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2015年07月23日13:18

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温故知新…その9:テリア読本:米国エアデールテリアクラブ

「テリア読本」(昭和31年・誠文堂新光社・愛犬の友編集部)
フォト画像・右下…左下はケース。画像・上の茶色の書籍は、「テリア読本」とは無関係な「エアデール・テリア・クラブ・オブ・アメリカ」のイヤ−ブック。同クラブの60周年記念のモノで、1900年創立から1960年までのデータ等がビッシリ。


「テリア読本」の目次の一部分。
フォトその中の「英国におけるテリア種」と題されたものでは…以下要約。

「英国でテリアの飼育が、一番盛んだったのは第一次世界大戦と第二次世界大戦の間で、第二次世界大戦で独国に爆撃されるようになり、英国の貴重な種犬は相当数米国へ輸出された。第二次世界大戦が終わった頃には、英国よりも米国に優秀なテリアが多かった。

米国では、繁殖に興味をもって、研究的にやろうとする人も少なく、どちらかと言えば、良い犬を立派に仕上げて、これを展覧会に出陳し、うまくハンドルして見せることを一番の楽しみにしている。

英国では、どちらかと言えば、繁殖に力を入れて、それを楽しみに犬を飼っている人が多いようだ。

従って、繁殖についての研究も深く、非常に繁殖が上手である。一例として、日本で作りあげた狆が、現在世界で一番優秀な狆は日本ではなく英国で繁殖されたものである。シェパードを除く他の多くの犬も同様である。

第二次世界大戦が終わった時には、僅かしか残っていなかった、エアデール、ワイア、スコッチ等の種犬から数年のうちに、すばらしい犬を多数作り、これを米国やカナダや欧州の国々に輸出している。

ただ、不思議なことに、純英国産のエアデールは現在欧州諸国や米国で相当に人気が高まっているのに、英国では驚くほど人気がどん底をついていると言っても間違いない。

そのような情勢から、英国で優秀なエアデールができると、すぐに外国に売っている。」

過去十数年来の見事な種犬の数々を米国に売った例を挙げて、どんどん外国に何の惜し気もなく売っていると説明し、それでも、なお良いエアデールを繁殖しているのは英国である…と。

「テリア読本」と題されただけあって、専門家と呼ぶべき方々がテーマに沿って妙に詳しく書かれておられる。昨今は、このような本は見かけない。

インターネットがなかった時代なので、これだけ詳しい本は有り難く感じた方も多かったのではないかと思う。

因みに、この本の出版時の販売価格は定価500円・地方売価505円。国家公務員の初任給が9千円程度の頃なので、5百円が高いのか安いのか(笑)…。

私が生まれていない頃の話しなので詳しくは分からないが(笑)、ドッグフードなんか普及していない頃だと思われるので、「テリアの飼育と管理」と題される部分では、「残飯でも犬は飼養しうるが、真摯な愛犬家は合理的で科学的な食餌管理の方法によるべきであると信じる」と始まり、栄養素や食品の詳しい説明は言うに及ばず、数パターンの献立表や犬の月齢・年齢によるものや母犬や仔犬に与えるものも詳しく書かれている。

多頭出産の場合の仔犬の授乳について、母犬の負担を軽減し、弱い発育の遅れた仔犬ができないように配慮し、乳母犬、牛乳、山羊乳、粉乳練乳を用いて差し支えない…と。

ドッグミルク(犬用ミルク)についての記載がないところから、この頃は販売されていなかったと思われる。しかし、下痢の心配がある牛乳はないだろうと思うが、当時としては致し方ないところなのだろう。バターを混ぜろとも書かれている…。

成長期の基礎代謝量(体重増加や体表面積の表等)や各種の指数や数式に至るまで獣医学書のように解説している。

ただ、獣医学や薬剤の進歩により、疾患等に対する予防と処置や処方等が現在とは異なるものがあることから、参考にならないものもある。「昔は、こんなことしていたのだな」と、知識として覚えておくことはムダではないと思う(笑)。何せ、DDTを使用していた時代だから(汗)。


フォト「英国ミッドランド・カウンティーズ・エアデール・テリア・クラブのスタンダードに準拠し、必要に応じて米国エアデール・テリア・クラブ・オブ・アメリカのスタンダードと対比しながら理解を容易ならしめたい」との前置きで、「エアデールテリアの標準と解説」のページがあり、その中の頭部周辺についての記述が印象に残っている。

