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2015年09月12日20:39

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【旅】自転車日本縦断記(4)：東北地方③(2000年8月9日～)

■2000年8月9日(水)：休息（宮城県仙台市～福島県会津）

　6：10。ボールが跳ねるような音で目を覚ます。テントから這い出ると公園の広場でバスケをしている15～6歳の少年達がいた。（税金も払ってなくここの住民でもない俺の方が異物だ）邪魔にならないようテントを片付ける。荷物をチャリに載せてから朝食。パンの耳（\50）

　出走準備を終え、痛めた膝の具合を確かめると、鈍い痛みがまだあった。昨日、薬局で状態と話すと使いすぎによる膝関節の炎症だろうと言われている。やはりオーバーワークか。交換できればいいのだろうが、あいにく俺の膝のスペアパーツは無い。
　治すには休養するしかないがこの公園で何日も泊まるわけにもいかない。（どうするか……）
　選択肢として考えられるのは３つ。

　１.近くのYHで回復するまで泊まる。
　2.福島県にある母の実家に移動し、世話になる。
　3.旅の中断。

　（１は金がかかり過ぎる。3は今更家に帰り日常に戻っても、何もする事が無い。あの日々に逆戻りはごめんだ）。消去法で２を選んだ。母方の実家に電話をかける。……O.K.　どうやら母から俺が旅に出た事を既に聞いていたようだ。
　福島の田舎には、去年(1999年)の夏にも世話になっている。その時に仙台から田舎の区間の道は既に走っている。なので電車で移動してショートカットしてもいいだろうと自分に納得させた。（本当は全て自走したかったのだが…）
　仙台駅から二駅ほどの長沼駅に移動。平地がほとんどだったが膝に負担がかかる。(痛痛痛……)

　7：30長沼駅発。「長沼-郡山」「郡山-会津若松」「会津若松-会津下郷」と移動する。電車内で輪行したMTBを発見、持ち主と話す。明星大学の一年。彼は部の夏合宿を終えた帰りだそうだ。彼は経験が浅いので情報交換というより、俺からの情報提供になる。彼は部活の先輩達に不満があるらしく、かなり過激な発言をしていた。「だって馬鹿ですよ。アイツラ………」
　（気持ちは分かる。俺も一年のときはくだらない部の伝統が嫌で何度辞めようと思ったか。先輩の立場になり考えも少し変わったが）　彼と記念撮影、住所交換をした後、郡山駅で別れた。

　15:00、母の実家の最寄り駅に到着(最寄り駅と言ってもそっから山道を大移動するのだけれども)。駅には伯父が迎えに来てくれていた。話を聞くと営業で外回りしているついでだとの事。(…って業務時間中にいいの？ありがたいけども)
　伯父の車にはチャリは乗りそうにないので荷物だけ載せてもらい、俺はチャリで祖母の家に向う。痛めた膝を気にしながらペダルを踏む…（軽い！これなら膝への負担は少ない。イケる。というか総重量20ｋｇの荷物が膝故障の原因か？）

　5ｋｍほど走って祖母の家に到着。一年ぶりに会う祖母に挨拶を済ませた後、伯父に手伝ってもらい荷物を家に運ぶ。
　ここには祖母と伯父、小学生の伯父の子供（従姉弟）2人の4人で住んでいるのだが、従姉弟はそれぞれ学校に部活に行っているそうだ。（夏休みに部活とは、俺が小学生のときとえらい違いだ）
　祖母の用意してくれた食事をとり、休ませてもらう。寝ていると従姉弟が帰ってきた。否応無く起こされる俺。
　俺はこのふたりには赤ん坊の頃から実家に行くたびにお守りをしていたので、懐かれてしまっている。去年、一緒にココに泊まった仲間に「懐かれているのは今のうちだから遊んでやれ」と言われていたが…。一年経った今でも寄ってくるとは。
　来ていた服と溜めていた洗濯物が汗臭いと小学生の従妹に怒られる。「もー、私が洗ってあげる！」いや、自分で洗うから…「いいから！」はい。11歳の子供に下着まで洗濯されるという体たらく。

　夕方になり、祖母に頼まれて夕食の材料を買いに行く事に。普通に食べる分はあるのだが、俺をもてなすような物が無いとの事。ようするに俺の為の買い物だ。小４の従弟が一緒に行きたいと言ったので、二人でチャリで移動。従弟のスピードに合わせたので膝の痛みはほとんど無かった。

