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2015年08月19日00:09

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第14回世界バレエフェスティバル<ガラ> 

2015/8/16日 14:00- 東京文化会館

二週間強にわたったバレエフェスもとうとうフィナーレでした。以下、感想は演目別に。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「三人姉妹」、「椿姫」、「ル・パルク」)

■第1部■ 14:00〜14:45

「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:レオ・ドリーブ
リュドミラ・コノヴァロワ マチアス・エイマン

正直そんなに好きな作品ではないのですが、マチアスが踊るとこんなに楽しいんだ!と驚いた演目。彼は音のとり方が上手い!どこまでもエレガントなのに、キレもよくて、若さあふれるドリーブ組曲。いいなあ好きだなあ。コノヴァロワも正しく美しい踊りを最後まで貫いてくれました。代役、お疲れさまでした。

「三人姉妹」
振付:ケネス・マクミラン/音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
サラ・ラム ワディム・ムンタギロフ

サラのマクミラン観るのは初めてじゃないかしら・・・。彼女、演技も上手いんですね。彼女のコンテが観られないのが今回はとても残念に思っていたのですが、さすがロイヤル、マクミランダンサーでもあるんだなぁ。美しくてちょっと若くてそして切ないマーシャ、とてもよかったです。ワディムは物凄く若く見えて、不倫という感じではなかったけどね。でも彼の踊りは本当に正確で美しい。年齢や経験とともに演技力がついてきたら無敵なのでは!とわくわくします。
 
「雨」
振付:アナベル・ロペス・オチョア/音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
ヤーナ・サレンコ ダニール・シムキン

以前シムキンのガラ「インテンシオ」で同じものを観ているのですが、そのときより断然よくなっていました。シムキン君、見た目はいつまでも可愛いけど内面は大人になってるんだなーと実感。力強さも出てきて、彼にはもっとコンテを踊ってもらいたいなと思います。サレンコは、今回クラシックな演目でエレガントな一面を見せてくれたけど、私はこちらの力強くて美しい踊りのほうが本来の姿という気がしました(褒めてます)。彼女のコンテ、私はとても好きです。もっと観たい!

「椿姫」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
マリア・アイシュヴァルト アレクサンドル・リアブコ

残念なことにマラインがBプロ途中で怪我で帰国してしまい、ウヴェ・ショルツが観られませんでした・・・。でもサーシャとアイシュヴァルトの紫のパドドゥをもう一度観られるとは。二人とも4回目の本番とあって、初めて組んだ火曜日よりもかなり余裕があるように思いました。サーシャのソロも上手くなってたし。でもやっぱり今回も、マルグリットを崇拝してすがりつく優しくて繊細な、私の大好きなサーシャのアルマン。・・・ただ、個人的には、火曜日のほうが胸に迫るものがあったかも。二回目で自分が慣れてしまったのか、初回のダンサーの緊張が、ストーリー中での初めての二人の逢瀬をそのまま反映していたからか?
それにしても、椿姫って本当にいい作品。有名な三つのパドドゥのそれぞれも、短い時間のガラ公演でも観衆をその世界に引きずり込む魔力を持っていて。ジョン・ノイマイヤーの才能に感服。次に全幕を観られるのはいつになるのかなあ。

<休憩15分>

■第2部■ 15:00〜15:50

「ヌアージュ」
振付:イリ・キリアン /音楽:クロード・ドビュッシー
ディアナ・ヴィシニョワ マルセロ・ゴメス

キリアンの動きってとても好き。ぬめーっとしていて、人間臭くて、どこか哀しくて。しかもヴィシニョーワとゴメスという体のとてもきく二人が踊ると、その完成度は絶品。とてもよかったのだけど、ゴメスさんにはもう少し彼らしい演目も見せてほしかったなーという気持ちも。(ファニーガラがあったからいいか?!)

