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2015年11月08日08:03

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◆ 荒波の中稼ぐ液晶部材、強さの源は「寡占力」  部材メーカーの好況は今後も続くのか

◆ 荒波の中稼ぐ液晶部材、強さの源は「寡占力」  部材メーカーの好況は今後も続くのか

【東洋経済オンライン】11/08
渡辺 拓未 : 東洋経済 記者



 赤字の要因は液晶だった。

10月26日、経営再建中のシャープは、4〜9月期の純損益が840億円の赤字になったと発表。

スマホ用中小型パネルの販売低迷と価格下落が響き、通期の営業利益予想も、従来の800億円から100億円へと、巨額の下方修正を迫られた。



 液晶事業に頭を悩ますのはシャープだけではない。

中小型液晶パネルで世界大手の一角であるジャパンディスプレイ(JDI)ですら、前期の営業利益率は1%に届かなかった。





● 部材メーカーは「儲かっている」


 が、液晶に使われる部材メーカーに目を向けると、厳しい環境でしたたかに稼ぐ、日本企業の姿が見えてくる。



 タッチパネルを手掛ける日本写真印刷、偏光板の日東電工など、意外にも高収益を誇る企業の多いことがわかる。

これらに加え、偏光板の保護に使われるTACフィルムを製造する富士フイルムも、液晶分野で稼ぐ企業の一つだ。



 高い収益性の背景にあるのは、各市場の寡占状態。

テレビやパネルといった川下分野において、日本勢は、サムスングループとLGグループのテレビ2強を擁する韓国勢に加えて、中国、台湾勢との競争を強いられてきた。



 一方で部材は、プレーヤーが集約されている。

例えば液晶層は、独メルクと、チッソ傘下のJNCで、約9割のシェアを占める。

ガラス基板や偏光板についても、2〜3社の大手メーカーが市場を分け合っている状況だ。



 なぜ液晶部材で寡占状態が築けているのか。

ここには各社が液晶以外の“本業”を持つという特性がある。



 例えば大日本印刷は、社名のとおり、印刷事業が祖業だ。

インクを精密に印刷する技術を生かして液晶分野に進出した。

日本写真印刷も、印刷技術をタッチパネル分野に生かし、従来ガラスが使われていたタッチパネルをフィルムで置き換えてきた。



 小型ベアリングが主力事業のミネベアは、一見、バックライトと関連性がないように思われる。

だが、ベアリング製造で培った超精密加工技術を応用、他社にまねできない薄さの製品を量産した。

各社とも、数十年間培ってきた技術を横展開することで、他メーカーが追随不可能な技術優位性を生み出すことに成功しているのだ。





● 既存事業のノウハウをつぎ込む


 さらに、製品の多くが新興メーカーによる模倣が難しい分野であることも、寡占状態の維持につながっている。



 部材メーカー幹部は「川下分野は製造装置を買い、技術者を何人か引き抜けば、新興メーカーでもそれなりの水準になる。 一方、我々が扱う部材は、化学製品のように合成から製造まで特許とブラックボックスの塊。 多少人材を引き抜いた程度ではまねできない」と解説する。



 部材の多くが装置産業である点も大きい。

ガラスやフィルムの製造には巨大な装置が必要である。

富士フイルムの場合、液晶用のTACフィルムは、製造ラインを作るのに、1基100億円以上の製造装置が必要になる。

同社は現在の生産能力を確保するために、2000年以降、累計で3500億円超を投資してきた。

一度市場が成熟すると、後発企業が大型の設備投資をして新規参入する余地は、小さくなる。



 高収益を謳歌する部材メーカーだが、今後も利益率を保てるかどうかは不透明だ。



 旭硝子は、近年のガラス基板の価格下落によって、かつて40%を誇った部門利益率が12%台に落ち込んだ。

今年は価格が落ち着きつつあるものの、まだ予断を許さない。

京東方科技集団などの中国パネルメーカーが増産を重ねた結果、テレビ向けの大型パネルが供給過剰ぎみだからだ。

メーカーの在庫調整次第で、さらなる市況悪化の可能性も出てくる。





● 抜けられない、アップルリスク


 中小型液晶分野では、ぬぐえないリスクもある。

米アップルへの依存だ。

モバイル機器の分解調査を行うフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの柏尾南壮氏は、「アップルはハイエンドの液晶部材を特注するため、メーカーは高い価格で売ることができる。 対して、中国メーカーのスマホは、既製品を安く使う傾向がある。 アップルが停滞すれば、部材メーカーも途端に苦しくなる」と分析する。



 最大のリスクは部材自体が不要になることだ。

たとえば、タッチパネルは液晶に内蔵するインセル方式が普及しつつあり、フィルム方式と主導権争いをしている。

自然光を反射させて液晶を映す反射式液晶や、有機化合物を発光させる有機ELの開発も進むなど、これらの普及で不要になってしまう部材もある。



高収益を享受する部材メーカーも、技術優位性が一度失われれば、容赦ない価格下落にさらされ、果てはほかの技術に代替される。

牙城を守り抜くためには、今後も絶え間ない技術開発が必須だ。

(「週刊東洋経済」2015年11月7日号<2日発売>「核心リポート06」を転載)



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渡辺 拓未 わたなべ たくみ

東洋経済 記者
1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。
在学中に起業や株式投資に取り組む中で企業活動に興味を持ち、2014年に東洋経済新報社へ入社。
現在は精密機械担当
 
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