　スーパーにて果実酒や馬刺し、寿司などと、菓子やジュース(従弟のリクエスト）を買う。そして「男同士の秘密だからな。」と家に着く前にプリンを食べる。ちなみに二人とも喋らなかったが、レシートで従妹にバレた。「弟ばかりズルーい。私にも明日、何か買ってね。」「……ハイ。」

　伯父の帰りは遅いので、俺・祖母・従姉弟の四人で食事。（っておばあ様、私は母や伯父と違い酒に弱いのですが……何故ゆえにビール大瓶２本も？）　祖母と従妹のお酌で完全に酔う。伯父が帰ってくる前に潰れた。
　
走行距離　12km 累積走行距離　914.15km

■■

■2000年8月10日(木)：休息2（福島県会津）

　ふと目が覚めると見知らぬ天井。？？・・・ああ、母親の実家に厄介になっているんだ。
テント暮らしでは朝は落ち着けなかったが、ここなら安心して眠れる。二度寝する事にした。
バタバタバタバタ……
足音がする。と思ったら勢いよく部屋に入ってきた従妹が俺の上に飛び乗ってきた。小学生女児の体重とはいえ、それをモロにみぞおちに受ければキツイ。せき込む。何だ、一体？従弟も来て「兄ちゃん！」「ラジオ体操に行こう！」　…マジ？
従姉弟に半強制的に連行されて2キロほど先の分校に。この分校は俺の母親が通っていた頃からの木造校舎でいつぶっ壊れても不思議でないシロモノ。母親の子供の頃って・・・30年は前だろう？
で、小学生12～3人と混じり小学校の校庭でラジオ体操をする22歳のヒゲ面の男。というかヒゲ剃る時間くれなかった。（・・・傍から見たらシュールな光景だろうな）
膝の屈伸をしてみたがそれほど痛みは無い。あまり長居をするのも悪いし明日には出走する事にしよう。

ラジオ体操も終わり返ろうとすると、従弟が鎌を持ってきた。コレは？「今日は校庭の草刈だから一緒に手伝って。」　ソレか、俺をここに連れてきたわけは。小学生と混じり草刈りする22歳ヒゲの男。手に持ったカマがさらにシュール。（他の子の保護者のじーさんばーさんがいなかったら通報されてもおかしくないなぁ）
で、子供達に囲まれて旅行の質問されて適当に答えていた。「就職活動に失敗して自殺考えて、死ぬよりマシだと学校休学して旅に出ました」なんて子供に言えないし。

草刈が終わって家に戻る。運動して目がさえたので二度寝は出来そうに無い。従姉弟も部活に出かけたので、一人の時間が出来た。
自転車の整備や、膝を使わない筋トレ、荷物の整頓をして過ごす。この間に２度宅急便が来た。
サイクリング部の友人に頼んだレインコートが届いたのと、実家から旅に必要な道具を送ってもらったのだ。（ありがたい）
新たに『フロントキャリア』『サイドバック２つ』『レーサーパンツ』等の装備を追加。フロントキャリアで荷物を自転車の前後に分けて載せられるのでバランスが大分良くなる。レーサーパンツ（尻にクッションがついたスパッツ）も重要な装備だ。
自転車に乗っていると脚に一番負担がかかると思われがちだが、最も辛いのはサドルが当たる部分。尻である。その辛さは１年生のときに皆が一番苦しんだのがコレだった程。尚、入部時には１６人いた同期が俺を含めて４人にまで減ったいた。（たぶん肉体的苦痛より体育会のシキタリが原因だと思うが）

荷物の点検をして、明日から走るルートを考えていた頃、従妹が帰ってきた。「そういえば兄ちゃん、いつ千葉の家から出発したの？」　7/25　「その日が何の日か覚えてない？」　何の日って・・・あっ！
すっかり忘れていた。7/25は二年前(1998年)に亡くなった祖父の命日である。祖父母と暮らしてきた従姉弟にとっては忘れられない日だろう。
従妹と墓参りに出かける事にした。
祖父は何度も死にかけた人で『崖からトラクターごと落ちた』『工場で有毒の水飲んだ』とかやらかすも、その度に高齢とは思えない回復力で生還、「何で死なないのか？」と医者から言われたらしい。かなりの酒飲みで、酔っては行方をくらます事もしばしば、身元不明の死体が出たら先ずは母の実家に連絡が行っていた程である。
尚、三日行方をくらませていた時は帰ってきたときは何故か馬の背中にのって気を失った状態だったとか。
こんな間違いなく俺より長生きするだろうと思っていた祖父が、心臓の発作であっけなく他界するとは・・・。人とは分からないものである。

