mixiユーザー(id:40818520)

2015年08月03日01:37

269 view

竹内浩三の作品「骨のうたう」を読む

竹内浩三の作品、「骨のうたう」という詩を戦後70年の今年の夏には少し大きめの声で読みたいと思います。


骨のうたう

竹内浩三


戦死やあわれ
兵隊の死ぬるやあわれ
とおい他国で ひょんと死ぬるや
だまって だれもいないところで
ひょんと死ぬるや
ふるさとの風や
こいびとの眼や
ひょんと消ゆるや
国のため
大君のため
死んでしまうや
その心や

苔いじらしや あわれや兵隊の死ぬるや
こらえきれないさびしさや
なかず 咆えず ひたすら 銃を持つ
白い箱にて 故国をながめる
音もなく なにもない 骨
帰っては きましたけれど
故国の人のよそよそしさや
自分の事務や 女のみだしなみが大切で
骨を愛する人もなし
骨は骨として 勲章をもらい
高く崇められ ほまれは高し
なれど 骨は骨 骨は聞きたかった
絶大な愛情のひびきを 聞きたかった
それはなかった
がらがらどんどん事務と常識が流れていた
骨は骨として崇められた
骨は チンチン音を立てて粉になった

ああ 戦場やあわれ
故国の風は 骨を吹きとばした
故国は発展にいそがしかった
女は 化粧にいそがしかった
なんにもないところで
骨は なんにもなしになった


竹内 浩三の作品はインターネットの電子図書館 青空文庫で読むことが出来ます。http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1675.html

竹内 浩三(たけうちこうぞう)の経歴 1921年(大正10年)5月12日三重県宇治山田市(現在の伊勢市)吹上町に生まれた。宇治山田中学校在学中より友人と回覧雑誌を製作。1940年(昭和15年)日本大学専門部映画科入学。1942年、宇治山田中学校時代の友人中井利亮・野村一雄・土屋陽一と同人誌『伊勢文学』を創刊。同年、日本大学を卒業、入営。1945年4月9日、フィリピンにて戦死(厳密には生死不明)。

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する