１つの到達点

　新宿のPlaceMで開催されている『ＡＶ女優 川上ゆう×沢渡朔』を見てきた。

　事前に何度もアサヒカメラの写真を見ていたので、そうよね、だいたいこういう感じよねという固定観念をもってしまっていたのだが、イメージしていたものと違ってた。

　高みに到達した、というのが正直な感想であった。

　沢渡さんが写真で表現する「ゴール」ではないか、というくらい完成していたと思った。雑誌のインタビューで、モデルに望むことに関して、結構、キビしいことを書いていたが、それは川上ゆうが最高にすばらしいということの裏返しだ、ということはすぐにわかっていた。でも、100％の能力でぶつかってこないモデルでも、何か独特の世界を表現できる沢渡さんの写真が私は好きだったので（たとえばゴマキとか）、そんなに、強調しなくてもいいのではないかと、私は考えていた。また、また、川上ゆうを使ったことも、何でだろうって思っていた。もう、十分に撮りきっているのではないかと。

　今日、実際に、展示されていた写真（たぶん、457ミリ×560ミリの白黒写真）14-15点を見て、何となく、意味がわかった。モデルの重要性と川上ゆうを選んだ理由が。

　たまたま、私の好きなレーベルのＡＶで、川上ゆう（昔の「森野雫」の名で出ていた）の催眠のエロＤＶＤを持っていた。それを見たときは、内容は良かったのだが、別に、魅力も感じなかったし、気にもしていなかった。でも、名前が川上ゆうになったとたんに、すごく有名になって、なんで？って思っていたのは正直なところであった。少し興味を持って、有名になってからの川上ゆうに着目していたが、なるほどな、と感心することは多々あった。さすがに、しっかりした子なんだと思う。飛び抜けて美人でもないし、他に綺麗なな女優はいくらでもいると思われるが、ぷりっぷりした体とかわいいところがあるところが魅力なのだろう、それとしっかりしているところと。

　正直に言えば、これまで出版された2冊の沢渡さん撮影の川上ゆう写真集については、私のなかでは「普通」という評価だったのだが、今日見た写真は、全然違った。これぞ沢渡！！

　それと、やはり、白黒のフィルムだと、デジタルでは出せない味が確実にあるんだろうな。上手に説明できないけど。自分でもちょっとやってみたいって思いましたもん。67は大きいし、数が撮れないので、小さいので。ちゃんと、自分で、露出計で測光して、手でピントを合わせて、ね。

　それにしても、まだ、高みを目指している姿勢に、ため息が出た。死んでも追いつけないな、と（そもそも私は、沢渡さんの写真を目指していないが。。。）それでいて、今日の写真を見て、自分が沢渡さんのファンであることをすごく誇りに思えた。ただ、変な気持ち、うれしいっていう感じではなく、自分のレベルの低さを改めて知ることとなって、何とも言えない気分で、そこを出てきたのであった。

　蛇足になるが、自分の中で「麻婆豆腐の理論」というものがある。麻婆豆腐の辛さに深みがあるのは、山椒、唐辛子、ネギといった異なる辛み成分を混ぜて、かつ、辛みの反対の甘みを足して、全体をまとめているところが重要なんだと思っている。

　15枚の写真があったとして、いろんなエロがあればあるほどいい。緊縛、おしっこ、純粋な肉体、美しさを加えてもいい。そのなかに、麻婆豆腐なら、甘み成分だし、よく言われているのはお汁粉に塩を入れるというやつ。今回だと、エロくない微笑みの表情。そういうのが1-2枚あると完璧だな。今回、その13点だか15点だか、覚えていないが、いずれにしても、その構成がすばらしく良かった。そんなに、複雑なことはやっていなかったと思う。いわゆる35ミリ相当レンズで、シンプルに（無駄をそぎ落としている感はあった）。

　たぶん、日本だけでなく、世界でも、このレベルのカメラマンって、そんなにいないと思うけどね。開催は明日までなので、是非見に行けとは言えないが、でも、恐れ入りました、です。

追伸：アマゾンの今月号のアサヒカメラのレビューを見て、沢渡のさの字も出てこない。みんなバカだなって思う。ま、でも、雑誌の写真と今日見た全紙サイズの写真とでは全然印象が違うというのは、実物を見て、初めてわかることである。あれを見れば、違うレビューが出てもおかしくはないだろう。それにしても、あんなにすばらしい写真なのに、お客さん、少な。。

追伸２：目指してはいないが、1度はキッチリやってみたい。67で。

追伸３：昨日、代沢のギャラリーで、荒木さんのポラも見てきた。おねえさんと話をしてて、大きいスタジオで働いている若い子が、67にフィルムを装填できないという話をしてて、確かに、そうだろうなって思った。逆に、ちゃんと装填できる子が、「あいつは、できる」みたいな。

追伸：今日誕生日の人がいたら、おめでとうございます。