祖父の墓前で旅の報告をする。(じいちゃん。俺が子供の時に「コイツは博士か大臣になる」って集落中に言いふらしていたけど・・・ゴメン。博士どころか今の俺はプー太郎だ。でも今こうして旅やっていて充実している。お袋に心配かけているけど、あの状態で家にいるよりは安心していると思うし。勘弁してな)

その後、昨日の約束で従妹と買い物に。…で何が欲しいんだ？「えーとねぇコレとコレ。」…マニキュアに口紅？小６がそんなもの使うのか？「皆やっているよ」俺が小学生だった１０年前と時代が変わったのか。小学生で化粧って…。

家に戻ると弟の方が友達と遊んでいた。で、またもや子供の相手をする事に。
それにしても、従弟が俺の方ばかりで友達の相手をしないのは問題がある。その友達はつまらなそうにしていた。

夜になり伯父も帰ってきたので、祖母と従姉弟、伯父、俺の５人で食事。この場で明日に出発する旨を伝えた。
この後は伯父とビール飲んだり、従姉弟に果実酒を勧めたりと（阿呆）しながら夜を過ごした。

走行距離　0km 累積走行距離　914.15km

■■

■2000年8月11日(金)：再始動（福島県会津～新潟県松村）

　夜中に目を覚ますと居間だった。どうやら酒飲んでそのまま潰れてしまったらしい。（中途半端にアルコール摂ると夜中に目が覚めるのって何故だ？）座敷で布団を敷いて寝直す。
　5：00に起床。荷物をまとめ、座敷をほうきで掃き掃除する。（世話になったしな）　服装もＴシャツＧパンから着替える。レーサーパンツは見た目が悪いので上から短パンを穿く、上はＴシャツ、足はサンダルを装備。頭には麦わら帽子。（傍から見たら金魚売に見られそうだ）
　祖母が朝食とおにぎり用意してくれていたので、ありがたく頂く。さらに餞別まで渡してきた。一応断ったが勧められたので受け取る事に。\20k。(感謝と礼は尽くして、遠慮はしないで）
　その後、従姉弟・祖母・叔父と写真を撮る。シャッターを押してくれたのは向かいのおばあさん。

ちなみにこの集落のほとんどの住民が俺の事を『(母の名前)T子の倅』と呼ぶ。皆、俺の赤ん坊の頃や幼い頃を知っているので、そのころの話をされそうになった。（ガキの頃を知られているのは弱みを握られているも同じだ）　逃げるように出走。
　って荷物が重ッ！！実家から送られて来た装備の分だけ荷物の重量が増している。さすがにサイドバック4つ、ドラムバック、７0リットルサイズ・リュック一杯の荷物は重い。家の前の坂道を登り早くも後悔。(確かこの道って熊が出た事があるんだよなぁ。まぁ熊が出たら荷物無しでも逃げ切れないか)『塔のへつり』方面に走り途中から国道121号に入った。
　ところで福島県は浜通り・中通り・会津の三地域に分けて呼ばれる。俺が走っているのは会津地方。地図で見てみると等高線だらけ。つまり坂のオンパレード。ようするにキツイ。
　坂の上り下りの繰り返し。インターバルトレーニングでもしているようだ。（フン！この程度の坂で俺を止められるかッ！）……途中休憩を挟みながら『湯野上温泉』『芦ノ牧温泉』を通過。会津若松市に入った。スーパー兼薬局でスポーツドリンクと歯磨き粉、牛乳、コーラ、バナナを購入。\627。間食する。
　これからのコースだが、既に会津～関東や関東～京都は以前に走破済みである。そこで遠回りになるが、山を越え新潟に抜けて日本海側を走るコースにした。このまま121号(日光街道)を走っても交通量が多いので、会津本郷町辺りで県道29号に入り、そして401号に……ってここは何処だ？見事に道に迷う俺。1.5ｈほどロスした。
　何とか現在地を把握。会津坂下会津高田線(県道22号)から越後街道（49号）に入り、新潟方面を走る。地図で見た限りでは、峠が三箇所あるがどれも300ｍ前後のシロモノ。大した事は無かろうと思った。祖母からもらったおにぎりを食べながら走行ルートを決めて出走。