「カルメン組曲」
振付:アルベルト・アロンソ/音楽:ジョルジュ・ビゼー/ロディオン・シチェドリン
ヴィエングセイ・ヴァルデス ダニーラ・コルスンツェフ

コルスンツェフ、一途で優しそうだから似合いますよねー、この役!ヴァルデスさんは性格は役に合っているのかもしれないが、とうとう最後まで私の好みではありませんでした。まあ、他に凄いダンサーで観ちゃってるからな、この演目。比べたらいけないのかも。(フェリ引退公演で観たフェリ&ボッレのが、これまでの私のベスト。)

「ル・パルク」
振付:アンジュラン・プレルジョカージュ /音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
イザベル・ゲラン マニュエル・ルグリ

素晴らしかったです。この演目って年齢のいっている人の方が味が出ていいのかもしれない。ゲランは、久しぶりに踊ることに若干ためらいがあったのか、少しおずおずした感じでしたが、それがこの役とまたぴったり。ためらいながらも官能の中に落ちていくこのストーリーに説得力がありました。
この二人、今回3つの作品を見せてくれたわけですが、どれもこれもその日のベストと言える素晴らしさでした。バレエフェスが芸監や引退後のダンサーばっかりになっちゃってつまらないなーと思っていたけど、こういう若いダンサーには出せない味を、しかもかなり高いレベルで見せてくれる存在はとてもいい。ゲランももちろん素晴らしいのだけど、日本のバレエファンの気持ちを知り尽くしていてプロデューサー能力にも長けるルグリの功績なんだろうなと個人的には思っています。ちなみに、今回出演していた引退後ダンサーのすべてにこのように感じたわけではありません。

「さすらう若者の歌」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:グスタフ・マーラー
オスカー・シャコン フリーデマン・フォーゲル

だいぶ前にイレールとルグリで観て、とっても感動した覚えがある作品。シャコンも出るし、とっても期待していた、のですが。ベジャールって、難しいんですね。第九のときにも思ったけど、作品を本当の意味で理解して、共感しなければ、どんなに振付通りに踊ってもベジャールが意図したようにはきっと演じられない。フォーゲルは上手いダンサーだと思うのですが、ベジャールは似合わないなーと思いました。そして、たとえシャコンでも、パドドゥであるこの作品を一人でそれらしく仕上げることはできないのだなとも。

<休憩15分>

■第3部■  16:05〜17:05

「ウロボロス」
振付:大石裕香 /音楽:ヤン・ティルセン、ヨハン・パウル・フォン・ヴェストホフ、アレックス・バラナウスキー
シルヴィア・アッツォーニ アレクサンドル・リアブコ

ハンブルクの若手振付家の作品を集めたガラで初演されたこの作品。観た人達から、「素晴らしかった!」という声を聞いていたのでぜひ観たいと思ってました。ガラの演目が発表されたときには歓声を上げてしまったくらい!そして期待に違わずよかったです。人形だった二人が出会っておそらく恋に落ち、人間の心を持っていく。仮面や衣装をどんどん脱ぎ捨てていくことが彼らの「人間化」を意味しているのだと思いますが、横たわって衣装を脱ぎ捨てるところは、「人としてのこの世への誕生」なのかな。人間になって情を通わせた二人、最後は未来に思いを馳せるように遠方を見つめているシーンで幕切れ。「ウロボロス」は、尻尾を噛む蛇の姿のことで、無限や死と再生を意味するとのことですが、今回は人形として死んで人として再生するという意味かな?サーシャとシルヴィアは本当に懐の深いダンサーで、どんな作品を踊っても一気に彼らの世界に、ストーリーに、観衆を引き込んでしまう。ちょっと短かったのだけが残念。
ところで、振付の大石さんはハンブルクバレエ団のソリストとして長年活躍されてきた方で、先日のシーズン終了をもってバレエ団を退団されたばかり。彼女がハンブルクバレエに(Orkan Dannと共同で)振付たRenkuという作品をハンブルクで観たことがあるのですが、音楽の使い方といい、演出といい、動きといい、素晴らしかったです。ノイマイヤーの舞踊言語を踏襲しながら、もっとスタイリッシュで現代的な感じと言ったらいいのかな。参考までに、Renkuの動画へのリンクをご紹介しておきます。(シルヴィアとロイドが大活躍)→https://youtu.be/x8Sx3rB5S0w 
彼女、退団後は振付家として活動していくみたいで楽しみです。日本だと、11月に初演される宝塚月組の舞音(マノン)の振付に参加されるとのこと。

「白鳥の湖」より "黒鳥のパ・ド・ドゥ"
振付:マリウス・プティパ /音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
マリーヤ・アレクサンドロワ ウラディスラフ・ラントラートフ

