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2015年05月24日16:52

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国立モスクワ音楽劇場バレエ 白鳥の湖

2015/5/23土 17:30- 東京文化会館

音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付・演出: ウラジーミル・ブルメステイル
美術: ウラジーミル・アレフィエフ

指揮: アントン・グリシャニン
管弦楽: 国立モスクワ音楽劇場管弦楽団

オデット/オディール: エリカ・ミキルチチェワ
ジークフリート王子: ゲオルギー・スミレフスキ
悪魔ロットバルト: イワン・ミハリョフ
道化: アレクセイ・ババィエフ

ボリショイと並びモスクワで有名なバレエ団、(スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念)国立モスクワ音楽劇場バレエの来日公演を観に行って参りました。本当はもう一つの演目、エスメラルダも観たかったのですが、仕事の都合で叶わず。残念です。

ブルメステイル版白鳥の湖は全くの初見。1幕、2幕で黒鳥のパドドゥの音楽が登場してしまい、3、4幕はどうなるのやらと思っていたけど、黒鳥とのパドドゥはチャイコフスキー・パドドゥの音楽。なるほど、これ元は白鳥用の音楽だったんですもんね。3幕、花嫁候補が王子にアピールする舞踏会のシーンは、ロットバルトがすべての黒幕という設定で、ともすればオデットのところに心が飛びがちな王子の目を惹きつけるため、最初からちらちらとオディールを見せる演出がなかなか面白い。そしてこの演出ひょっとして、王子はオディールに永遠の愛を誓わないのかな?人差し指と中指を上げて誓うシーンがなかったような(記憶違いだったらすみません)。王子がオディールに永遠の愛を誓っていないからこそ、最後に王子が命がけでオデットのところに行こうとしたことで二人の愛がロットバルトに打ち勝ち、オデットが人間に戻れたのかな、と思いました。そう、この白鳥、ハッピーエンドなんですよね。

演出としては4幕もおお、と思ったところがありました。オディールの罠に落ちたと知って絶望した王子が白鳥の群れのところにやってきたシーン。白鳥達、最初責めるように王子を横目で睨み付け(ここはジゼルのウィリみたいだと思った)、そのあとふっと彼から視線を外してうつむくのです。裏切りものへの怒りと自分達の運命への諦観。群舞の白鳥にはあまり感情がないように描かれることが多いのですが、こっちの方が女性として共感できたりします。

と、いくつか面白いなぁと思ったとこはあるものの、プロダクション自体に物凄く演劇性が高いとは思わなかったというのが正直なところ。ただし、オデットと王子がもっと演技をすれば、また違った味が出てくるのかもしれません。そしてちょっと話は変わりますが、ロシアらしい、ややオリエンタルなテイストの入った色彩豊かな衣装が素敵でした。

肝心のダンサー達。まず思ったのは、ロシアのバレエは本当に層が厚いなあということでした。モスクワにボリショイがあって、さほど遠くないサンクトペテルブルクにマリインスキーがあって、なのにここにもコールドまでクラシックのテクニックがきちっとしていて顔が小さく手足が長いダンサーが沢山いて、サンクトにはミハイロフスキーもある。国策として芸術に投資をしているのが大きいのでしょうね。

オデット/オディール役のミキルチチェワ、テクニックがとてもしっかりしています。そしてちゃんと私の中にある古典の白鳥でした。ロシアのバレエ界にはロシア風の白鳥の「型」みたいな概念が存在しているのかしら。誰がやってもちゃんと「人外の存在」と感じるんだよなあ。これは完全に好みの問題ですが、私は人間臭すぎる白鳥はちょっと苦手です。

王子役のスミレフスキ。ウヴァーロフを彷彿とさせる、大きくてノーブルでロシア王子らしいダンサーですね。後半疲れからなのか、サポート・リフトが不安定だったり、決めポーズでぐらついたりしたのがちょっと残念でしたが・・・。あと、道化役のババィエフも、結構筋肉のしっかりした大きい体なのにポンポン跳んでくるくる回って大活躍でした!

さて、ロシアのバレエ団の来日公演は、オケも自分のところのを連れてきてくれることが多いのが嬉しい。今回もロシアオケを堪能いたしました!上手いかどうかといえばそりゃ粗もあるでしょうが、とにかく彼らは思い切りがいい。スピードの緩急も激しいし、特に管に躊躇がないのが気持ちいいです!

価格と質を考えると、この公演はとても良心的。主催者はチケットを売るのにちょっと苦労をしていたようですが、当日の客層はいつものバレエ公演とは違い、特別な休日を楽しみたいというご夫婦連れや、ダンスをやっていそうな若い男性のグループも。私は定価で買ったので格安チケットがたくさん出回っている状況を素直には喜べませんが、1万円を切る価格で良席だとこういう新しい客層も呼べるのだなぁと思いました。
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