携帯電話のなかった時代

少女遺体「野宿する」とLINEで
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僕が子供の頃。
携帯電話なんて無かった。

母が夕方、買い物か何かから家に帰ってきて、家の中に、僕や弟や妹が居なかったら、えらく心配した。
そう。
夕方、18時にもなれば、えらく心配したと思う。

それよりも。

僕たちが何処かに遊びに出掛ける時。
何処に誰と出掛けて、何時頃帰ってくるかを母か祖父母に伝えて出掛けないと、こっぴどく叱られた。

もし、お泊まりするにしてもだ。
誰の家にお泊まりして、それは向こうの親御さんも承知なのか。
親同士で連絡を取り合ったものだ。

何故、昔はそうまでしたか。

それは、携帯電話なんて便利な連絡手段が無かったから。

親は、子供が一旦外に出ると、子供との連絡の取りようがなかった。
それが親を酷く慎重にさせた。

でも、その方が良かったのかも知れない。

親が酷く慎重になることで、子供の行動を逐一知ろうとすることで、それが却って、子供の安全を管理することに繋がっていたように思うから。

今は如何だろう。

母親が仕事が何かで夕方、家に帰ってきて、家の中に子供の姿がなかったら。
昔の母親のように、子供の事を心配するだろうか？

きっと、昔ほどは心配しないはずだ。
だって、携帯電話がある。
携帯に電話を掛け、子供から直接居場所を訊けば良い。
その為に持たせた携帯電話なんだから。

また、子供が出掛ける時、昔のように何処に行って、誰と遊び、何時に帰ってくるか迄、子供に問い質す親が居るだろうか？

きっと、そんな親は昔ほどは居ないんじゃないだろうか。
だって、携帯電話が有るんだもの。

何処に居て、誰と居て、何時頃帰ってくるかなんて、その都度携帯に掛けて、子供に直接訊けば済むだけの話だ。

確かに便利な時代になった。
でも、その便利さと引き換えに、僕たちは、危険に対して、酷く無頓着になっていないだろうか。

今回だってそう。
携帯電話がある安心感からか、親御さんは警察への届け出が遅れたのでは？

携帯電話があることで、何時でも連絡をつけることが出来る。
何かあったら、携帯電話から電話を掛けてきてくれる。
友達とLINEをしていたんだから、きっと無事に過ごしているんだろう。

そう思ってはいなかったろうか？

きっと昔だったら、野宿をする迄のもっと早い段階で、親は警察に届けを出し、こうした惨たらしい事件が起こる前に、保護されていたのではないか。
そして、親や警察からキツーイお叱りとゲンコツの一発でも貰って、それで事無きを得たのでは。

まあ、それは昔と今の時代背景も違う。
必ずしもそうなるとは限らないが、慎重さという点に於いては、寧ろ携帯電話が無かった時代の方が、親は子供の行動や居場所を知ろうとしたのではないか。

僕はそう思うのだ。