掛布ならよかったのに

先だってのハロウィンに参加できなかった面々と夕方から駅前ビルでワンコインセットのはしご酒。
話題といえばもっぱらハロウィン、言うまでもなくＳさんの件。
今度の土曜のボクを楽しみにしていてくださいと大見得切っておおはしゃぎしていたのに、蓋をあけてみたらどこにでもあるタイガースのユニフォーム姿で、しかも頭にはしっかり帽子までかぶって完璧に防御を固めていたことについて、みなさん言いたいことがたくさんあった。
もちろん、５０代になってなにかを変えなければどうにもならないのに、３０代のときとなにも変化も進化もないＳさんの現状を憂い、将来を心配してなんです。

そこまでして守らなあかんもんてなんやねん。
生活の９５％をあれに支配されたせいで、心は１００％縛られてるんちゃうか。
ええかげん楽になったら人生が一変するのに。
あれは単なる毛の塊やなくてサタンやで、悪魔に魂を売ってもたんや。
年が頭に追いついたんやから脱皮したらええねん。
２０年もつけてたら、眉毛といっしょで、ないほうがイメージできんのかもな。
いや、女子が出かけるときに口紅ささんと落ち着かんのといっしょやで。

いやほんま、茶化してるみたいやけど、ボクたちにはわかっているのです。
Ｓさんがいつまでたってもグダグダなのも、どう考えても悪条件の仕事にしか就けていないのもあれのせいだと。
もともとは新車ディーラーの優秀なセールスマンだったＳさんがリストラにあったのは２０年ほど前。
その後、ドライバーの職を得るものの、なぜだか勤める会社が次々つぶれてしまう。
いまは尼崎の自宅から明石の会社まで毎日最短でも２時間かけて自分の車で通勤する日々。
電車なら楽なのに車にこだわる理由は、ヘビースモーカーで１０分以上タバコを切らすことができないからであるらしい。
ドライバーの仕事を続けているのも同じ理由。
でも、なにも５０キロ以上離れたとこまで通わんでも、ドライバーの口なら近くになんぼなとあるやん。
しかも勤務は朝４時から午後２時までで、休みは日曜だけ。
給料もかなり安い。
たぶん、運転中にタバコを吸ってもええってことと、人と顔を合わせたりせんでええ業務内容にこだわったらそこしかなかったんやわ。
勤め先がつぶれるのも、そうした条件が外せない上、あれも外せないからに違いない。
だって、あれくらいわかりやすいのをつけられて、それで帽子もかぶってないとなると、ちゃんとした会社なら採用に二の足を踏むもん。

そうそう、あれ外してさらすのが嫌なら帽子かぶったらええのにね。
帽子やったら、もしかしてこの人はげてるのかもなと思う人は居るかも知れへんけど、いまのままやと１０００人中９９８人がこの人ははげてるに違いないと思うはずやから。
残る２人は目の見えない人ね。

でね、今回の扮装、背番号６でタイガースの金本監督を強弁していたことについて出てきた
ひとことがじつに秀逸でして。

掛布ならよかったのに。

思わず全員揃ってはたと膝を打つ。
金本やからあかんねん、掛布にして脱ぐもん脱いだら今年のＭＶＰはＳさんのもんやったのに。
笑いと共にカミングアウトできて、まわりからの賞賛まで得られる。
もう、これ以上のチャンスはないんちゃうか。
ドラゴンズの和田でもええけどな。

でね、ボクたちがどうしてここまでＳさんのあれが気になってしまうのかというとね。
どう思う、あかんやろ、これ。
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