具体的に図示されているように、「標準書では頭蓋骨と前顔部の長さは10対10で、ほとんど等しいとは言うものの、モダンエアデールは上顎骨及び鼻骨、顎間骨がかなり長く、従って前顔部が頭蓋に比してやや長い目の傾向にあることは他のテリアと軌を一にしている」

「これは近代的な好みであって(頭蓋2前顔部3の比率)長いパイプのものが好まれる傾向を示す証左でもある。けれども標準書は変更がない。…要はバランスがとれていることが肝要である。(米国の標準書では頭蓋と前顔部はバランスがとれているべきである…との前置きもある)」

バランスがとれていることが肝要なのは分かるが、標準(スタンダード)を書きかえずに、勝手な好みでカタチを変えてしまうところが展覧会(ドッグショウ)のいい加減さを表していると思う。バランスがとれているなんて詭弁に思うな(笑)。

詭弁と言えば、「エアデール・テリアの歴史と特性」の項で、警察犬協会本部審査員(執筆当時)の方が、ハウンドとテリアが混ざっているエアデールの特性についてエアデール・テリア・キャラクターなどとの表現は、個体が持つテンペラメントとキャラクターを混同した錯覚であるし、詭弁だと書いておられるが…。

確かにそれはそうだが、テリア・キャラクターを考える時にワイアとエアデールが同じとはいかないだろう。それに、エアデールの特性がワイアのようなら、体格が体格なので殆どの方々が手を焼くのではないかしら(笑)。

その方が書いているように、サイズ的なものはハウンドからもらったものだが、ハウンド的なモノは排除されているエアデールについて、ハウンドが何割でテリアが何割だからキャラクター等がその割合だとの表現はトンチンカンこの上ないのは、おっしゃる通りだと思う。

だからと言って、テリアの代表あるいはテリアキャラクターの最たる持ち主とも言えるワイア達のそれとは掛け離れていると思う。それは、個体の持つ良し悪しから来るものではなく、共通的なものだと思う。そうでなければ、エアデールの良さは見受けられないのではないかとも思う。

訓練士の立場(犬関連の学校を設立…犬の学校ではなく、人間の学校)から「テリアの訓練」の項で書いておられる方も、ワイアの呼び戻しの訓練は難しい…と。単独行動が当たり前のテリアがイチイチ他のモノから指示されて動くなんて死活問題だと思われるので…「聞く耳は持たぬわ!」。索敵と攻撃を自身で判断せずには命を失うことに直結するのは目に見えている。
フォトえっ!この訓練士さんは、監守までワイアに仕込んじゃってる!

フォトエアデール・テリア・クラブ・オブ・アメリカのイヤ−ブックでは訓練関連はホンの少しだけ(笑)。画像は、1〜2キロありそうなダンベルを咥えて障害を飛越するエアデール。


話しがそれたので、体型等の解説に戻すと…その他、「肩と胸」においては、図示で構成する骨や関節や角度(具体的な数値)、それらと歩幅の関連等、詳しく説明している。

フォトその「テリア読本」に掲載されている非常に美しいワイアも前顔部が長めだが、ワイアだからよいのであって、申し訳ないが個人的にはエアデールの前顔部が長い個体は馬に見えて仕方がない。それもマヌケな馬に見える。これも好みか(笑)?


そのエアデール・テリア・クラブ・オブ・アメリカのイヤ−ブックから犬の変遷を見てみると…。
フォト1900年代。逞しさで満ち溢れている感じがする。

フォト1910年代。

フォト1910年代後半。

フォト1920年代。

フォト1920〜1930年代。この頃から、大きく変わっていくのが感じ取れる。個人的に、1900〜1930年代のモノがテリアぽくて昨今のエアデールよりも魅力を感じてしまう今日この頃…。 このイヤ−ブックを久々に見ると益々そう感じる(笑)。

フォト1950年代。この頃からは、昨今の見慣れたエアデールのように。なんだか牙を抜かれてしまったような…。

これらは米国なので、原産国である英国や欧州においては、もっと古い歴史があるが、それはまた別に見てみる…。

つづく…
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