mixiユーザー(id:28433789)

2015年10月25日11:45

853 view

◆ ゼネコン大手5社技術開発の潮流

◆ ゼネコン大手5社技術開発の潮流

【日刊建設工業新聞】10月22日1面



■ 現場の生産性向上課題 [2015年]

◇ 省人化工法が重要性増す



 東京五輪が開催される2020年前後を境に、建設市場には大きな変化が訪れると予測されている。

これに伴い、建設技術のニーズも変化。

拡大する需要と現場の担い手不足に対応する生産性向上技術や、五輪後の国内建設市場の縮小をにらんで新たな事業領域を開拓するための技術などが重要性を増すとされる。

ゼネコン大手5社の技術開発の潮流を探った。

(編集部・「ゼネコン技術開発」取材班)



 「建設業に期待される役割は大きくは変わらない」。

大林組の汐川孝常務執行役員技術研究所長はそう予測する。



 今、建設現場の担い手不足は深刻だ。

1990年代後半以降、長期にわたった建設投資の減少で、多くの技能労働者が業界を離れた。

それが2011年の東日本大震災をきっかけに一転。

ここ数年、担い手不足が業界の最大の問題の一つになっている。

少子化による生産労働人口の縮小も考えると、建設業が将来にわたって役割を果たしていくには、処遇改善などによる担い手確保と併せ、省人化・省力化工法による生産効率の向上が欠かせない。



 汐川氏は技術開発の最重要項目に自然災害への対応を挙げる。

東日本大震災後も、14年8月の広島市北部の大規模土砂災害、今年9月の関東・東北豪雨など自然災害は後を絶たない。

防災・減災技術に加え、「短期間で災害復旧を実現する材料開発も必要になる」と汐川氏は指摘する。



 省人化・省力化の代表例の一つが情報通信技術(ICT)を駆使して建設機械を遠隔操作する無人化施工だ。

鹿島の戸河里敏常務執行役員技術研究所長は「無人で建機を稼働させる自動化システムの実証を造成工事やダム工事などで進めている」と話す。

災害復旧工事は短時間で安全に作業することが必要で、特に無人化施工のニーズが高いとされる。



 増え続ける老朽インフラの点検を効率化する技術の開発も各社が注力する分野の一つだ。

人の作業を代替・支援するロボットの開発も加速している。

国土交通省は橋梁、トンネル、水中の維持管理、災害調査、災害応急復旧の5分野で民間が開発したロボットを検証中。

16年度にも試行的に一部導入する計画だ。



 清水建設の石川裕常務執行役員技術研究所長は「現場の完全な自動化は難しい。 単純作業はロボに置き換えられても、熟練技術者は欠かせない」と指摘する。

技能者だけでなく、技術者の不足も業界が抱える大きな問題だ。



 大成建設の松井達彦執行役員技術センター長は「人工知能を搭載したセンサーを付け、構造物の側から補修時期を発信できるようになる」と人工知能を活用する技術の具体策を提案する。

竹中工務店の東野雅彦技術研究所長は、大容量のデジタルデータ(ビッグデータ)の活用に注目。「人が分かるように整理することが大事だ」と指摘する。





■ 国の成長戦略に研究の種

◇ 他業種との協業が革新生む



 ゼネコン各社は、シールドトンネルや免震・制震など技術開発にしのぎを削る。

鹿島の戸河里敏常務執行役員技術研究所長は「本質的な課題は顧客のニーズがどこにあるか。 顧客にとって価値のある提案ができるよう、強い競争力を持たないといけない」と話す。



 技術開発には、受注獲得という経営に直結したニーズへの対応に加え、国の政策に沿った取り組みも求められる。

省・蓄・創エネを最適に組み合わせ、建物単体で年間の1次エネルギー収支ゼロにするZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化技術はその一例だ。



 経済産業省は、2030年までに新築建築物の平均でZEBを実現する目標を設定。

各社とも技研を中心に要素技術の検証を進めている。



 大成建設は、エネルギー消費量が大きく、制約も多い都市部のオフィスビルのZEB化がテーマ。

竹中工務店は、既存建物のZEB化技術の確立を急ぐ。

清水建設は、ZEBに対応する次世代外装材の開発に力を入れる。

大林組は、ZEBの次の段階として、技研にエネルギーマネジメントシステムを構築。

鹿島は、汎用的な技術でZEBを実現し、20年までに顧客が採用可能なコンセプトを確立する計画だ。



 材料研究も新技術の開発や現場の課題解決を支える重要な要素で、今後の課題に位置付ける社が多い。

清水建設の石川裕常務執行役員技術研究所長は「コンクリートなど従来部材にも改良の余地は十分ある」と指摘する。



 独創性のある次世代素材への挑戦も欠かせない。

大林組の汐川孝常務執行役員技術研究所長は、「人工知能や3Dプリンターの進化も興味深い分野だ」と期待を話す。



 政府が6月に閣議決定した「改定成長戦略2015」(日本再興戦略)。

具体策として、「IoT・ビッグデータ・人工知能による産業構造・就業構造変革の検討」 「二酸化炭素(CO2)排出の少ない水素社会の実現」 「公共施設等運営検討の民間開放(PPP・PFIの活用拡大)」などのテーマが並ぶ。



 竹中工務店の東野雅彦技術研究所長は「政府の成長戦略を注視しながら技術開発の方向性を定める」と今後の方針を強調。

「そうした需要に的確に対応していくためには、社外に新たなアイデアや技術を求める『オープン・イノベーション』が必要だ」と説く。



 大成建設の松井達彦執行役員技術センター長も「自前の技術を進化させるだけでなく、他社や大学などが持つ技術やアイデア、情報などを組み合わせ、革新的なビジネスモデルや研究成果、製品開発につなげていく」との考えを示す。
 
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する