アレクサンドロワの踊りは、本当に伸びやかで生き生きしていて気持ちいい!宮廷的で優雅なワガノワ・メソッドも好きなんですが、これはこれでとってもいい。今回はロシアの2つの頂点(ロパートキナとアレクサンドロワ)が同時に観られて最高でした。そして、ラントラートフとアレクサンドロワのラブラブっぷり、こっちまで幸せになります。ただBプロ途中から、ラントラートフのサポートが時々不安定なのかちょっとヒヤヒヤいたしました。

「ハムレット」
振付:ジョン・ノイマイヤー /音楽:マイケル・ティペット
アンナ・ラウデール エドウィン・レヴァツォフ

二人とも、こんな大御所だらけのガラに出るのは初めてで本当に緊張していただろうけど、最後までよく頑張ったなあという気持ちになりました。二人とも、よく踊れてるけど、もっと役に入り込めるようになるといいな。
 
「シェエラザード」
振付:ミハイル・フォーキン/音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ
上野水香 イーゴリ・ゼレンスキー

作品自体は好きなのですが、うーん。上野さんはなかなかいいじゃないと思ったのですが、私はA・B・ガラも含めて最後までゼレンスキーがあまりしっくりきませんでした。私はステージはちゃんと踊れる人を観たい性分なので・・・。
でも、彼に感動していた方も多かったようですね。

「ヴォヤージュ」
振付:レナート・ツァネラ /音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ウラジーミル・マラーホフ

本当に踊れるのかしらとかなり不安でしたが、動き出すと流石マラーホフ。高い音楽性と柔らかな動きは健在でした。もっと普段から踊ればいいのになあ・・・。それにしてもこの音楽、いくらなんでも今回かぶり過ぎ。

<休憩15分>

■第4部■ 17:15〜18:00

「ジゼル」
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー /音楽:アドルフ・アダン
アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

コジョカルのジゼル、東京バレエ団に客演したときに観て、私は好きじゃないなーと思ったのですが、今回はすごくよかったです。以前は生き生きしすぎて死んだ感じがしなかったのだけど、今回はちゃんとウィリだった。彼女、最近とても強い感じが前面に出過ぎている気がしていたのですが、コボーと踊ると本当にしっとり大人の女らしい雰囲気になりますね。

「タンゴ」
振付:ニコライ・アンドロソフ /音楽:アストル・ピアソラ
ウリヤーナ・ロパートキナ  

幕が上がった途端、何これまさかのヅカ系なの?!ぎゃーきたー!かっこいー!と大興奮。まあ正直、作品として面白いかどうかは分からないけど、ロパ様が男装してかっこよく踊っているだけでもうドッキドキでした。宝塚にはまる人達の心境が分かってしまったような。
ロパートキナがガラ公演で選択する演目を観ていると、本当に自分をよくわかっている人だなと思います。今回もAプロ・Bプロでは正統派なものを見せつけておいて、ガラというお祭りの舞台で、これ。かしこい人だなあ。そういうところも好き!!あー、冬の来日待ちきれません。

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン
オレリー・デュポン/エルヴェ・モロー

昨年春のパリオペ来日公演で超感動した二人の椿姫、また黒のパドドゥが観られて本当によかったです。もうこの二人で踊るのは最後だよね、観ている方もそう思っているけど、二人の間にもお互いを惜しむ感情が感じられました。それが作品を深くしていた。オレリーは割と感情抑えめなタイプだけど、この日の黒は情が零れ落ちてくる感じがした。引退して、日本という異国の地で、お祭りムードのなかで、彼女のガードが緩んだのかな。そこがとってもよかったです。オレリーが踊るのを観られるの、これで最後なのか。書いてて愕然。私、実は彼女がとても好きだったみたいです。

「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス
ヤーナ・サレンコ スティーヴン・マックレー

やーっと、らしいスティーヴンが観られた!全開でしたね。きれ味するどいジャンプ、小気味いい回転、そして何といっても超高速シェネ!やっぱこの人はこうじゃなきゃ。サレンコも、出た演目のなかでいっちばんノリノリでした。彼女キトリ好きなんですね。バレエフェスのフィナーレを飾るにふさわしい演目でした。楽しかった!!!

最後に、今回本当に音楽にストレスが少なかったなーと思いました。オケもピアノも素晴らしかった。特にオケのヴァイオリンのソロはいい音だなーということが多かった。あとロパ様の瀕死のときの遠藤さんのチェロも(別日ですが)素晴らしかった!指揮者の皆さん含め、素晴らしい音楽をどうもありがとうございました。

本編はこれでおしまい。ファニーガラの感想は別だてにします。

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