナーズム・ヒクメット
舞台装置・衣装・照明デザイン:シモン・ヴィルサラーゼ
舞踊監督:ユーリー・ファテーエフ
指揮:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

<出演>
シリン(王女):クリスティーナ・シャプラン
フェルハド(宮廷画家):アンドレイ・エルマコフ
メフメネ・バヌー(女王、シリンの姉):ウリヤーナ・ロパートキナ
宰相:ユーリー・スメカロフ
托鉢僧:ドミートリー・プィハチョーフ
フェルハドの友人たち:エルネスト・ラティポフ
           ワシーリー・トカチェンコ
           アレクセイ・ネドヴィガ
           アンドレイ・ソロヴィヨフ
シリンの友人たち:石井久美子
         スヴェトラーナ・イワノワ
         クセーニャ・オストレイコーフスカヤ
黄金の踊り:ナデージダ・バトーエワ
踊り子たち:アナスタシア・ペトゥシュコーワ
      エカテリーナ・チェブキナ
道化:グリゴーリー・ポポフ

愛の伝説。2015年4月に、ボリショイバレエの公演を映画館で予習も兼ねて観たときにとても面白かったので、今回の公演も楽しみにしていました。(ボリショイバレエ in シネマで観たときの感想はこちら http://kikoworld.blog.fc2.com/blog-entry-71.html )

映画館で観ても楽しかったのですが、ライブで観ると特に群舞の迫力が凄い!この作品、グリゴローヴィチの初期の作品だそうで(プレトークでファテーテフが話してました)、全編マイムなどほとんどなく休みなく踊りまくり。ソリストも物凄い体力を要求されますが、コールドの踊りも半端ない難しさ。あの難しい振付を難なく、しかもきちんとみんなで揃えて踊ってみせることができるマリインスキー、さすが。ボリショイもそうですが、やはりロシアの二大バレエ団はクラシックのテクニックについてはコールドにいたるまでよく鍛えられてるな、と唸ってしまいました。しかも、男性も女性もすらりと背が高くて手足が長く、お顔も小さくて美しい。やはりクラシックバレエはロシアのバレエ団で観るべし、です。

しかしこの作品は、とてもロシア的で興味深い。まずストーリーからして普通じゃない。

死の病に侵された妹を助けるのと引き換えに自分の美貌を手放した女王バヌー。そこに美しい画家フェルハドが登場、姉妹二人して恋に落ちるがフェルハドは妹といい仲に。嫉妬した女王バヌーは二人の仲を引き裂くためにフェルハドに水路を切り拓くために鉄の山で働くことを命じる。そのうちバヌーは二人を許す決意をして妹とともに鉄の山に赴くが、フェルハドは恋ではなく民衆のために働くことを決意し、鉄の山に残る。

つまり、共産主義のための自己犠牲の物語。こんなの旧ソ連系の国のバレエ団でなければ上演できないだろうなあ。

1961年に初演の作品ですが、音楽、振付、舞台美術、衣装もちょっと現代的。特に衣装は、形状はアラブ風だけどデザインや色づかいがポップで、洒落てる感じでした。舞台の奥中央に観音開き式の装置があって、そこがいろいろに変わっていく。大掛かりではないがとても効果的。舞台ではアラビア文字っぽい装飾もたくさん使われていて、今のロシアと中東との関係を思い起こさせた部分も。

さて、この日のチケットをとったのは、もちろん、日本で全幕を観られるのはこれが最後ではないかと思われるロパートキナを観るためでした。ロパ様はやはり流石でした・・・。ボリショイではアラシュがバヌーを演じていてそれも素晴らしかったのですが、ロパ様はもっと内省的で孤独感が強い感じ。立ち姿や動きが実に美しいので、顔が変わっても外から見るとやはり美しいんだろうなあと思わせるバヌーでした。ロパートキナの凄さは、もちろんしっかりしたテクニックにもあるのですが、音感だなあと思います。早取りでも遅取りでもなく本当に音楽にぴったり、ジャストに合っている。しかも、全ての動きに無駄がない。プレパレーションもない。はっと手を上げるときも、行き過ぎて反動で戻るとかがない。それが類まれな美しさに感じるのです。あと、ポーズで止まっているとき、ぴったり完全に静止してしまっているのではなくて、どこかで音楽に合わせて力が流れている感じがするところもいいのですよねー。(逆はタマラ。バランス感覚はすごいけど、ちょっと静止感が強すぎて流れが途切れて見えることも。私はタマラも好きですが、あくまで言葉で感覚を伝えるための比較として)

バヌーは人によっていろいろ演じ方が変えられる面白い役だと思います。個人的にはもう少し濃い役作りもいいのではと思うので、私は残念ながら観られなかったテリョーシキナが素晴らしかったというのは想像に難くありません。

さて、ロパ様以外もソリストは素晴らしいメンツでした。私が気に入ったのは宰相のスメカロフ。めちゃめちゃ素敵で、フェルハドじゃなくて宰相でいいじゃん!と思ってしまった。特に、女王に対して報われない愛情を嘆くシーン、、、ちょっとしかなかったけど、ずんと胸に響きました。踊りもキレッキレ。

フェルハド役のエルマコフも素敵。若くて真っ直ぐで愛される役を好演。ジャンプもすごい高くてきれいだし惚れ惚れ。シリン役のシャプラン、可憐で繊細で美しい。でも彼女、あまりこの役踊り慣れていないのか、少し足元が不安定だなと思う時も。彼女はテクニックというよりそのキャラクターが持ち味のダンサーというイメージかな。

オケもよかったです。薄い編成だろうにそれを感じさせない思い切りのいい演奏でした。

もうひょっとしたら全幕をライブで観ることはないのでは、と思われる愛の伝説。今回の来日公演に持ってきてくれてありがとうございました!
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