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2015年06月30日02:24

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隔世の感がある

 なんというか、隔世の感がある。

 何についてかというと、報道機関への圧力が問題になるようになったことだ。
 以前は、報道機関に圧力があって当たり前、問題だとされることさえなかった。
 報道機関側の中ではそれにどう抗うかが腕の見せどころという雰囲気だったのではないかと思う。
 さらに、現在では、報道機関の中には、権力を批判することを自粛することが当たり前になっているところもある。

 それが、今回、与党自民党が報道機関に圧力をかける、ということについて、大きな問題となっているのだ。問題にしているのは、ごく一部の報道機関にすぎないのかもしれないが、まあ、それでもないよりはマシだろう。



 本件で問題になったのは、2つの圧力形態だ。
1つ目は、報道機関を名指しで批判すること。
2つ目は、報道機関の広告主に圧力をかけてスポンサーを降りさせることで間接的に報道に圧力をかけること。

 1つ目の形態は、さほど問題では無いと、私は思う。
 批判されて納得できなければ悪態をつきたくなるのは人情としてもわかるし、権力者側が報道機関を批判したとしても、あくまでも批判にとどまる限り、その当否については視聴者・読者に判断させればよい 。
 トンチンカンな批判は、逆に報道の正当性を高め、権力者側の評価を下げる。
 国民の側に判断する材料を提供している以上は、報道機関としても自分たちの報道に自信があれば「あ〜そーですか」とききながしていればいいからだ。

 しかし、2つ目はいただけない。
 国家権力を持つからこそできる圧力のかけ方で、しかも見えないところで実質的な効力がある。加えて、そういった圧力が日常的にかかれば、やがて報道機関の自粛を生み、報道機関は権力を批判しなくなる。批判精神すら失われる。

 まあ、そういう「自粛」状況が現代の日本にまさに生じている。
 そのことは、古賀茂明氏が、今年3月に報道ステーションのコメンテーターを辞めさせられたことに関連して、あちこちで説いて回っている。


 少し昔話をする。

 報道機関への圧力について思い出されるのは、1993年6月29日放送(らしい)のニュース・ステーションだ。

※この日付は次のサイトで見たのだけなので、正確かどうかはわからない。
http://www.maroon.dti.ne.jp/mamos/tv/kume.html
 しかし日付はともかく、私は番組をリアルタイムで視ているので、そのような放送があったと、記憶に自信はある。


 番組に、梶山静六(当時の自民党幹事長)が出演した。
 キャスターの久米宏は梶山静六に、番組スポンサーのトヨタに圧力かけましたか、と質問した。

(以下は私が番組をリアルタイムで視た記憶)

「梶山さんがおいでになった以上は、私としてはどうしても訊かなければならないことがあります」
「ニュース・ステーションの視聴率が下がったわけでもないのに、トヨタ自動車さんが番組のスポンサーを降りられたことがありました」
「聴くところによりますと、梶山さんが通産大臣であられた時期(1989年6月3日〜8月9日)に、トヨタさんにスポンサーを降りるように要請したということですが、これは本当ですか?」


 まあ、直球の質問で、視ていた私も大変驚いた。だからこそ覚えている。

 これに対して、梶山静六は何かを言おうとしているのだが、結局は何も言わず、怒りと困惑が入り混じったような表情で目を白黒させていたように記憶している。

 久米は「言っていないんですか? それならいいんです。失礼しました。」と勝手に質問を切り上げて話を終わらせてしまった。

 まあ多くの視聴者は「ああ、これは圧力はあったろうな」と感じただろうと思う。久米は梶山の表情でそれを視聴者に伝えたのだ。

 長年報道番組を見てきたと自負する自分としても、久米の「スーパーゴール」だったと感じている。

 とはいえ、これ以後、スポンサーに圧力をかける、ということが問題にされたわけでもなく、追及も終わってしまった。番組作りの裏側の問題だし、報道機関としての新聞や放送局にとっては触れられたくない話題だったので、後追い取材もなく、話題は尻すぼみになってしまったのだろう。

 おそらく、報道機関に圧力をかける形態としては、以後も恒常的に行われ続けてきた手法だと思う。

 そういえば、福島第一原発事故があったとき、東京電力のテレビ会議の動画が公開された中に、報道機関が東電を責める論調だったことについて、東電の広報担当が報道各社の営業に申し入れる、と答えたことがあったそうだ。私は確認していないが、見たという人が苦笑していた。

 これまでの日本では、金や権力もつ側が報道機関をコントロールすることは、当たり前に行われていたのだ。

 それがいま初めて日本の報道業界の俎上に載せられている。
 これは画期的なことだと思う。

 日本の開発独裁型の政治体制の一部が、ようやく崩れ始めた感がある。
 まあ、この圧力形態は亡くならないと思うけれど、「悪いことだ」という共通認識(ないし建前)は形成されると思う。

 冒頭の繰り返しになってしまうが、ほんとうに隔世の感がある。

 ちなみに、菅官房長官が担当者は党の幹事長だと逃げているという話は、まあ、国民にとってはどうでもいいことだ。勝手にしてくれという気がしている。


 報道機関に見えないところで圧力を掛けることは悪いことだ、という認識が広まることだけが大事なのだ。
 たとえ建前であっても、政治家や官僚、記者や報道機関営業部にとって、忘れれば痛い目にあう、という状況になればよい。



------------------【記事 引用開始】---------------------

<自民勉強会>沖縄侮蔑発言 菅官房長官「党の問題だ」
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=2&from=diary&id=3491425

 ◇谷垣幹事長も「私が責任者」と幹事長の謝罪で十分と

 菅義偉官房長官は29日の衆院平和安全法制特別委員会で、自民党の勉強会で沖縄への侮蔑的な発言が出た問題について、調査と県民への謝罪を求められたのに対し「党の問題だ。政府として調べてコメントする立場にない」と述べ、政府として対応する必要はないとの認識を示した。谷垣禎一幹事長も記者会見で、安倍晋三首相の謝罪に関し「党のトップは総裁(首相)だが、実際の運用は私が責任者」と述べ、幹事長の謝罪で十分だとした。

 首相は同日、谷垣氏と会談し、勉強会で出た報道機関への圧力を求める発言について「表現の自由は民主主義の根幹だから、それに配慮していく姿勢をはっきり示さなくてはいけない」と述べた。沖縄への侮蔑発言でも「沖縄のことを一生懸命考え取り組まれた先輩がたくさんいる中で、極めて遺憾なことだ」と語った。谷垣氏が明らかにした。

 首相はその後の同党役員会で、安全保障関連法案について「さらに緊張感を持って、政府・与党一体となって成立に全力を挙げたい」と述べ、今国会での成立を目指す考えを改めて強調した。谷垣氏によると、首相から勉強会についての言及はなかった。

 特別委では、野党が「沖縄県民を侮辱している。謝罪すべきだ」(共産党・赤嶺政賢議員)などと追及。菅氏は、勉強会で講師を務めた作家の百田尚樹氏や自民党議員の発言に関し「党内の有志による非公開の集まりで事実関係は掌握していない」と確認を避けたが、議員の発言については「もし事実だとすれば極めて非常識だ」と語った。

 民主党の枝野幸男幹事長は国会内で記者団に「首相の非常に鈍感な姿勢、態度が最大の問題だ」と批判。安保関連法案審議への影響については「一体不可分だ。言論・表現の自由に無理解の政権が、国民世論を押し切って軍事のことをやろうとしている」と批判した。【影山哲也、村尾哲】
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