mixiユーザー(id:3472200)

2015年06月26日00:24

207 view

現実性のある再使用型宇宙輸送系としては、一足飛びに1段式宇宙航空機をめざすのは現代技術ではまだ困難で、この2段式という中間段階を実証してこそ、理想的な宇宙航空機への路が開かれると>

宇宙政策シンクタンク「宙の会」は、宇宙政策について調査、議論し、提言することを目的にしています。多くの欧米のシンクタンクに見られるように、下請的調査ではなくて、中立、公平な立場での政策提言をめざします。そのスローガンは「静かな抑止力」。宇宙活動を世界標準並みに、科学技術力、将来産業力、環境・災害監視力、国際協力と外交力、という国の総合的ソフトパワーに活用すべきとの考えです。






宇宙の大目標について(7)

再使用ロケットR&Dの内外の状況

五代富文



2012.9.12

宇宙活動を経済的に、安全におこなうための宇宙ロケットとして、世界各国の政府あるいは企業は、使い捨て型ロケットを開発し、使いつづけている。

使い捨て型ロケットに代わって、一部あるいは全部を再使用するロケット(Reusable Launch Vehicle : RLV)、とくに理想的な1段式完全再使用型ロケット(Single Stage To Orbit : SSTO)を、各国は過去数十年にわたって検討・設計し、試作・飛行試験してきたが、技術的、経済的理由からすべて失敗し、計画を中止してきたのが現状である。

したがって現在、あるいは近未来では、宇宙開発は、下記3タイプの宇宙飛行体をつかって進められる。

 国と大企業は、高度技術をつかった使い捨て型ロケット(使い切り型とも呼ぶ、expendable launch vehicle ,ELV)を長年にわたって使い、現状では、すべてのロケットはこのタイプである。

2、3番目のロケットは新しく誕生する宇宙飛行体である。第2のタイプは、ベンチャー企業が国の開発した技術を徹底的に利用した安価な使い捨て型ロケットであって、衛星打ち上げ、宇宙船運搬など実用化直前の状態にある。

さらに宇宙軌道には届かないものの、宇宙の縁である高度100kmを観光目的で飛行する再使用型宇宙航空機をベンチャー企業が開発している。この3番目の宇宙飛行体は宇宙を長期間にわたって飛行することはできないが、新しいカテゴリーの宇宙ロケットということができる。

本稿では、日本が中長期的に再使用型ロケットを実現していくための検討に資するため、再使用型宇宙ロケットの現状と将来展望をのべる。





(1)スペースシャトルなきあとの再使用ロケットは



 スペースシャトルが2011年7月、30年にわたる飛行を終えて引退してから、世界の宇宙ロケットはすべて使い捨て型になり、再使用型ロケットの運航時代は終わってしまった。残った3機のスペースシャトル、ディスカバリー、アトランティス、エンデバー号は、全米各地の博物館に移動展示され二度と飛ぶことはなく、いまやスペースシャトルは歴史遺産となった。第1世代再使用型ロケット時代が終わったといってよいだろう。



1960年前後、再使用ロケットとしては、NASAの実験機X-15が、速度マッハ6.7、高度107kmという当時の世界飛行記録をだし、その成果がスペースシャトル実現に大きく貢献したが、そのスペースシャトル自体の寿命が尽きて、それを継ぐ再使用型ロケットが存在しないのが現状だ。

 スペースシャトルは1970年代に発案された時には、航空機の新時代をひらいた1940年代のDC-3航空機のように、宇宙輸送においても新時代を開くものをめざした。残念ながら、新世代宇宙輸送系を標榜したスペースシャトルは、経済性、安全性、運用性などの目標を達成することはできず、30年間135回の飛行運用で幕を閉じた。当初掲げた理想は遂げられず、その間、2度の大事故を引きおこした。しかし、スペースシャトルは、航空機並みの有人往復輸送性、有人活動があってこそ実現したハッブル望遠鏡など、さまざまな宇宙活動実績を挙げたことは評価されるべきだ。



 それでは、スペースシャトルが退役した後、宇宙輸送系(ロケット)は再使用型ではなく、使い捨て型だけの時代に戻るのだろうか。そのようなことはないし、再使用型宇宙輸送系が主流になるのは間違いないことだが、その時期がいつかと問われれば明確な答えが出せないのが現状だ。

再使用をめざしたロケットの構想立案、技術開発は、宇宙開発が始まった当初から宇宙技術者はつねに考えていた。米国、ソ連、日本、欧州において、そのためのおおくの設計、部分試作、小型試験機の飛行、実証機の開発が続けられて今に至っている。



この後概略を述べるが、宇宙航空機の理想像とされるスペースプレーンは、機体の空気力学的研究などは盛んだが、肝心の空気吸い込み型複合エンジンについては実現の目途は立っておらず、これから四半世紀のR&Dが必要になるだろう。

空気吸い込みではなくて純粋のロケットエンジンを搭載する宇宙航空機の場合、1段式については技術的に現状では不十分であって、米国が行った実証機の開発は頓挫し中止された。

現在の技術で、実現の可能性が高い形態は、ロケットエンジン搭載型の2段式宇宙航空機であろう。この構想も1段目が発射場へフライバックする実証試験が計画されているレベルで、2段目には従来の使い捨て型ロケットをつかうことによって、効率は高くないが人工衛星打ち上げが可能となる。2段式完全再使用の宇宙航空機も技術的に実現可能な兆しが見えているが、技術、経済性、信頼性、運用性の面で、完成しても理想の宇宙輸送系には至らないだろう。

しかし、現実性のある再使用型宇宙輸送系としては、一足飛びに1段式宇宙航空機をめざすのは現代技術ではまだ困難で、この2段式という中間段階を実証してこそ、理想的な宇宙航空機への路が開かれると考えている。









スペースシャトル エンタープライズ 展示@New York, 2012 (NASA)




X-15(NASA, 1958~1968)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー以上転載ーー
http://www.soranokai.jp/pages/shuttlerocket_8.html
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年06月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930