　ここで計算違いが幾つかあった事がわかった。
　先ず49号線に工事個所がいくつもあった事。山道での工事個所は片道交互走行になり下り坂なので折角のスピードを殺す事になる。
　次に俺の体力が昔と比べてかなり落ちていた事。たかが349ｍの峠にここまで苦戦するとは。
　最後に……スッゲェ腹が痛い。山道にトイレを借りられるような店は無く、ニトロ抱えて走るような気分で先を急ぐ。死に物狂いで藤峠(349ｍ)を制覇。尚、峠道はその最高点に休憩所があることが多い。　（助かった…）
　さらに西に進む。時刻が14時を回っている。（山道だから平均8km/ｈと考えて…）今日は新潟県に入れれば上等と判断。再び膝に違和感が出始めたので無理は避けるした。
　車峠を通過し、鳥居峠（265ｍ）を登る。上りきったところで新潟県の標識があった。道も若松街道と呼び名が変わっていた。
　後は下り坂が大半だろうともう少し先に進む事にする。阿賀野川沿いに下っていく。途中『道の駅阿賀の里』に寄りみやげ物を見る。ツボにはまる物がないので、柿シャーベット(\315)だけ買った。ここで温泉の情報を入手。すぐソコ(1km)に『咲花温泉』。11kmほど先に『村松さくらんど温泉』という設備がある。（まだ時間はあるな。）　村松まで進む事に決める。

　17：50出走。橋を渡り、国道290号を走行。ここから幾つか大小3つほど橋があった。自転車にとり橋はあまり嬉しくないコースだ。理由としては、車道が狭いため車が端ギリギリを通るために幅寄せされる事、中央部が高くなっているため登り坂になっている事などがある。
　はっきり言うと日本はツーリングにはあまり向いていないと思う。（日本もヨーロッパのように自転車に対する理解があればよいのだが）

　18：40。村松町に入る。温泉施設は町に入ってすぐのはずだが……看板を発見。道を何回か曲がり、日が落ちた頃にようやく『村松さくらんど温泉』を発見。（道分かりづらいが客足に響かんのか？駐車場はガラガラだし。）入ってみると結構客がいた。駐車場が広すぎて車が少なく見えただけだったようだ。
　入浴料(\500)を払い浴場へ。サウナや泡風呂、薬草湯etcと一通り揃っている。(\500にしちゃいい風呂だ)膝をマッサージしながら入浴する。子供連れが多かったので落ち着かなかったが1時間ほど風呂を楽しんでから上がる。風呂上りは牛乳。腰に手を当てて飲む様式美。（\100）
　休憩室で新聞を読みながら何処で泊まるかを考える。（走ってきた道でテント張れる公園は…見当たらなかったな。暗くなってから知らない道を走るのは危ないし…）ここで駐車場が空いていたことを思い出した。（ダメ元でやってみるか。）受け付けのお姉さんに交渉してみる。バイトの先輩らしいおばさんに相談。「火を使わないなら」とOKが出る。

　目立たない所に自転車を移動。ヘッドライトの明かりを頼りに荷物を取り出した。
　旅の記録を付ける。地図を見ながら明日走るコースを考える。体には心地よい疲れ。（将来がどうなるか分からないが…今、俺は充実している。これでいいと考えよう）
　そんな事を考えていると無性にビールが飲みたくなった。来る途中の道にコンビニがあったことを思い出し、買いに行く事にした。街灯がほとんど利いていないので、自転車のライトとヘッドライトの二つの光源を頼りに走る。コンビニ発見。（走行距離は…5ｋｍ！？）
　往復10ｋｍも走ってビール一本では虚しいので500ｍｌ缶を3本購入。(\約900)
　駐車場に戻り、ビールを空けながらこれまでの日記を読み返したり、仰向けに寝て、星空を見た。酒に強くない俺にとりビール1500ｍｌはかなりキいた。
　（これだけ星が見えるのなら雨は降らないだろう。）テントを張らないで、シュラフと銀マットだけで寝る。
　
AM3：00　ザァアアアアア(雨の音)　←お約束　
　
　……慌ててテント張って二度寝した。(らしい)

走行距離　139.83km 累積走行距離　1053.98km